剥ぎ取りタイム
オークとの戦いに何とか勝利した。
「矢の回収終了〜。何本かは再使用は無理っぽいけどね。」
「はい、やはり目に深々と刺さった矢は回収不可。そしてナイフと直接ぶつかった矢は変形しています。」
「まあしょうがないよ。じゃあこの戦闘で消費したのはボウガンの矢はロープ付き含めて合計3本、冒険者ギルドの備品のナイフ1本、それとやばい臭いのする液体入りの小瓶2個か。」
「はい、ちなみにオークですが討伐部位は鼻になります。素材として持ち帰るのは両耳と上下の犬歯4本に眼球。今回は片方潰れていますのでひとつだけですね。本来なら首を落として頭ごと持って帰りたいところですがこのナイフでは無理です。抉り出しましょう。」
そう言うと潰れてほとんど刃の無いナイフと曲がった鉄の矢を使ってぐりぐりと剥ぎ取りにかかるユーンさん。
「うわぁ、ユーン、よくそんなの出来るね……。」
イオルが恐怖と尊敬の入り混じったような顔でその様子を見ている。
「ギルドで素材の買取や解体を手伝うこともありますからね。2年も働いていると嫌でも慣れます。」
何でも無いことのように淡々と話しながらも手は止めない。かなり勇ましい捌き方をしているが冒険者ギルド仕込みだったんだな。本当に慣れているようだ。
眺めてはいるが正直なところ俺も若干キツい。これでも血が出ないから多少マシなんだろうが今ナイフを渡されても出来ないと思う。
(でもそれじゃあダメだよな。この世界で冒険者でやってくなら慣れるしか無いんだ。)
少しでも慣れようと近づいてユーンさんの手元を覗き込む。
ちょうど緑色をした片耳を削ぎ落としたところだった。
「こんなものですかね。犬歯以外の歯も状態によってはそれなりの値になるので惜しいところですが。あまり遅くなると摘み取った野草も傷むかもしれませんし買い物の時間も無くなってしまいます。ここまでにしましょう。」
「ああ、そうだね。それじゃあ帰ろうか。」
「お、終わった? もういい? 見ても平気?」
「終わったよ、でも見るのはやめとこっか。」
「う、うん、了解、じゃあ見ない。」
イオルは最初は頑張っていたのだが途中でギブアップ。俺の背中に隠れていた。
「まあ無理に慣れる必要はありません。熟練冒険者でも解体は苦手という人もいるくらいです。」
「そうなのか? じゃあそういう人は魔物を倒したらどうするんだ?」
「色々な方がいますよ。討伐部位だけ頑張って剥ぎ取ったり、パーティを組んで自分の取り分を減らす代わりに他のパーティメンバーに頼んだり、小型〜中型の魔物までしか狙わないように決めていて魔物を倒したら荷車に押し込んで持ち帰るとか。まあいずれも効率は悪いですが。」
「なるほどね」
「私が参加できる時はお任せください。それ以外の日は採取依頼を受けたり、休日を入れるというのもありでしょう。むしろ出来うる限り参加したいので水曜と土曜は休日にしないでください。」
「りょ、了解。」
真剣な勢いで訴えられたので了承してしまう。
「ふふっ、ユーン、今日凄い楽しそうだったもんね。」
「はい、今日は刺激的な日でした。朝起きた時はこれから謝罪に向かうこととどんな要求をされるのかで不安でたまりませんでした。それなのにこれから謝罪をしようとしている方が親友と一軒家から出てくるのを見て驚かされ、能力の暴露に対する罰として自分の能力を知って置いて欲しいなどと言われ、それならばと私の能力を知りたいなどとイマイチ罰というには弱い内容で納得させられてしまいました。そして一緒に冒険者をやろうと誘われ、私は自分の能力を気兼ねなく話し、使うことのできるパーティに入れて頂きました。そして採取依頼にゴブリン退治。果てはD最低ランク以上のパーティを推奨されるオークとの遭遇。こんな刺激的な日は初めてです。」
目を輝かせるとはこの事かというような顔を向けられる。
「まあ毎回の冒険が今日みたいになるとは限らないぞ? 今日のは明らかに準備不足なとこあったからね、特に最後のオーク討伐。」
「はい、それはもちろんです。ではその準備不足を補うためにも町へ戻って買い物に行きましょう。」
「ああ、そうしよう。とりあえず途中で置いてきちゃった背負い籠拾いに行かないとだな。」
「よーし、じゃあしゅっぱーつ!」
イオルの掛け声と共に歩き始めた。




