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乙女の恋バナ


 アリシアに用意してもらった部屋に三人は集まっていた。


 クロユリが展示場を止めたがっていたがお客さんも訪れていたのでそうすることも難しく今日の営業を終わるのをレオナは待っていた。


「それにしても……ロードの案には驚きを隠せないわね。本当にアレを渡しても良かったの?」

「父親の遺品とは言えアレは俺のものだ。俺がどうしようと自由だよ」

「私としては本当に嬉しいけど……」

「屋敷も放置して腐っていただろうからな。有効に扱ったつもりだから問題ない」


 今朝オフィキナリスからアリシアに向かう馬車が想像しているよりも大きくてレオナは驚いていた。中に入るとロードの家にあった棺桶や機械時計を含めて金目のものを全て押し込んだ状態で更に驚愕した。


 ロードがアリシアを訪れた時に魔力で動く道具の存在を知り、ステラに完敗したレオナと会話をしている時に屋敷を思い出していた。


 あの機械時計もきっとアリシアの技術と同じ様な物で動いているに違いないとロードが判断して出発前の夜にかき集めた。中には鉱石も含まれていて最悪大した代物で無いにせよ。少なからず貢献できるだろうと踏んだ。


 そして、ロードは『呪い師』だと嘘を並べてクロユリを挑発した。遺品が凄い物だとロードは信じて大博打を披露する判断を取る。


 それまでにレオナがクロユリと話をして最大の難問がワープゲートだと意識を向けてた。


 ワープゲートの突破口と更なる飛躍へつながるであろう道を標すことでクロユリを納得させることに成功。


 そもそもの問題点であるワープゲートが完成するという保証はゼロだ。機械時計に施されている技術を紐解いてアリシアの技術者が吸収したとしても作れるかは分からない。その点に関してレオナ達はアリシアを信じるしか無かった。


 それにも関わらず所長クロユリは第三王女レオナと『約束』した。ロードが直前に煽った事で冷静さを失わせたからこそ結ぶことが出来た可能性を否定出来ない。


 あまり綺麗な手とは言えないがレオナの交渉は無事に終わった。


 それでもまだまだ壁は立ち塞がっている。アリシアの協力を得る事が出来てもステラを納得させなければ何も始めきれない。


 レオナの想定する観光施設を作るにはアリシアの技術力だけでは全く足りない。世界観づくりの演出に関してはレオナも疑っていないが建物を作る所から始まる。それを実現させるためにステラを納得させて予算を振り分けて建築家の力を借りる必要がある。


 その建築家も大勢必要で人手が足りるか心配だった。


 考える事はまだあるが、とりあえず前に進むことが出来てレオナは安堵する。


「それにしてもロードさんは大胆ですねぇ、嘘がバレたらどうなるんでしょう」


 メアリの心配している点はレオナも気になっていた。少なくともクロユリはロードが凄い技術者だと思っている。


「バレたらそん時は流れに任せよう」

「うわぁ。適当ですねぇ。それにしても本当に成功してよかった。失敗したら止めなかった私もクビが飛んでたのかな―。最悪冒険者に戻って生きていけるからいいですけど」


 遺品がもし価値のないガラクタかアリシアの人でも価値を見いだせない代物だったら関係の悪化はオフィキナリスにとって必死だ。


「ルナ姉さまの雰囲気からメアリは凄い冒険者みたいだったけど、どうしてこの国の使用人になったの?」


 レオナは良い機会かと思ってメアリに訪ねてみた。


「あー、そこ気になりますか。別に隠してないですし教えても良いですよ。私はそもそも冒険者と馬が合わなかったんですよねぇ。パーティを組んで依頼をした時も動きづらいですし、気がつくとソロで依頼をやることが多くなって気づいちゃったんですよ。『もしかしたらこのまま一人なのかなぁ』って思ったら辞める決心がつきました」


 メアリが冒険者を辞めた理由を聞いてレオナは頷きながら聞いていた。


「決心がついた頃は第二王女と組んで依頼をしていたんですけど、冗談で使用人とか募集してないか訪ねてみたんですよ。そうしたら多感な妹が何をするか分かんないから面倒を見てくれる人を探しってるって言うんですよ。そこで私は思っちゃったんですよね『王女の妹は結局、王女で安全らしいオフィキナリスの上流階級とお知り合いになって寿退社できるかも』って感じで……つまり、将来設計に合ってました」


 メアリが企んでいた玉の輿計画を聞いてレオナは驚いた。


「えー、それでどうだったの? 誰かいい人見つかった?」


 レオナは滅多に周りでは起きない恋バナに目を輝かせた。


「務めて分かりましたがオフィキナリスには王子が居なくてびっくりですよ。王族と貴族も面倒くさそうな人ばっかりだし何処か頼りないって言うか……冒険者の職業病かもしれないですねぇ。なのでメアリは探してる最中でございます。今年で二十三になるのでそろそろ唾つけてたいです」

「えっ。唾? 汚れちゃうから嫌がられない?」


「あー、そういう意味では無いのでお嬢様は気にしないでください。お給料も良いし安全な国なので仕事内容は満足してるんです。あと最近はロードさんという新しい風が吹いてますし……私は結構ロードさんの事は好きですよ。最初の印象は最悪でしたけど」


 レオナはメアリの好きという言葉に驚いて声を荒げた。


「えー!? メアリってロードの事が好きだったの!?」

「安心してくださいお嬢様。性格も合いませんので好きと言っても同僚としてですね。ロードさんの献身的な動きを見ていると絶対に一途ですよ。間違いありません、浮気とか絶対にしないタイプですね。それにご存知ではないかも知れませんがロードさんは以外と強いんですよ。頼りがいのある男性で素敵だと思います」


 レオナはメアリの言葉で何故か心がもやっとするのを感じた。一瞬だけ襲った寒気は気の所為かと思うほど刹那でレオナは素直な感想をメアリにぶつける。


「それ絶対に好きじゃん!」

「ですから、好きですよ? でも、私的には無しですねぇ。無鉄砲で明らかに制御不能じゃないですか? 国の関係を考えずにあんな強行策を取るんですよ。絶対に私じゃ制御できませんね。あと、二十三年も生きると自分を理解できるものです。私は相手を支配する傾向が見え隠れしてますねぇ、私のスキル『影法師』もそんな感じですし……あと、本人の前でこんな話をしてるのに興味ない顔してるから完全に脈なしってやつです」


 確かに本人の前でやる話じゃないとレオナは隣で話を聞いているロードの存在を思い出して納得する。


 その張本人は顔色一つ変えずにレオナ達を眺めていた。


「ん? どうした?」

「えっと……メアリの話を聞いてどう思った?」

「お嬢様も大胆ですねぇ」


 レオナの質問の意味をロードは考えた。メアリが色々とロードを褒めている事は理解できたが所々で失礼なことを言われている。


「一応は良い奴なんだとおもう。嫌われないアドバイスをくれるくらいには良い奴だな」

「そうです。メアリは良い人なので、ロードさんも何処かに良い男が落ちていたら教えて下さいね」

「見つけた時には報告しよう」


 レオナは二人の仲が悪くない事だけ理解できた。


 そういう話をしていると空き時間が産まれたのかクロユリが現れる。


「お待たせしたね。それじゃ、さっきの話をしようか」

「よろしくお願いします」


 今決まった事は協力関係を結べただけで話し合いはまだまだ必要だった。


「まず、初めに気になる点が二つ。王女様の案はオフィキナリスの案なのかな?」


 クロユリが気にしているのは王女の独断かオフィキナリスの国策なのか確かめようとしているとレオナは察した。


「私の独断でこれからステラ……いや、キングを説得する必要があります」

「ふむ。こちらとしても協力すると言った手前できる事はやるつもりだがその点は絶対条件にしたい。オフィキナリスがやらないと判断するなら流石に我々も無理やり手を加える事は出来ない」


 その点に関してはステラとの交渉を成功させるの必要があるのでレオナも想定済みだ。


「次にロードくんから頂いた道具の扱いに関してだ。直せる自信が今は無いので予定は無いが解析するために分解しても良いのかな?」


 クロユリの言いたい事は至極単純でレオナに協力する条件で貰った遺品の扱いに関することだ。もしも、レオナと約束した協力関係が達成出来ない場合は筋が通らない。ロードが返還を希望するなら遺品を返す必要があり、その時に元の形である必要があるのか確認したかった。


「好きにしろ。別に粉々でも構わない」

「その言葉はとても助かるね」


 二人のやり取りが終わるとレオナは直近のアリシアが取る動きが気になりクロユリへ問いかけた。


 アリシアの取る行動はロードの遺品を解析して技術の習得を最優先に行い、ジェネラルのドワーフから魔石を手に入れる事だった。応用する技術があってもそれに耐えれる魔石が無いと意味がない。だから先にドワーフへ協力要請をするつもりだとクロユリはレオナに教えた。


 ドワーフの特性上、こんな珍しい物があれば食いつくとクロユリは予想している。遺品には様々な鉱石が加工して使われておりアリシアのメンバーだけでは判断もつかないのでドワーフを巻き込む必要がある。


 前からワープゲートに興味を持ったドワーフのドランと話をする予定があるから大丈夫だろうとクロユリは踏んでいた。


 レオナはワープゲートが完成する日付が見えないがそこはアリシアに任せると初めから決めていた。


 だからレオナは最後の懸念点であるステラ攻略に向けてクロユリへお願いを伝える。


「オフィキナリスを説得するお手伝いをお願いできませんか?」

「私は協力しても良いと思っているけど、流石に言葉で説得できる自信は無いよ。王女様と約束したから協力しろ何て面と向かって言えないねぇ」

「もちろんクロユリさんがキングと話す事は考えていません。私に案があります。それをやるために是非アリシアの協力が必要なんです!」


 レオナの提案を受けてクロユリは面白そうだと言って了承した。用意するまでに時間が必要で未着手の現在は予定が組めない。


 だから仮に一週間後と期限を設定した。そこで進捗を確認する約束を結びレオナ達はオフィキナリスへと帰る馬車へ向かった。


「お姉ちゃん達もう帰るの?」


 展示場のお手伝いを終えたミゼリがレオナを見つけて駆け寄った。


「うん。でも、また来るから安心してね」

「そっかー、また来るの楽しみにしてるね! お兄ちゃんもありがとね」


 ミゼリの言葉を聞いたにも関わらず何の返事もせずにロードは馬車へ乗った。


 そして、何かを持ってミゼリの前に屈んだ。


「わぁ、ありがとうお兄ちゃん」


 ロードは以前アリシアへ来た時の約束を守り屋敷にあった金盞花先生の前作を手渡した。

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