しあわせのおすそわけ
開園した『リーブ』をレオナとロードは二人で歩いていた。
整った道にはルーフェンの職人が手作業で刻んだ花の模様があり歩いているだけにも関わらず目を奪われる。
「見てみて、このデザインも私がしたんよ」
「凄いな」
レオナは自分の携わった場所をロードに笑顔で話す。レオナは視界に映るもの全てを魅力的にしようとアリシアの技術で様々な色の光を組み合わせて壁にも模様を浮かばせていた。
魔力の消費に関しても既存の証明を効率化させ再現出来る色の種類も多くなっていた。リズミカルな音楽が流れてリーブでは人々で溢れかえっている。流石に国民全員を受け入れる事は出来ずに予約制度を作って日毎に入場を制限していた。
行商人から得た知識も使い各地にある植物を調べてテーマにあった場所に植えている。ここに来るだけで色々な国へ遊びに行ったような錯覚に陥るのを期待している。廃れた荒野をイメージした場所では小さい子が泣いてしまうような怖い演出に力を入れて非現実感を作っていた。
サラサラの砂にザラザラな岩肌の側には一見ボロボロな建物を創り、中にはいると廃墟のような装飾が施されている。そこで暗がりにして探検する体験が出来る。外とは違いこの施設では暗い音楽と共に驚く演出が用意されていた。
レオナとロードも一緒に体験する。しかし、問題が発生した。
「見てロード、壊れたお人形が置いてある……急に動いたりしないわよね?」
そう言いながらロードを盾にして前に進むレオナが前を通ったら人形が動き出した。
「きゃー。ロード先に行きましょ。あ、そういえばここの角にも……あ! ほらくるわよ」
「何が来るかレオナを見ていると分かりやすいな」
誰でもないレオナが演出を考える会議に参加している。だから、何が何処で起きるか分かっており一緒にいたロードもレオナが黙っていると何も起きないと理解してしまった。
「わー、ごめんなさい。そうよね、ロードはここの事を知らないものね」
「そうだな」
「じゃー、私も黙っとく」
そう言ったレオナと先へ進むと盾にしているロードの服を握る手に力が入るのを感じた。
その瞬間、鏡に投影した驚かす演出が顔をだす。
ロードはとりあえず何も言わずにそのままレオナと楽しむ事にした。
「あー、ちゃんと怖かったわね」
「……そーだな」
「えー。その様子じゃイマイチだった?」
ロードを覗き込むレオナを無視して次のエリアへと向かった。
「ちょっと、置いてかないでよー」
逸れないようにレオナはロードの後を追いかけた。
次に訪れたのはレオナも演技指導をした劇だった。ちょっとした物語を飽きずに楽しめる短時間でお客さんへ提供する。
場面に合った音楽とアリシアの技術を合わせた演出に加えて、スタッフの身振り手振りから声の大きさ……スキルを合わせて物語を体現する。小さな子どもが見ても楽しめるキャラクター性と大人が見ても驚く演出が売りだった。
演者によっては使えるスキルが違うのでキラキラと光る演出や魔力を氷に変換して創造する彫刻などで注目を集めた。
魔物討伐も可能なレベルのスキルを人を喜ばせる為に使う。このリーブが完成した事でオフィキナリスに雇用を生んだ。
十分にレオナの作った観光施設は社会に貢献している。
「お腹すいたー。ここ入ろう」
レオナは劇を見た後にロードと食事を始めた。店内もレオナが考えたマスコットキャラクターをイメージしている。
「メニューもレオナがイメージを伝えて絵を描いて貰ったんだ。それを再現してもらった!」
料理を行うシェフもレオナが納得行くまで特訓が繰り広げられていたが表には出ていない。
ロードは不思議な色をした食べ物を頬張るレオナを眺めてお腹いっぱいになっていた。
それから滝の上からフリーフォールするアトラクションに乗った。海が遠いオフィキナリスでは珍しい泳ぐことが出来る施設もあり肌の露出を抑えた水着を開発して沢山売れていた。
朝から日が落ちるまでイベントは行われ大勢の人達を笑顔にた。
初日は大きなトラブルも無く終えることが出来た。売上も想定していた額を越えて今後のオフィキナリスの主な事業となるだろう。
レオナ達は城に戻りレオナの部屋で雑談をはじめた。
「んー、とりあえず大成功よね。気がつくと時間が過ぎているんだもの。あとは暫く続けて流れを見ていかなきゃね。新しい演出とかも取り入れたり変えたりしないと……」
「やっと形に出来たな」
「うん! これも全部みんなのお陰ね」
レオナは自分の作った物語で幸せな時間を与える。
何も出来なくて燻っていたレオナはもう居ない。
「ロードも案があったら教えて頂戴ね。次はどういう世界にするか悩んでるのよ」
「そうだな……実際に見に行かないか? 俺はそもそもこの世界を殆ど知らないことに気づいた。俺と一緒に……ジェネラルとかルーフェンも行った事無いな。アリシアに行った時みたいな発見があるかもしれない」
ロードはレオナの顔を真剣に見て言った。
「もしかしたら、想像できないくらい遠い所に行くかも知れない。楽しいことだけじゃなくて辛いこともあると思う。一緒に色んな物を見て不思議な物を食べてこのオフィキナリスに貢献して生きていかないか?」
今まで見たこと無い顔でレオナは驚いた後に微笑んだ。
「なんだか……プロポーズみたい」
「そのつもりだよ」
レオナはロードに抱きついて満面の笑みを浮かべた。
二人だけの物語が始まる。
メアリが書いていて、とても楽しかった。
もし宜しければ、
『混血魔族のアシュタロト』も読んで頂くと嬉しいです。
もっと余裕のあるスケジュールで次は書きますね。教訓です。
一週間じゃ駄目でした。
宜しければ評価して頂けれるとありがたいです。
初めに書いた短編
『孤独を知る怠惰なダンピール ~王女と出会って世界が変わる~』
短編を書いてレオナの物語を書きたくなりました。上記作品はロードとレオナの出会い(本作では一年前)のやりとりです。




