自分に合った武器 ユーン視点
「よっと、待たせたな。これなら使えるんじゃねえかと思うんだが。」
ジンさんたちと話しながら待っているとひとつの木箱を抱えて店主さんが帰って来られました。
「拝見します。これは…、農具ですか?」
木箱の蓋を外し中を覗くと鎌と鎖が入っていた。
「…確かにこれなら私でも使えるとは思いますが流石に農具で魔物と戦うというのは。」
(これは馬鹿にされているのでしょうか? お前のような女に売る武器などないと? イオルが漁具を武器にしているのだからお前は農具でも使えという…。いやまさかそんなことはないですね。)
「ユーンさん? 何が入ってたの?」
「どれどれ〜、ってこれ何? 鎌?」
私が蓋を持ったまま固まっているとジンさんとイオルも木箱の中を覗き込んだ。
「えーと、これはあれ? 私が漁具を武器にしてるからユーンには農具を、みたいなこと?」
ふむ、どうやらイオルも私と同じようなことを考えたらしいですね。いえ、私は思っただけで口に出すようなことはしていませんが。
「いやいや、違うって。そんなつまんねえ嫌がらせみたいなことするわけないだろ。」
「えー、じゃあなんで鎌なの? これ投げるの〜?」
イオルが口を尖らせて店主に詰め寄る。
「いや俺も試したわけじゃねえんだけどよ。なんか一緒に入ってる鎖と繋げて使うらしいんだよ。」
「らしいって何さー。よくわからないもの売っちゃダメでしょー?」
イオルの口調からわかるが別に責めているわけではない。むしろふざけている感じ。
(イオルは人見知りする分、打ち解けるとかなり気安く話しかけるようになるんですよね。そのうち悪い大人に騙されるんじゃないかと気が気じゃありません。)
「いやだから店の奥にしまってたんだよ。その子の細腕でも使える武器で投げれるもんって聞いて思い出して持ってきてみただけなんだって。」
そう言って店主は私の方を見て言い訳する様にいうがこの人もイオルがふざけているのがわかっているようで困ったような顔をしながらも楽しそうだ。奥様に見つかると怒られるのではないだろうか?
遊んでいる2人は置いてジンさんの方を見ると鎌と鎖を手に取って物珍しそうにしている。こちらも何か楽しそうだ。
「ジンさん?」
「ん? あ、ごめん。ユーンさんの武器を見てるのに俺が夢中になってた。」
「いえ、それはいいのですが。気に入ったのですか?」
そう聞いて見たのだが答えを聞くまでもないだろう。鎌と鎖を持ったジンさんは玩具をもらった子供のようなキラキラした目をしていたのだ。
「あー、うん。いやー、漫画とかでは使われてるけど実物を見たことなかったからさ。ちょっと感動してた。」
ふむ、思っていたのと違う答えが来た。
「まんが? というのはわかりませんがジンさんはその武器を知っているのですか?」
「うん。これは鎖鎌っていう武器だと思うよ。ほら、柄の部分にこうして鎖の端を取り付けて…。」
そう言って鎌に鎖の片側を取り付けて見せる。確かに簡単に着脱ができるようになっていたようだ。
「なるほど。ですがそれでどうやって使うのですか? むしろ鎌としては使いにくいような気がするのですが。それに私が欲しいのは投擲武器ですし。」
「ああ、俺も実際触るのはこれが初めてだからうまく説明できるかわからないんだけどね。まず見て欲しいのはこっちの鎖。鎌に取り付けた方の反対側に分銅。まあ重りがついてるんだけど、ちょっと見ててね。」
ジンさんはそういうと鎖の半ばほどをもって重りのついた方を揺らすとそれをぐるぐると振りまわし始めた。
「…ふむ、なるほど。重りを振り回して速度を上げているのですね。」
「おおー、なんかカッコいい!」
「ちょっ! 兄さん、気をつけてくれよ⁉︎ ウチの店あんまり広くねえんだからな⁉︎」
「大丈夫ですよ、流石に思い切りはやってませんから。これで分かると思うんだけどこうやって振り回すことによってかなりの速度がでてるよね? そしてこれを利用して狙いたい的を目掛けて手を離すとどうなると思う?」
(あれだけの速度で回転しているものを打ち出す…。それも金属でできているものを。)
「かなりの威力になりそうですね。」
「うん、それに直接重りをぶつける以外にも鎖を巻きつける、なんて使い方もある。」
「なるほど、そして身動きを止めたところを鎌でザクリということですね。」
「そういうこと。」
説明を終えるとジンさんは鎖を回転させるのをやめて持っていた武器、鎖鎌を私に差し出してくる。
「ふむ、なるほど。」
持って見るとそれなりに重い。鎌の方は大したことはないが鎖部分はやはり金属なので多少重量があるがこの程度なら問題ない。
「これ、中距離の武器としてはかなりいいんじゃないかな? 回してから手を離す分狙いは付けにくいかもしれないけどユーンさんなら多分大丈夫だよね?」
これは私の【投擲制御】のことを言っているのだろう。確かにこれなら私の手で投げる、という条件を満たしているし問題ない気がする。
「ではこれにします。」
正直、面白そうな武器だと思った。ひとつ残念なのがこれを試せるのが次の土曜日ということか。
「お、毎度あり。じゃあ銀貨10枚だ。」
「じゃあ大銀貨1枚で。」
「おう。しかし兄さん博識だな。俺は鎖鎌なんて聞いたことないぜ。」
「え、あー。じ、地元で使ってた人がいたようないなかったような…。ま、まあそんな感じで知ってたんですよ。」
「そうなのか? じゃあそいつは元々兄さんの故郷から伝わって来たのかもしれねぇな。」
「あ、はは、そ、そうかもしれないですねー。じゃあ2人とも行こうか。次は雑貨屋さんだよね。」
そう言ってジンさんは早足で店の出口に向かう。
「あ、そうだった! じゃあブライダさん、また来るねー。」
「おう、次はちゃんとした矢を仕入れとくからな。」
「どうもありがとうございました。」
「姉さんもありがとな。面白い武器の使い方を見せてくれたあの兄さんに礼言っといてくれや。」
「はい、では失礼します。」
そう言ってジンさんとイオルを追いかける。
…しかしジンさんは何者なのだろう? 誰でも知っているようなことを聞いてきたかと思えばさっきのように妙に博識だったりする。聞いてみたら教えてくれるのだろうか?
投稿初めて4ヶ月目です。
4ヶ月もやれば100話は越えてると思ってたんだけどちょっと足りなかったですね。
100話行ったらちょっと自分で最初から読み返して物語の再確認のついでに誤字、脱字修正しようと思ってます。
今後もぼちぼちと進めていけるよう頑張るです。




