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第二王女ルナ到来


 自室のベットの上に座り布団を纏って顔だけだしたレオナの隣でメアリは腰掛けて話しかけていた。


 遅れて到着したロードは椅子に座ってその様子を眺めている。


「いじけてるんですか?」

「いじけてない」

「お嬢様もまだまだ子供ですねぇ」


 レオナも言わなくて良い事を口にした自覚がありメアリに返す言葉が見つからなかった。


「メアリうるさい。ステラ姉さまと話をしてもっと考えないと駄目って知れたの。着眼点は悪くないって言ってたから何かが足りないだけなの」

「元冒険者の経験から言わせて頂きます。他の国をいくつか見て回ると分かりますが安息の地というのは珍しいです。魔物が闊歩して国の周りにある街や村を襲うのも珍しく有りません。だから移住者も多く……気づいてないかもしれませんがオフィキナリスは既に素晴らしい場所です」


 強い魔物が現れたら元Aランク冒険者のメアリでも苦戦する。パーティを組んで複数人で短所を補いあって倒せる魔物も珍しくない。


 長距離の移動は危険が伴う。いくら魔物が出ないと言われてもなんの保証もなく強い冒険者が多い国の方が安全と考える人も多数存在した。


「この国の良さは分かってるけど駄目なの……」


 弱々しくレオナが口にした時に扉がノックされた。ステラの部屋を飛び出したレオナは合わせる顔が無くメアリに対応をお願いする。


 仕方ないと言わんばかりの顔をしながらメアリが扉を開けるとそこには第二王女が立っていた。


「やっほー」


 懐かしさを感じる声を聞いてレオナが布団から飛び出した。


「ルナ姉さま!?」

「ただいまー。帰ってきたよ」

「おかえりなさい」


 逃げるように駆け込んでいたレオナは髪型が崩れている事に気づき手櫛で整えながらまだ赤い瞳を大きく見開いていた。


「お姉ちゃんに苛められたの? 私がガツンと言っとくよね」

「ううん。そうじゃないの……私が駄目だっただけなの」

「あらー、よしよし」


 レオナの頭を撫でてルナが目を光らせた。


「ところで知らない男の人がいるんだけど……お友達?」

「は、はい。えっと、お友達……うん?」


 釣られて友達と答えたがレオナは今までロードとの関係を深く考えた事が無かった。そんなレオナの様子を見てメアリが口を開く。


「こちらの方はロードさんでお嬢様が雇っている冒険者となります」

「へぇー、冒険者さんだったんだ。メアリが居るし護衛じゃないのよね?」

「現在はお嬢様の護衛も兼任しています」

「もしかして……メアリも忙しい感じ?」

「いえ、前と仕事の量は変わりません。私に用事がある時は街での護衛を任せているくらいです」


 ルナはメアリの話を聞いて興味津々にロードの座っている椅子の向かいに座った。


「初めましてロードさん。第二王女のルナと申します」

「ロードだ」


 ルナは自身に対して特に興味の無さそうな眼差しを見て質問する。


「ロードさんは此方に来る前は何をしていたの?」

「……姉の方にも聞かれたな。俺は寝て起きて本を読む生活をしていたよ」

「あれ、冒険者なんだよね?」


 ルナの疑問にメアリが答える。


「ロードさんは最近、冒険者ギルドで登録しました。なので、実績も無いです」

「……なんか読めてきたわ。きっとお姉ちゃんが冒険者としてレオナが雇ってる形を作ってるのね」

「ご明察です」


 うんうんと頷いたルナは何か気づいてレオナを向いた。


「ちょっと、レオナ? 何処で拾ってきたのよ。餌付けとかしたら最後まで面倒見ないといけないのよ?」

「ルナ姉さまロードはペットじゃありません」

「そ、そう? なんか複雑な感じがするわね。まぁ……帰ってきた時の楽しみが増えたと思う事にしたわ。また出なきゃいけないだろうし」

「外で何してるんだ?」


 初対面のロードが素直に抱いた疑問を訪ねた。


「一応、冒険者をしてるよ。王女様が冒険者をやるなんて他の国では信じられないかも知れないけどね。うちの精鋭を引き連れて各地に出現したダンジョンを攻略しているのさ。知っているかいロードくん。ダンジョンの奥底にはお宝が眠ってるんだぜい! それを売ってお金をゲットしてるってわけさ」


「ルナお姉さまは軍師と呼ばれる程だと話を聞いてます」


 レオナの声にも元気が戻りつつあった。


「皆が呼ぶだけでそんな大層な者じゃないよ。スキルが偶然噛み合っているだけなの。スキル『鷹の目』は俯瞰して少しの距離があっても見ることが出来るの。それで何処にどんな相手がいるか分かれば対策が取れるだけー」


 ダンジョンの内部を確認し相性の良いスキルを魔物にぶつけてゆっくりと進軍していくスタイルで安全に攻略していた。ルナの魔力残量に応じて進む為、攻略の速度は早くない。


 その代わり優秀な人材を失うこと無く安定した成果をあげていた。


 ルナ自身の戦闘能力は決して高くない。


 メアリが専属の使用人になる前はルナと一緒にダンジョンへ潜る事も多々あった。メアリのスキルで相手を拘束し全員で襲う必勝パターンが確立してからは楽になったが、その代わり応用力の低下が懸念された。


 そういった噛み合わない部分もありメアリ自身がソロで動くほうが良いと認識していた。


 色々な経緯がありルナのパーティから離れて現在はレオナの護衛を含めて使用人となっている。


「相手の位置が分かるってのは強そうだな」

「そうでもないよー、瞬時に分かる訳でも無いから怪しい所を虱潰しに見て神経使うのよねー」

「そうなんだな」


 ルナは姉であるステラと何があったのかレオナへ訪ねた。


 公園を作る話を聞いている間はルナも頷きながらゆっくりと話を聞いて自身の感想を口にする。


「要は観光地よね。素敵だと思うけどなぁー。魔物と戦ってると色んな事が起きちゃうのよ。今回のダンジョンもとある村の近くにあったんだけど、私達が着いた時には無くなっちゃってて驚いたわ。警備も一応配属されていたらしいんだけどアレは無理だなぁ」


 ルナが訪れた村の建物は何か凄い攻撃を受けたとしか表現できず、地面もボコボコに変形していた。冒険者は複数人でパーティを組み達成した依頼でランクという評価がされる。


 ルナの見た惨状を止めるには最低Aランク以上のパーティで無ければ食い止めることも出来ない。


 そういった被害が近年目立ち始めていた。


「みんなが笑顔で安心して過ごせる空間があったら本当に凄い事だよ。レオナも頑張ってるんだねー」

「それが実現できれば本当に良いです。でも、まだまだで……」


 落ち込むレオナを見てルナは困ってしまった。ルナ自身も国の内政に関しては姉であるステラに任せて自分に出来る事をやり貢献している。他国の情報を自分の目で確認する意味もありオフィキナリスの戦力を引き連れて依頼を受けている。


 頑張る姉に水を刺さないよう口出しはしないスタイルを貫いているルナは適材適所を理解している。もしも、自分がレオナと同じ状況になったとしたらどうするかを考えていた。


「難しい話なんだけどさぁ~」


ルナは考えた結果……何も答えが出てこなかったので自分の経験を語る。


「実は最初から順調じゃないんだよ。ルナの冒険者活動も色々あってね。ほら、色んな声があるんよね。王女に冒険者が出来るわけが無いって批判とかパーティで起きるわけよ。それを今の形にするまで苦労したー」


 ルナが冒険者として活動を始めたのはキングが倒れてからではなく。その前から行っており、小さなパーティからスタートしている。


「まずは自分のスキルを使っても失敗するんよね。思い通りに行かないし……経験ないから活躍できなくて味方からも立場とかあって腫れ物扱いって奴? そんな感じだったんだけど、一歩ずつ進んで今がある」


 そして、ルナはレオナにアドバイスした。


「まずレオナは相手を納得させる必要があると思う。今回はステラを納得させきれなかったんだよね? でも……」


 ルナはメアリとロードを見て続けた。


「レオナの活動に着いてきてくれる人も居るじゃん? メアリは仕事だから断れなくて付き合ってるかも知れないけど。そこのロードくんも暇なのか知らないけど」


 旧知の仲であるメアリは指でルナのほっぺたを突いた。割と力を込めて。


「ぐぇー。不満を行動で示されているんだけど。そういう事だと思うよ? この二人もレオナの考えに納得してたら付き合ってくれるだろうしさ。急に大ボスのステラに挑まなくてもいいんだよー。そうね……外堀を埋めるっていうか。例えば王族貴族を納得させて大勢でお仕掛けたらお姉ちゃんも簡単には断れないだろうし。ま、それには大勢を納得させないと無理だけどねー」


 ルナの言葉を聞いてレオナも頷いたが事の難しさが大きすぎて何から手を付けたらいいのか分からなかった。


「もしも自分に凄い力が有ればいいなってルナも思うんだよ。前線で戦いながらスキルを使って指示を出せれば楽になるだろうしさぁ……うーん。でも、目の前に優秀すぎて協調性に難がある人材を見てきたからなぁ」


 メアリは両手でルナのほっぺたをむぎゅっと挟み込んだ。


「うぅー。しょれでね、おもふんらけど」


 抵抗もせず何を言ってるか分からないまま続けようとしたルナに呆れてメアリは手を離した。


「あら。それで思うんだけど、出来ない所は出来る人に頼るってのも大事だとルナは思うよ。お願いするにはお互いの信頼関係とか出てきて大変だけど、この人なら任せきれるって人に納得して貰って出来ないことを投げちゃえ!」


 レオナはルナの言葉を自分の中に落とし込む。


「ステラ姉さまにしか出来ない事は全て任せて、私は私に出来る事をやるってことですよね。そして、私がやりたいけど出来ない部分を誰かにお願いする……」

「そんな感じー、ルナもそうやってるから……出来ない事を出来るようになるのも大事だと思うんだけどさ。やりたい事を楽しくやるってのも同じくらい大事だよ」


 出来る事をやる……至極単純だが裏を返せば出来ない事は絶対に実現できない。レオナにアリシアの様な技術力は無いしルナみたいに便利なスキルも無かった。レオナにできる……今までやってきた事を振り返る。


「なんか見えてきたかも知れない。ルナお姉さまありがとう」

「そぅ? 大したこと言えてないんだけど。助けになったなら良かったぁ―! うちのパーティメンバーを休める意味も込めて暫くはオフィキナリスで過ごすから相談くらいなら付き合うわよ?」


 そう言ってルナはジェネラルで会った冒険者が凄いと土産話を始めた。王女であるルナとは少し境遇が違うその冒険者は王族で前線に出ている。


 レオン・ジュピターという冒険者は他の冒険者の持つ強力なスキルと違い、ルナが最初に話を聞いた時はそこまで強そうに思えなかった。でも、今回一緒にダンジョン攻略を経て彼の凄さを語る。


 瞬時に様々な武器を切り替え近距離から遠距離まで対応するスキル『バトルマスター』は既存の武器に強さが依存する。


 レオンのセンスも良く他の冒険者と比べ物にならない魔力量が彼を別次元に押し上げていた。特にダンジョンを攻略した際に得る宝の中には特殊な効果を持つ武器がある。


 レオンが、その武器の性能を引き出しあっと言う間に魔物を倒す。


「何よりレオンが王族だから良いのよね。一緒に仕事した時はそのまま凄い値段で買い取ってくれるの」

「良い金づるを見つけたんですねぇー」

「メアリ? 人聞きの悪い事を言うのはやめなさい! ビジネスパートナーよ」


 二人のやり取りに釣られてレオナは笑っていた。

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