公衆浴場
「ふー、やっぱ風呂はいいなぁ〜。」
湯船に浸かりながら1人ごちる。
今いるのは俗に言う公衆浴場と言うやつ。つまりはでかい風呂である。
今、俺たちが泊まっている名も知らない宿は宿代も安い上に言えば食事まで出してくれるという素晴らしい宿なのだが風呂はない。
いや正直なところこう言う中世の異世界だと風呂とかない、もしくは高貴な王族や貴族くらいしか入らないみたいな考えがあったのだ。
だからさっきの雑貨屋では石鹸やタオル代わりの布などを買って宿に戻ったら桶を借りてそこに水魔法で水を入れて部屋で体を拭こうとか計画していたんだけど。
なのでイオルが昨日風呂に入れなかったからと少し恥ずかしそうに言ったので驚いた。
「風呂、あるの?」
「うん? そりゃあるでしょー。…え、ジンさんの故郷だとお風呂に入る習慣とかなかった感じ?」
ジリっと少しイオルに距離を取られた気がする。
「あ、いやそう言うわけじゃなくてね⁉︎ えっと、そう、家ごとに風呂はあったんだけどあんまり温泉とか行く機会はなかったからさ!」
ここは名誉のためにきっちり否定しておかないと。
「あ、そう言うことか〜。びっくりしたよ〜。ところで温泉って何?」
「…温泉、というのは地中からお湯が湧いているところのことですね。なんでも不思議な匂いのするお湯で浸かればとても気持ちがよく、さらには怪我や病気の治療にも効くとか。ですがこの町の周辺では聞いたことがありませんね。町にある公衆浴場は普通の水を魔道具で沸かせただけのお湯のはずです。」
「不思議な匂いって硫黄のことかな? 効能とかも確か色々書いてあった気が…。」
昔温泉に行ったときに壁に張ってあった看板とかに打ち身や火傷とかに効くとか書いてたのを思い出す。
「えーすごい! ジンさん入ったことあるの? いいな〜。」
「あーうん、昔ね。ま、まあ今はそれよりこの町の公衆浴場のことを知りたいかな。俺もこの町に来てからはまだ風呂に入れていないからできれば行きたいんだけど。」
「ふむ、そういえばジンさんは石鹸を買っていましたね。洗濯用かと思いましたが洗身用でしたか。綺麗好きなのは良いことです。男性には風呂嫌いな方も多いですからね。ではせっかくですし皆で行きましょうか。」
「さんせーい。じゃあ買ったものを持って帰ってからお風呂に集合ね。」
「はい、ここからだとうちは少し遠いので先に失礼します。ではまた後で。」
「うん、また後でね〜。じゃあジンさん、いっかい宿に戻ろうよ。それで準備したらお風呂に行こう!」
「あ、ああ、うん。」
なんかトントン話が進んでしまった。駆けて行ってしまったユーンさんはもう見えないし、イオルはスタスタと宿への道を歩き始めている。とりあえずイオルに着いて宿に戻ることにした。
かなり短め。
次回のお風呂回への繋ぎです。




