偽造カード
サルコスの町の正門前に集まっていた警備兵の人たちから町の近くでオークが目撃されたことを聞いたユーンさんは自分たちで討伐したことを伝え、証拠として討伐部位である鼻を取り出して見せた。
現在、話をしているのは警備兵のリーダーっぽい人とユーンさんのみ。イオルは両目とも開いてはいるもののユーンさんの左腕に自分の右腕を絡ませてもたれ掛かっている。俺はそのイオルの左側でボウガンと自分の武器を抱えて立っている。
「確かにオークの討伐部位で間違いないな…。だがなんで首を落としてこなかった? 町の近くな上にそんなもん背負ってるんだし持って帰って来れただろ? オークは討伐部位もだが素材として高値の付く部位は全部首から上にあるんだぜ?」
「そうですね、もちろん知っています。ですが剥ぎ取り用のナイフがこの有様ですので。」
オークの鼻を鞄にしまい、代わりに潰れてぐちゃぐちゃになったナイフを取り出す。
「…おいおい、どんな使い方したらこんな曲がり方すんだよ。ほとんど潰れてるじゃないか。」
「はい、唯一持っていた刃物がこの有様なのでオークの太い首の骨を断ち切るのは不可能でした。ですので骨の無い部分で買取額の高いもの選んで回収してきました。」
「あーじゃあ喉頭隆起なんかは放置か。眼球はどうした?」
「片方だけなんとか回収しました。もう片方は戦闘で潰してしまったので諦めましたが。」
「眼球も結構良い値で売れるのにもったいねえな。あのボウガンで撃ち抜いたのか?」
「討伐方法に関しましては冒険者としてパーティメンバー以外の方にお話するわけにはいきませんよ。」
「あー、そりゃそうだな。じゃあ遭遇場所とかだけ聞かせてくれ。」
「それなら構いませんよ。」
ユーンさんはオークと戦った場所を警備兵たちに分かるように説明した。
「なるほどな、よくわかった。協力に感謝する。」
そういうと警備兵のリーダーのような男は胸に手を当てて敬礼のようなポーズをする。
「いえ、この町に住むものとしては当然の義務です。これから確認に行かれるのですか?」
「ああ、疑ってるわけじゃ無いぞ? これも仕事だからな。」
「ええ、もちろん分かっています。もしわからなかった場合は明日、冒険者ギルドを訪ねて下さい。」
「おいおい、まさか丸一日冒険者ギルドで待っててくれるってのか?」
「ええ、お待ちしておりますよ。」
警備兵の男は冗談のように言ったのだが間を開けずに返事を返されてしまい驚いた顔をする。
「あーいや、な、確かに俺たち警備兵は町の治安維持ってのもあって疑ってかかることもあるんだが…。」
「はい、このままだと私たちには監視が付くのでしょう?」
警備兵たちの空気が変わった。
「…なんでそう思うんだ?」
「そうですね。まずですが門の上の弓兵の方に弓を下ろすよう言っていただけませんか?」
「…お前、何言ってやが」
それまでユーンさんと話していたリーダー格の男とは別の男が何か言おうとしたが
「ああ、分かった。」
「隊長⁉︎」
隊長さんはそれを遮るように言葉を被せてから正門に向けて手信号を送る。
うん、そうなのだ。なんか矢で狙われているらしい。
警備兵の数が多かったのでユーンさんが何かあったのかもしれないからイオルに超音波で調べられないかと言い、やって見たら俺たちに弓を向けている弓兵が4人もいたらしい。
「弓兵には引かせた。これで話してくれるのか?」
「ええ、まあ話せと言われましても、町に帰って来たら明らかに私たちを警戒するように門の上から弓で狙われていたわけですから。このまま素通りできると思うほど短絡的ではありません。」
「こっちとしてはなんで弓兵が居るのに気づいたのかが知りたいんだが。うちの連中だって遠見系の能力は警戒してんだ。そうそう見つかりはしねぇはずなんだがな。」
「それは冒険者として話すわけにはいきませんね。」
「そうか。」
「はっ、何が冒険者としてだ。隊長、やはりこいつらは怪しいです。捕縛するべきかと。」
血気盛んな若手の警備兵が隊長殿に提案する。
「怪しい、と言われましても。身分証としてギルドカードもお見せしたはずですが?」
「んなもん他人のカード奪ったらいくらでも身分なんざ誤魔化せんだろ。」
「ふむ、ずいぶんと常識のない方が警備兵をやっているのですね。」
「何だと!?」
「エンガー、ちょっと黙れ。」
「っはい…。」
若手警備兵は隊長さんに叱られて黙る。
「悪いな、こいつは今年警備兵になったばっかでな、まだ勉強中なんだ。エンガー、ギルドカードは他人に渡すことは可能だがそれを使って身分を偽ろうとするとカードが真っ赤に染まるようにできているんだ。覚えとけ。」
「ほ、本当ですか?」
「俺が嘘教える意味がどこにあるんだよ。」
「で、ですがまだ偽造という可能性も。」
「ギルドカードに使われてる材料もそれを作る魔道具も管理してんのはこの国に認められた魔道具職人だぞ。偽造なんぞ出来ん。そもそもお前、俺が本物のギルドカードと模造品を見間違えるとでも思ってんのか?」
「い、いえ、滅相も無いです!!」
顔を近づけてイオルと内緒話。
「…イオル、人のカードで自己紹介するとカードが真っ赤になるなんて知ってた?」
「…うん、知ってたよ。ギルドカード作った時に説明受けたもん。」
「…俺、多分聞いてないんだけど。」
「…ジンさんのギルドカード作った時の担当ってユーンなんでしょ? ユーン、全然ギルドカードの説明して無いじゃん。」
うんまあ、魔法と能力をカードに表示する方法とかもすっ飛ばしちゃってたしなぁ。
「こ、こほん。失礼、で、でしたら実際に見てみると良いでしょう。…イオル、あなたのギルドカードを貸してください。」
「え? いいけどどうするの?」
「いいから貸しなさい。」
「あ、ハイ、ドウゾ…。」
ユーンさんに睨まれてイオルはギルドカードを渡す。
さっきの聞こえてたか。まあ隣にいるんだから聞こえるよね。
「どうも。では、これが私のギルドカードです。」
そう言ってユーンさんはイオルのギルドカードを警備兵たちに見せる。
するとギルドカードはみるみるうちに真っ赤に染まった。
「…おおー」
「…話には聞いてたけどあんな風になるんだねー。」
またもコソコソ内緒話。
「どうですか? ご理解いただけましたでしょうか。」
「ああ、悪いな。わざわざ実証までさせちまって。」
「いえ、問題ありません。」
「…ジンさん、ユーンの顔見て。カードと一緒に赤くなってるよ。」
「…あ、ホントだ。少しだけ赤くなってる気がする。」
「…でしょ? 今のご理解いただけましたでしょうか、って絶対ジンさんに向けて言ったんだよ。ここで説明して説明忘れてたのをなかったことに あ、ごめん何でもないって。あ、あとちょっと腕が痛いかなって、はい、何でもないです、黙りまーす!」
横目で睨みつけられたようだ。だから聞こえてるってのに…。
そんなつもりはなかったんですけどギルドカードの性能補足回になってしまいました。
まあどうせどこかではやるつもりだったしいいかな。




