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世界創生の道


 ルナはメアリを連れて部屋から出ていってしまいレオナはロードと二人っきりになった。


「ステラ姉さまも含めて納得行く案を考える……」

「難しそうだな。俺には検討がつかない」

「そうよね」


 レオナは新しい紙を取り出して案を考える。元々、出来る事は少なくまずは視覚的に現状を纏めた。


 大人も楽しめる公園の案はステラに却下されてばつ印を記入する。そして、問題点を書いた。


 まず第一にオフィキナリスで公園を作った場合、ほとんどのお客さんが国民となる。


 その場合は安らげる空間が作れるなら国民が休日過ごす場所となるが、そこまで経済効果が見込めない。


 出来ることなら他国から大勢遊びに来てくれる道を作らなくてはならない。


 その道も安全かつ、ローコストで実現しなければ長期的に運営が望めない。現状は数百名を迎えることさえ困難だった。


「他の国から安全に移動する方法かぁ……」

「いいのがあるじゃないか?」


 レオナが移動系のスキルを持ってる人にどうにかお願いしたら無理かな? と非現実的な事を考えていたらロードが驚くことを言った。


「え?」

「ミゼリが作ってるよな。一瞬で移動できるような……ワープゲートって言ってたか?」

「あぁ! あの……でも、実験中なのよね? 実現化にどれだけ掛かるかわからないし」


 レオナはミゼリとのやり取りを思い出した。


「魔石とか足りないんじゃなかったかしら。私達で魔石を集めてミゼリちゃんが開発できるようにお手伝いするとか?」

「俺は石に詳しくないから手伝えないな。詳しいやつを連れて虱潰しに探して回るか?」

「うーん」


 とても現実的では無い内容でレオナが動いても結果が出せそうには無かった。


「私達でもアリシアみたいにビリビリだったり冒険者のスキルみたいな風だったり技術で解決できればもっと視野が広がると思うんだけど」


 ないものねだりで現状はどうしようもなくレオナは途方に暮れた。


「スキルについて俺は詳しくない。でも、レオナの口ぶりからすると近いことがスキルで補えるんだな?」

「そう……そうね。冒険者が魔物を倒す時にスキル次第だけど炎を扱ったりするわ。それでアリシアの技術とは違うけど……代理で近い事は出来ると思う」


 スキルには様々な効果がある。氷や炎に魔力を変換するタイプのスキルやルナみたいに自分から離れて視界を共有する事も出来る。身体強化で一般人と掛け離れた動きが出来る者も居た。


 優秀なスキル保有者は冒険者となり魔物退治に勤しんでいるがオフィキナリスでは前線に出ず持て余している者も少なくない。


「力を合わせたら大きな事が出来そうだな」

「そうねぇ……でも、今の問題は安全に移動する手段なのよね……移動だけでコストが掛かってどうしようもない」


 考えても答えが出てこない。十数分経っても進展が無いので思考をレオナは切り替えた。


「公園も駄目よね。もし大人向けの公園を作ったとして本当にみんな遊びに来てくれるかな?」


 大きな予算を掛けて予想を大きく下回る結果が出たらどうしようも無い。一度だけじゃなく、二度三度と訪れたくなるような場所を作らないと経済的な効果も期待できない。


 もしも国民全員、他国含めて大勢の人が一度訪れて飽きられたら二度目は無い。年々の来場者数がへり何れ廃れていく……レオナが目指すのは一時凌ぎでは無い。


「もう一度、行きたくなる場所は無いのか?」

「私が何度も行く場所……」


 ロードの言葉でレオナが真っ先に思い浮かんだのはロードの屋敷だった。


「いや、でもアレは文句を言いに行っただけで何度も行きたい訳じゃなく……」


 レオナが小声で何かぶつぶつと呟いてロードには聞き取れなかった。


「何か言ったか?」

「えっ、ううん。何でも無い。そうね……新しいお洋服が無いか西区のお店には行くわね。あとはご飯屋さんにメアリと何度か行くわ……基本的にこの城で食事は済ますけど、偶に不思議な物があって面白いのよね」

「俺は美味い肉が食えればいいな」

「あー、またお肉ばっかり食べるつもりね。うーん、大人向けの公園に洋服とかご飯があればいいのかしら……」


 何度も足を運びたくなる要素を考えるとレオナは一つの答えを出した。


「またアリシアには行きたいわね。不思議な物が沢山あって面白かった」

「それがアリシアの魅力なんだろう。見たこと無い不思議な物を見る為に足を運ぶ感じか?」

「そうね……明日もう一度アリシアに行ってみようかしら」

「俺も付き合うよ。展示場しか行ってないから今度は全体を見て回ろう」

「えぇ、隅々までちゃんと見て私達に足りない物を見つけましょう」


 経験を活かして視野は広がったと思うが二人はその後、何も進展がなく時間だけが流れていた。


 無言の時間も増えてロードは飽きたのか椅子にだらけて座り天井を見上げている。考えることにも疲れてロードは思考を放棄した。そもそもロードの人生経験はとても小さい。屋敷で過ごした時間が圧倒的に多くて寝るか起きて本を読むだけだった。


 引き出しが少なく内容も薄いロードは完全にお手上げで最近の出来事しか振り替えれない。


 そんなロードが思い出したかのように沈黙を破った。


「そういえば本をまだ読んでなかったな」

「ふぅーん。寝る時は一人だからもう読んじゃったと思ってた」

「色々起きてて読む暇が無かったな。そもそも俺は棺桶で時間を飛ばして読むことしかしていない。腹が減って外に出ることはあっても基本やることが無かった」


 レオナはロードと出会った時を思い出した。お庭で本を読んでいるロードに話しかけても無視された事が真っ先に浮かぶ。


「本を読んでるロードに無視されたのを思い出したわ」

「凄く邪魔だったなあの時は……それにレオナが一人で井戸の水を汲むことさえ出来ないのは驚いた」

「仕方ないじゃない! ロードと比べたら力も弱いんだし」

「そうだな。その後は部屋に押しかけてきたんだっけか。人が折角レオナの本を読んで世界を楽しんでいたのに酷い奴だ」


 邪魔して悪かったと少しだけ反省しているレオナは聞き逃す所だった。


 ロードが確かに口から出た言葉は『レオナの本』という単語。


「ちょ、ちょっと待ちなさい。ロード」

「どうした?」

「いま! あ、あんた! へ、へんな事を口に出さなかった!? レオナの本って……」

「あー、金盞花先生の本をー読んでた―のになぁー」


 ロードが目を逸して棒読みで言い換えた。


「ば、ばか! いつから気づいていたのよ?」

「今日だな。文字の感じが一緒だしよく考えたら明らかに手作りって感じの本だった。発売した本があんなに不格好な訳がない」

「うぅ、恥ずかしい。いっそあたしを殺して……」


 レオナは自分の顔が赤くなるのを感じてまた布団に飛び込んだ。ロードに合わせる顔が無い。あまりにも恥ずかしかった。


「前も言ったが俺は好きだぞ。レオナの作る世界で俺は退屈な日常を忘れられたよ。わけわからん不思議なもふもふした生き物がいたり、木々が葉っぱではなく炎を纏って様々な花を咲かせたり。辺り一面が大草原だと思っていたら超巨大生物の背中とか現実ではありえない。そんな夢物語の主人公が健気に挑戦する姿を俺は隣で見てる感覚だった」


 レオナは人に読まれるだけでも恥ずかしいのに中身について語られたら顔から火がでそうになった。


「俺には出来ないことだ。俺に出来る事は見守るくらいでレオナは凄い」

「嬉しいけどめちゃくちゃ恥ずかしいよぉ。でも、まっっったく売れなかったんだからね」

「気づいてない奴は勿体ないな。レオナには世界を作る才能があるのに」


 世界観に浸りロードは現実を忘れられると言っていた。そして、まだ『気づいていない』だけ。


 だったらレオナにはこれしかない。


「公園じゃなくて私達が作るのは世界よ!」


 レオナはこっそり布団から顔を出してロードに言った。


「おう」


 特に追求せずロードは同意する。


「この私が作る世界観で現実なんて忘れさせましょう。とりあえず、明日はアリシアに行くわ」

「分かった」


 レオナが宣言すると同時にメアリが戻って来た。


「明日はアリシアに行くのですね。ちょうど聞こえました」

「えぇ、行くことにした。さてと、私はお風呂に入ろうかしら。後でメアリも来て頂戴、一緒にお話しましょう」

「はい。着替えも用意しますね」

「ありがとう。ロードも今日はゆっくりやすんでね」


 そう言ってレオナは部屋から出ていった。アリシアで何をするか具体的には決まっていないがやりたい事は固まってきている。


 ロードは先程の会話で何か思いついたのかメアリへ依頼することにした。


「今日、馬車を用意してくれないか?」

「お時間はいつごろ……」

「夜だ。それで、明日アリシアに行く時は物凄くデカイ馬車を用意してくれ」

「はい……明日の件は了解しました。でも、今日の夜だと御者が見つからない可能性もあります」

「あぁ、荷台だけあればいい。あとは自分でどうにかする」


 そう言ってロードは自分の部屋に戻っていった。

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