ユキノシタ納品
町へ帰って来てやることその1。ユキノシタの納品
「戻りました。料理長はいますか?」
「あ、ユーンさん! お帰り〜。ちょっと待てってねー。料理長ー、ユーンさん達が帰って来ましたよー」
店員のタマさんが料理長さんを呼びに行ってくれる。
現在地は冒険者ギルドの中にある食堂。
今日はここの料理長さんから受けた依頼でユキノシタを採りに行っていたのだ。
ゴブリンと戦ったのはそのついで。オークに至っては完全にイレギュラーだったのだ。
しばらくして料理長がやって来た。
「おおー、ユーンちゃん! よく戻ったね。今、お茶を入れよう。お仲間の2人もよければ飲んでください。」
そう言って料理長手ずからお茶の用意をしてくれる。
「さぁさぁ、座ってください。」
促されるままに着席。お茶と一緒にお菓子まで用意された。
「さぁどうぞ。」
「ありがとうございます。」
「わーい、いっただっきまーす!」
「あの、良いのでしょうか? 依頼を受けて食材を取りに行ったのにこんなもてなしを受けてしまって。」
「ははは、気にしないでおくれ。あと1時間もすれば食事客でいっぱいになるけど今の時間は仕込みも終わってて暇だからね。」
「そうそう、お茶でも飲みながら依頼の報告と何か面白いことあったなら聞かせてくださいな。」
料理長さんも俺たちの正面に座り、その横にちゃっかり自分の分の飲み物を持ったタマさんが座った。
お茶をひと口飲む。美味い。
「…ずずっ。美味しいですね。では依頼の報告をさせていただきます。今回の依頼は野草ユキノシタの採取。必要量は少しでしたが多く採って来てもあるだけ買い取って頂けるということでしたね。」
「うん、その通りだよ。それで採って来たユキノシタはその籠の中だよね。見せてもらっていいかな?」
「はい、どうぞ。」
床に置いていた背負い籠を机の上に載せると料理長さんは中をのぞき込み、何枚かのユキノシタを摘んで見る。
「うん、土や泥もほとんどついてない。綺麗に採取してくれてるね。量もこれだけあれば食堂でも明日の分くらいは出せるかな。」
「品質にも問題はないですか?」
「うん、大丈夫だよ。それじゃあ最初言ってたとおり、依頼料は1人銀貨3枚と買取分は1㎏ごとに銀貨1枚で買い取るよ。それでいいよね?」
「はい、もちろんです。」
「それじゃ計測器持ってくるからちょっとまってて。」
そう言って料理長さんは厨房に向かう。
「ねえねえ、ユーンさん。初めての冒険者の仕事はどうだったの? 楽しかった?」
料理長さんがいなくなってすぐにタマさんから質問が飛んできた。
「ええ、そうですね。とても楽しく、刺激的でしたよ。」
「そうなの? 今日は採取だけだったんでしょ? あ、もしかして魔物とか居た?」
「はい、居ましたね。」
「えー、なになに? スライム? 角ウサギ?」
「とりあえずゴブリンがいました。」
「あー、ゴブリンかー。ゴブリンはすばしっこいらしいけど遠くから見たの? それとも意外と遅くて逃げ切れた?」
「いえ、戦って倒しましたよ。」
「えっ⁉︎ ホントに? 大丈夫だったの?」
「ええ、まぁ。倒したのはジンさんとイオルですが。」
それを聞いて俺とイオルの方を見るタマさん。
「ん、まぁ4匹だけだったからね」
「もぐもぐ」
急に話を振られてちょっと素っ気なく答えてしまう。イオルはお菓子に夢中。
「お兄さん達、怪我しなかった? 新米冒険者とゴブリンってギルドで働いている側からすると心配になるんだけど。」
「あーはい。大丈夫でしたよ。ユーンさんからゴブリンにやられる新米冒険者の話は聞いたのでちゃんと作戦立ててから挑んだんで。パーティで戦えるかどうかの実験も兼ねての戦闘だったんだけど怪我ひとつなく終えることができましたよ。」
「それならよかった。でもユーンさん戦えるの? それともユーンさんが参加する時は採取系の任務だけ受ける感じ?」
「いえ、タマさんは私の能力を知ってますよね?」
「え、うん。【投擲制御】でしょ? 書き損じた紙とかを丸めてくずかごに投げるときに使ってるやつ。」
ユーンさん、普段【投擲制御】そんな使い方してたんだ…。
「そうです。なのでこれから武器屋に行って投擲武器を探して見ようかと思います。」
「武器屋かー、なんだか面白そうねー。」
そんな話をしていると料理長さんが帰ってきた。
「お待たせしたね。この計測器なら30kgまで量れるよ。」
「では1つずつ量りましょう。」
全部の重量を量り、籠の重さを抜いて計算した結果ー。
「全部で21kgってところかな。おまけして銀貨22枚でどうだろう?」
「いいんですか?」
「もちろん。それじゃあはい、銀貨22枚ね。」
わざわざ小袋に入れてくれた銀貨を受け取る。
「ありがとうございます。」
「いやいや、こちらこそ助かったよ。急がないとは言ってたけど早いに越したことは無いからね。」
「あ、料理長。お客さんですよ。」
「おっと、今日は早いね。それじゃあ依頼の完了報告は営業が終わったらギルドに行くからね。」
「はい、ではお仕事頑張ってください。」
「うん、ありがとう。タマちゃん、ユキノシタ運ぶの手伝って。」
「はーい。それじゃ皆さん、次はお食事に来てくださいね。」
そう言うと料理長さんとタマさんは籠を担いで厨房に引っ込んでいった。
「あ。あの籠ギルドからの借り物だけど良いのかな?」
「料理長は知ってるはずなので問題ないですよ。多分依頼完了の報告に行くときに持って行ってくれると思います。そうじゃなくても私が明日取りに行きますし。」
「そっか。でも今日は依頼者の対応に警備兵への説明、魔物の素材剥ぎ取りまでユーンさんに頼りきりだな。」
「そうですか? お役に立てているならよかったです。」
「もぐもぐ、ユーンがいて助かったねー。」
「食べながら喋るのはやめなさい。というかあなた一人でお菓子食べたんですか?」
言われて見てみるとお皿に載っていたクッキーみたいなお菓子はほとんどなくなっていた。
「あ、ごめん。美味しかったからつい…。」
「私は別に良いですが晩ごはんが入らなくなりますよ。」
「ヘーキだよ。まだまだ食べれるから。」
「…太りますよ?」
「…残りは2人で食べてください。」
「残りってあと3枚しかないでしょう。」
「美味しくて…」
「じゃあ最後一枚ずつ食べよっか。」
イオルは太ってないよ。なんて余計なことは言わない。どこに地雷が埋まってるか分からないから。
「そうですね。では食べ終わったら依頼完了の報告に行きましょう。」




