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曜日替わり能力  作者: 向風
96/125

一張羅

「ジンさん早いよー。」

武器屋の店主が紐でまとめて持ちやすくしてくれた矢を抱えたイオルが店から出てきた。少し拗ねたように頬を膨らませている。

「あー、ごめん。」

そう言って軽く頭を下げて見せた。

「もう、しょうがないな〜。」

イオルも別にほんとに拗ねてるわけではなくすぐにニコッと笑ってくれる。

「お待たせしました。」

木箱を持ってお店からユーンさんが出てきた。中にはさっきの鎖鎌が入っているはず。

「うん、それじゃ次は雑貨屋さんだね。隣にあるって言ってたよね? ここかな?」

武器屋は両隣に建物があるが片方は明らかに民家なので反対側の看板の出ている方の建物の方に目をやる。

「うん、きっとこのお店だよ。ブライダさんの奥さんが経営してるんだって言ってた。」

「へえ、そうなのか。それじゃあ入ってみようか。」


カランという音と共に扉を押して中に入る。

「いらっしゃいませー。」

あいさつの飛んできた方を見るとこちらを見ている女性と目が合う。だが客の相手をしていたようですぐに目の前の人との会話に戻る。

店内には他にも数人の買い物客がいるようだ。

「じゃあどうしよっか? イオルは眼帯を買うなら店員に聞いた方が確実かな?」

「うん。店員さんの体が空いたら眼帯がないか聞いてみる。あとはちょっと日用品で買い足したいのがあるかな。」

「私はこれといって買う予定のものはないので色々見て回ろうかと。」

「わかった。俺も買いたいものがあるからしばらく個人行動にしよう。」

そういうわけで各自バラバラに買い物を始めることにした。



2人と別れて店内を見る。

(雑貨屋というだけあっていろんなものが置いてあるな。アクセサリーや置物はわかる。紙と、これは羽根ペンってやつか? この骨に穴が開いてるのはなんかの楽器か? あの並んでるのは花瓶? いや、コルクみたいので蓋がされてるな。飲みものか? そういえば回復薬とかもあるのかな?)

店内は結構広い。もしかしたら隣の武器屋とあんまり変わらないのかもしれないけどあっちは乱雑に武器を置いてあったからそのせいかもしれないが。


しばらくして目当てのものを見つけた。

(よし、まずは服だな。)

この世界に転生してきて3日目になる今日まで今着ている服の一張羅で過ごしている。さすがに着替えたい。

(女神様が用意してくれた服とはいえ着た切り雀はなぁ…。えーと、着れそうなのはこれとこれと、服屋ってわけじゃないから数は少ないけどいくつかは見繕えそうだな。)

武器や鎧ならともかくとして、普通の服を買うのにパーティの共有財産からお金を出すわけにはいかない。

俺個人の所持金は残り少ないし節約しないといけないので値段を見比べながら上下3着と下着を3枚選んだ。これだけ有ればしばらくローテーションしていけると思う。

(やっぱ生地がゴワゴワしてるなぁ。それにズボンも下着も紐で縛るタイプのしかないし。この世界、ゴムってないのかな? まあとりあえず服は良しとして後は適当に見て回るか。)

そう思い、別の棚に目を向けたところで

「ジンさん。」

横合いから声をかけられて振り向くとユーンさんがいた。


「あ、ユーンさん、買うものは決まったの?」

「はい、化粧品を少々。ジンさんは服ですか?」

チラリと俺が手に抱えている服を見て聞いてくる。

「うん、いや、恥ずかしい話なんだけど着のみ着のままこの町に来たから着替えがなくてね。これでやっと着替えられるよ。」

変に見栄を張っても仕方ないので正直に話す。

「そうでしたか。そういえばジンさんは一昨日この町に来られたばかりなんでしたね。ですが旅をしてきたのならそれなりの荷物はあったのでは?」

「えっ、まぁそう…だね…。」

あ、この話題失敗したかも。

「えーと、旅をしてる間にぼろぼろになったから捨てた。みたいな…」

「今着ている服以外全てですか?」

「あー、うん…。」

まずい、いい言い訳が思いつかない。

「ふむ、そういえばジンさんはどこから旅をしてこられたのですか? 故郷がとても遠いところとはお聞きしましたが、言葉が通じるので国外、というわけではないのですよね?」

「た、多分…。」

どうしよう、あんまり細かい設定用意してないぞ。

「…。」

「…。」

沈黙が辛い。

「ふむ、私が買ったこの鎖鎌ですがジンさんの故郷では有名な武器なのですか?」

「あー、そうだね。実際触れたことのある人は少ないと思うけど知識だけならあるって人が多いんじゃないかな。」

ユーンさんが話題を逸らしてくれたので飛びついた。

「そうですか。しかし面白い武器ですね。ジンさんから受けた説明や形状を見るに魔物相手でも有効でしょうが対人戦に向いた武器だと思われます。」

それはそうだろう。俺の知る限り元の世界に魔物なんていなかったわけだし。

「かと言って兵士が持つ武器とは思えません。鎌ということもあり農具をもとにしたものでしょうから村人の護身用として生まれたものかもしれませんね。」

「あー、たしかに。そういえばそんな武器だって聞いたことがあるような。」

「やはりそうですか。癖の強そうな武器ですから少し練習しないといけませんね。私は補正があるとはいえいきなり実践というわけにもいきませんし。」

補正とは【投擲制御】のことだろう。でもそれがなくてもユーンさんなら難なく扱える気がするんだよなぁ。


「話を戻しますがほかに買うものはないのですか?」

「ああ、ちょっと日用品を見てみようかなと思ってるよ。石鹸とかあるのかなって」

「石鹸ならあちらの棚にありましたよ。」

「お、ありがとう。じゃあちょっと見てくるよ。」

「いえ、私ももう少し見てまわりますのでしばらくしたらまた合流しましょう。」

「わかった。それじゃあまた後で。」

「はい。」

そう言ってユーンさんに教えてもらった棚に向かう。しかしもうちょっと故郷とか前世の設定考えないといけないな。そもそも隠すべきか話してしまうかも決めかねてるしなぁ…。




(…ふむ、話してはくれませんか。ですが何かを隠そうというよりはどう話すかというような風に見受けられます。何か犯罪を犯して流れてきたわけでも無さそうですし、そもそも悪い方には見えません。親睦を深めていけばそのうち話してくださるでしょうか?)

そんなことを考えつつ自分の買い物に戻ることにした。



最後のみユーンさん視点です。

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