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トリック  作者: ジョゼフィーン
3/13

大雨

スキーチームのメンバーが増えスキー帰りの車は二人きりなることはなくなり、いつも誰かが一緒だった。同乗した人を送り届け、ケイと一番近い私が最後になり、その僅かな二人きりの時間になると聞き役になることが多いケイがよく話すのだった。何人かを送り届けると帰宅時間を遅くなり、それ以上何処かへ行くことはなくなっていた。


気が合うスキー友達であって、それ以上のものは求めていなかった。メールでの連絡のやり取りはしていたが、それはスキーへの日程調整のみだった。


仕事帰りの電車の中、ケイから「今、どこ?」とメールが届いた。そんな連絡をもらったのは初めてだったので躊躇しながら「仕事帰りで電車の中だよ。」と返信すると「傘持ってきた?」とすぐに返信が送られてきた。「持ってきてないよ。」と返事をすると「こっちは大雨だよ。迎えに行こうか?」と返信が来て、それは助かるとお願いした。


駅に着くとロータリーにケイは迎えに来ていた。それがスキー以外で会うのは初めてのことだった。車に乗ると「うぃーす」と挨拶されたので「ケイさん、ありがとうね。」と御礼を言った。私は夕飯を奢ると申し出たが断られ、割り勘でということでファミレスへ行った。


ファミレスに着いて向かい合わせに座り、オーダーをお願いした後、ケイは私の顔をまじまじと見て「今日は化粧してるの?」と聞いてきた。「うん、仕事だから多少はね。」と答えた。「リカはスキーの時は、いつも化粧してないよね?」と聞かれ「うん日焼け止めだけだよ。化粧はどうせすぐとれてしまうもの。」「ふーん。」「あんまり見ないようにね。ボロが出ちゃうから。」と私は照れた。


いつもスキーの話しかしていなかったが、この日はケイの大学のこと、バイトのこと、私の仕事などの話をした。私は照れもあって、いつもよりはしゃぎ、ケイはそれを優しい目をしながら頷いて聞いていた。ケイは強面の割に言葉が優しく丁寧だった。スキー以外の話も、意外なくらいフィーリングが合い心地の良い時間を過ごせた。


その日以来、ケイは用事がある時以外、仕事帰りの私を毎日駅まで迎えに来てくれるようになった。私は断る理由も見付からず戸惑いながら、それを受け入れた。

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