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トリック  作者: ジョゼフィーン
9/13

楽しむことにしたが

期間限定で楽しもうと私が取った行動は相手との距離を一定に保ち、自分から攻撃するのみ。相手には自分の懐に入れさせない。こんな時の私は優しくて残酷で、そして水を得た魚。


スキーチームのみんなといる時はケイと視線が合うと一秒見つめてから、肩を小さく竦めて首を傾げ悪戯に微笑む、ケイは人差し指で鼻を擦り視線を外し照れくさそうに笑う。


前を歩くケイを見付けると「寒いね」と声を掛けながらケイの腕に自分の腕を絡める。驚き動揺するケイに「?」と顔をし気付かないふりをして、力が入るケイの腕にそのまま腕絡めたまま歩き続ける。そして何事もなかったようにパッと腕を離し、その行為に更に戸惑うケイに気付かないふりをし話し続ける。


二人きりの時はそれまでと変わらない態度で通し、家まで送ってもらったときの頬にお礼のキス。驚き私の顔を見るケイに、私はサッと車から降りドアから覗くようにケイを見て、自分の唇に人差し指を乗せ、まるで内緒というように「ついしたくなっちゃった」と笑う。ケイは困ったように笑い、下を向き私を真剣に見つめる。私は「今日もありがとうね。おやすみなさい。」と笑顔のままバタンとドアを閉める。ケイは、また困った顔をして車を出し、私はそれを笑顔で手を振り見送る。


相手が自分に好意を持っているのを知ってる上での、この行為は楽しくて仕方ない。次は、どんな手で驚かしてやろうかと思案し、悪戯っ子のような笑顔が浮かぶ。


しかし、ケイは距離を詰めてくる。


スキーチームから離れてスキーがしたくなり一人でスキーに行くことにしスキーバスを予約した。それをケイに話すとバス停まで送ってくれることになった。早朝発のバスに乗り遅れないように夜が明ける前に出発することにした。ケイは時間通りに迎えに来てくれ、バス停には予定よりずっと早く着いてしまったので、近くのファミレスで時間を潰すことにした。ファミレスに入るとケイと私は向かい合わせに座り、二人ともコーヒーを頼んだ。


ケイは真面目な顔をして「どうして一人でスキーに行くことにしたの?」と聞いてきた。「スキーがしたくてスキーを始めたのに、今のチームにいつもいると私のスキーでなくなりそうで。皆によく言われるけれど、私にとってスキーはレジャーではなくスポーツなんだよね。」とケイが原因だと思われていたら悪いので正直に話した。ケイは仕方ないなーという様子で「リカらしいや。」と目を細めて笑った。


そしてケイは言い難そうに「リカってスキーの時はいつも化粧していないよね。今もそうなの?」と聞いてきた。「うん、そうだよ。今は日焼け止めのクリームだけだよ。」と答えた。「ね、触ってもいい?」とケイは意外なこと言ってきた。私はドキッとしたが平然を装い「うん、いいよ。」と左頬をケイに向けた。ケイは右手を伸ばし指の背側でそっと私の頬を撫でた。ケイの指は細くて長くてひんやりしていて、うっとりするくらい心地良かった。しかし、そんな素振りは見せない。


ケイは手を引き、引いた手を反対側の腕の上に置き「ね、女の人って30歳過ぎても、そんなに肌ってきれいなの?」と躊躇いながら聞いてきた。


私はとても動揺していた。「さあ?化粧は余りしないけれど手入れはちゃっとしてますから。ほら若い人と一緒なことが多いから少しでも若くいようと思って。」と茶化して返事をし「ケイさんさー、私ばかり構ってないでチームには他にも若くて可愛い子が沢山いるんだから、その子達と遊びなよ。チームでケイさんは人気あると思うよ。なんか私悪くって。」と自分の中の戸惑いを打ち消すように更に茶化すように言った。


ケイは軽く後ろに身を引き両手を頭の後ろに持っていき「そんなこと言うなよ~。」と伸びをするようにして言った。私は更に「いや本気で。だって学生生活もあともう少しなんだよ。貴重な時間を私に使っている場合ではないよ。うちのチームの女の子は可愛くていい子ばかりじゃん。勿体ないよ。」と続けると、ケイは少しムッとして「俺は・・・リカが一番可愛いと思っている。」と言った。私は「ケイさん優しいね。ありがとっ。」と笑顔で返事をした。気まずい空気が流れる。


私はスキーに話題を変え、ケイはそれに乗ってくれ、いつもの楽しい私達に戻った。


その後、私は一人でスキーがしたくて行ったのにケイのことばかり考えていた。やばいな・・・火が着きそう。自分をこのまま抑えられるか心配になった。

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