プロローグ
午前零時、いつものように動画投稿サイトにアクセスすれば、見慣れたアイコンがすぐに目に飛び込んでくる。
クリックをすればすでに始まっており、粛々とした声がイヤホンを通して耳に届く。
「アンナマリー、今日も見てくれているか?」
いつものように律儀に声を掛けてくれる「王子様」ことVTuberのレオンハルト・フォン・イシュヴァンタイン。
設定では、彼はこことはちがう剣と魔法の世界から来た王子様。
彼の目の前で突然消えてしまった護衛騎士の「アンナマリー」を探してこの世界にやってきたが、再会した彼女はすっかり現代に染まっていて、動画配信者を追いかけるのが趣味で王子には一切興味を示してくれない。
だから王子は、そんな彼女を振り向かせるために、今日も異世界トークを交えつつゲームをプレイする。
……そんな設定がなぜかウケて、今では人気の配信者だ。
「それでは、本日もゲームを始める」
画面の中に映っているのは三角形のぴんと立った耳をつけている王子様のような服装のイケメンのキャラクターのイラスト。
王子様の声に合わせて動く顔は精巧で、本当に彼が話しているように錯覚してしまう。
「……見ているけど、面白くなかったらすぐに止めるから」
そんな呟きを画面越しに聞いているかのように、目の前の偶像はやわらかに微笑んだ。
王子様は今世でも私を自由にはさせてくれないらしい。
初めまして!
ふわっと設定なので温かく見守ってください。