変身したら戻れないとか聞いてない
一話の倍の長さになってしまいました。
ある程度現状の説明もあります。
とてつもなく重要なことを告げるように放たれた言葉に、彼ーー名を東雲祐希ーーは開いた口が塞がらなかった。
「本当に魔法少女なんですか?」
その言葉に反応して先程Sランクの魔法少女だと言った男性は
「間違いない、私達も少女の文字を見間違えたんだと十回以上見直したんだ。ああそういえば自己紹介がまだだったね、私の名前はアレン・グレゴリ、グレゴリ博士の方が有名だろうね」
「いや、さすがに知ってますよ。というか世界的異能研究の権威がこんな一地方の一都市でなにをしてるんですか?」
「何ただの休暇さ、上の私が休まないと下が阿鼻叫喚だからね。それに、こんな出会いは研究所にいては、ないだろう?」
少しおどけたように言う博士に親しみが持てた。
事実確認は終了したので、解散という流れになり、博士が車で送ってくるというので一緒に帰宅する、
「しかし、Sランクはともかく魔法少女か……」
「何か問題でも?」
「それはこれから直面する問題だ。君のご両親に会ってからでもいいだろう」
そういわれてしまっては二の句が継げない。
静かにしかし確実に運命の時は近づいていた。
時がたって彼の自宅にて
現在の魔法少女とこの後起きるであろうことそしてそれに対する博士側の対応を話し合った。
魔法少女の問題
・能力値が同ランクの他のエインヘリヤルと比べて2~5倍ほどであるが制限時間があり、その時間が短くなおかつ時間を攻撃、防御、緊急回避などに消費して戦うため、基本的に多数と戦えないこと。
・ランクそのものが制限時間長さであり、今まで見つかったの魔法少女の最高ランクががⅮランクで一時間ほどFランクでは三分である。
・変身前は完全に少女であり、不意打ちに弱く異能適性検査の大半の目的が未覚醒の魔法少女の保護である。
・そして未覚醒だろうと覚醒していようと素質に目覚めた時点でenemyを引き付けることが多く、なおかつ他のエインヘリヤル以上に浸食されやすいうえに浸食体の能力は同ランクの魔法少女と比べてもさらに上がる。
・浸食されやすさによる迫害が目に見えないところに、及んでおり祐希君の将来に確実に影を落とすだろうこと。
・にもかかわらず、二十歳を過ぎると魔女という別のエインヘリヤルに代わってしまう事
・これにより研究が他と比べはるかに進まないこと。
それに対して
・迫害そのものは、どうこうできるわけではないが、未覚醒だろうと特定の波長が出ていることが研究でわかっている
・それにより。特定の波長を打ち消す装置をつければ、基本的一般人と同じく暮らせる
・ただし、Sランクという前代未聞の能力がどこまで抑えられるかわからないこと。
・封印という手段もあるが先述したとおりであること。
・それ以外にも、いくつか先に判明した魔法少女たちもつかっている対策があり、こちらは有効度が高いだろうという事
・最悪の場合でも、責任はとるつもりだ
ということが、話し合いの中で出てきた。
最終決断をするのは君だ、といわれても困惑するだけだろう。
そんな重苦しい空気の中東雲母が言った。
変身ってもうできるの?と
自分自身どうなのだろう、覚醒してはいないはずだと思ったが、考えた瞬間暖かいものが体の中にあふれた。
あふれたなにかによって締め切ったはずの部屋で風が渦巻く、リビングの床から物理的にあり得ない白緑に輝く大樹が天井をすり抜けてゆくそこには壁などなかったかのように大樹が小さく見える。まるで空間が広がっているかのように。
桜のような淡い色の花びらが舞う中で自身の姿が変わるのがわかる。
肩にもかからなかった髪が腰を少し過ぎたあたりまで伸びる、髪の色が黒からエメラルドのような透き通った緑へと変わる。目の色が黒から金色へと変わる
舞うように厳かに、けれども踊るように軽やかに。部屋の広さとは関係なく、明らかに拡張された世界がそこにはあった。
花びらともに舞っていた光が集い、はじけるとともに衣装になる。
自分の体を自分ではない誰かが動かすのは、恐怖でしかないはずだ。
だが、自分の中に今あるのは、自然。
そうであるかのようにそうふるまうのが正しいかのように、まるでこれは神が神に対して行う奉納舞なのだ、と見せつけるように、けれども手取り足取り先達が新人に覚えこませるように、舞っている本人すら観客であり、しかし神に仕える巫女なのだと自覚させるように。
やがてその踊りを終えるころには、彼女の変身は終わり、淡い桜色の巫女服を基準としたウェイトレスのような動きやすさと可愛らしさを両立して何一つ破綻なくまとめたようなまさに神の領域の衣装であり、しかし持っているのは、トレイではなくいっそプラスチックの玩具のようなピンク色の杖だ。
それを器用にバトンのように回しながら一周回りながら、、
『世に穢れはびこるなら、祓ってみせましょうこの力で』
回転させていた杖をぴたりと止め右手は中ほど、左手は下を持ちながら、正面を向き笑顔で、
『神域少女木花鈿女いまここに世を!祓い清めましょう!!』
博士が凍る父も凍る、変身した本人も羞恥の中で動けず、
ただ母親の
「あらまぁ、随分と可愛らしくなっちゃったわねぇ」
という言葉だけが、彼、いや彼女の現状を示していた。
おおよそ五分という時間が過ぎたのち、
「まさかこんなに簡単に、覚醒してしまうとは……いや済まない。そろそろ元の姿にもd「どうやってですか?」なに?」
ペタンとそのまま力が抜けたように座り込んだ彼女は、かぶせるように聞いてきた。
「……わからないのか?」
博士が驚いたように聞くと、こくんとうなずく。
「では、何ならできるのかね。変身したのなら、解除することもたやすいはずだがやはりSランクだからなのか?」
虚空を見ながら、まるで何もない空間に映像が投影されているかのように杖から手を放して、右手で一定の範囲を触る。
「えっと、魔装解除?ならできるみたいです。あと、変身時間が時間がなくて八を横に倒したみたいになっています」
「八を横に?まあそれはいい、魔装解除を試してみてくれ」
はいとつぶやいたあと、一つ大きな息を吐いて、魔装解除とこ束が出た瞬間。
風が彼女を中心に渦まき、風と共に集まった光が消えるとパンとはじけるように消えると、それまで彼が着ていた制服を着た、腰まで伸びた黒髪の美少女がいた。なお胸はない。
「え?」
「やはりそうなったか、魔装解除はつまるところアイドリング状態なのだから変身そのものが解除されるわけではない、時間経過待つしかないが、その八を横に倒したような記号、実際にどのような記号なのか書けるかね、ああむろん指でなぞるだけでいい」
そう言われて、空にその記号を書いてゆく、途中で気が付き指が止まる。
「気が付いたようだね、その記号はアンフィニ、無限を示す記号だ」
「つ、つまり?」
「君は、一生変身したままという事だろう」
その言葉聞いた瞬間、彼女の思考は何もかも放棄した、端的に言えば気絶したのだ。
倒れたままの彼女をお姫様抱っこで自分の寝室へと、連れていく母はリビングの扉をあけながら、
「あなた「な、なんだい?」明日この子の服を買いに行きましょう「いや、明日は――」あなた?「はい喜んで!」
有無を言わせずに明日の予定を決めてしまう奥方は続けて、
「博士、この子の選ぶ道については、また後日ということでいいでしょうか?」
「ああ、かまわない。本人が決めることですからね。他人が強制してもきっとそれを選んでしまうだろう。いまの祐希君には、ありとあらゆるつながりが切れたように感じるでしょうから」
「ありがとうございます」
パタンと静かにしまるドアを見つめながら、しばし
「奥様には申し訳ないが、今日のところはここで失礼させていただく。話し合いの続きは祐希君が落ち着いてからおそらくその頃には、研究所に戻っているから、テレビ電話になるでしょう」
「こちらこそ、このような機会を設けていただき感謝します。私は、息子がどのような道を歩もうと応援して、そして踏み外しそうになったら、殴ってでも止めるつもりです」
そう東雲父が言うと、博士は小さく
「そのような親ばかりならば、彼女たちは……」
「なにか?」
「いえ、もしもの話です。では」
その背には世界的権威の姿はなく上から無理難題を押し付けられたような、どうしようもない命題を突き付けられたかのような、そんな哀愁が漂っていた。
そうして、激変の一日は終わりを告げてゆく。
これから始まる激動の日々を全く予感させないほどに静かに。
自分の書き方は映像を思いうかべて、それを文字にするという形をとっています。
なので説明不足になってしまう場合があります。
個々の描写が足りないと思った方は、容赦なくご指摘ください。