彼女
私は、女性専用ポータルサイトでスキーチームのメンバーを募集をすると、ユメというケイと同じ年の22歳の女子大生から入会したいとメールが来た。何度かメールをやりとりをし、チームのホームページを見せてから、家の場所を聞き、近くで感じの良さそうな私と同い年のチバを紹介し、次の山スキーから参加することになった。
ユメは笑顔がきれいな可愛い子で性格は明るくフレンドリーと好印象だった。スキーは上手で、その滑りはとてもきれいだった。ケイとコブの間をきれいに滑るユメを見て「ユメの滑りきれいだね。」と言うと「膝の柔らかさがポイント高いよね。」と答え、ケイはユメを眩しそうに見ていた。私はケイはユメを好きになりそうだなと思ったが口には出さないでおいた。
それから間もなく、残業して遅くなった仕事帰りに、いつものようにケイが迎えに来て「まだ時間大丈夫?」と聞かれたので大丈夫なことを伝えると相談をしたいことがあるということだった。私は、明確なアドバイスは出来ないかもしれないけれど、それでもよろしければどうぞ、と答えた。ファミレスでコーヒーでも飲みながらということになった。
ファミレスに着き「相談ってなに?」と切り出すと「俺、実は彼女がいるんだけど・・」とケイの話の途中で「えっ?だったら私と毎日遊んでいる場合ではないじゃない!ごめんね、今まで。」と驚き、そして申し訳ない気持ちになった。
「いや、別れたいんだけど何て言ったらいいのかなと思って・・・」とケイは気まずそうに言った。「彼女、いくつなの?それで、どのくらい付き合ってるの?」と聞くと、同窓会で再会した中学校の同級生で1年半くらい付き合ってるとのことだった。
「どんなタイプの子なの?学生なの?働いているの?」と聞くと、短大を卒業し保母をしてるとのことだった。大人しくて、男性についてくるようなタイプだと教えてくれた。ふーん、ケイさんはそういうタイプの子が好きなんだと思った。
今まで私と毎日会っていて大丈夫だったの?と聞くと、元からそんなに気持ちが盛り上がって付き合ったわけではないから頻繁に会ってはいなかった。就職して一人暮らしを始めるから料理を作りに来て欲しいから付き合ってる、のようなことを言った。別れたら、それがなくなるから別れないでいたとのことだった。「料理のため!?なんじゃそりゃ、ひどいなー。そんなの彼女が可哀想だから別れてあげなよ。料理だったら、たまーーになら私が行ってあげるよ。その代わり自分で作れるよう厳しく指導ね。」と茶化した。ケイは「リカは厳しそうだなぁ。お手柔らかにお願いしまーす。で彼女には何て言ったらいい?」
「うーん。まだお互いに若いのだから小手先の誤魔化しをしたりしない方がいいと思うよ。同級生で縁が繋がっているのだから嘘なんてバレてしまうことがあるだろうし。自分がどうして別れたいか、ちゃんと気持ちを伝えた方が今後の互いのためだと私は思うな。」と助言した。それ以上の話は、話したかったら話してくれるだろうと追及しなかった。
数日後、夜中にケイから電話が掛かってきた。いつもはメールなのに珍しいなと思って出ると沈んだ声で「今、大丈夫?」と聞いてきた。「うん、大丈夫だよ。どうかしたの?」と聞くと「今、彼女と別れてきた・・・」と絞り出すような声で言ってきた。
「そうだったんだ。何て言ったの?」「他に好きな人が出来たから別れたい。って言ったんだ。そしたら泣かれちゃってさ。それでも、もう付き合えないと納得させて別れてきた。俺、すごい悪いことした気持ちになって・・・自分がすげーやなやつに思えて・・・。」「そうだったんだ。ケイさんも辛かったね。嘘を付かないで偉かったね。彼女も今は辛いかもしれないけれど、次のステップに踏み出しやすいと思うよ。」「そうだといいな・・・」そんな話をして電話は終わった。
ケイさん好きな人がいたんだ。大学でかな?スキーチームだったらユメかな?次は、その相談もあるかもな。いや、その辺は自分でしっかりしそうだから、ないだろうな。電話後、私はそんなことを考えていた。