VSオーク3
「炎弾! ファイアボール! 燃え盛る業火よ、我が敵を燃やし尽くせ、フレイムシュート! 」
思いついた順に火魔法っぽいものを試す。詠唱は趣味。
「…出ないか。いまいちイメージも出来ないし火の玉を飛ばすのは無理っぽいな」
ものは試しとやってみたのだが使える気がしない。
(少しずつだけどオークも弱ってきてるみたいだしここまできたら仕留めたいよなぁ…。)
オークはこちらの出方を覗っているのか、それとも体力を回復させるためかはわからないが俺を見たまま動かないというような行動を取るようになってきていた。
互いに様子見しながら呼吸を整える。
そんな中オークの顔目掛けて何かが飛来。
片目を潰されてから顔面への攻撃を警戒していたオークはそれを腕で受ける。
オークの腕に阻まれた何かはパリンッという音を立てて潰れ、中に入っていた液体が飛散する。
「ブゥゥ…、ブオッ!? ブモオォォォ!!?」
急に苦しむような声を上げて暴れ始めるオーク。
「…なんだ? どうしたん…、、くっさっ⁉︎ なんだこの臭い!?」
急に漂ってきた刺激臭。いや十中八九あの謎の液体だろうけども。
距離をとって匂いに苦しむオークを見やる。とそこへ
「顔を狙ったのですが防がれてしまいましたか。しかし想像以上に酷い臭いですね…。」
悪臭に綺麗な顔をしかませたユーンさんが横に並んで惨状を眺める。
「今のってユーンがやったんだよね? 一体何投げたの…?」
少し遅れてやってきたイオルがユーンさんに質問する。
「陶器の小瓶に激臭のする液体を入れて作った魔物撃退用の道具だそうです。先ほどの2人、兄妹らしいのですが彼らを町への道まで送り届けた際に貰いました。おじいさんのお手製だそうですよ。」
そう言うと持っていた袋から小瓶を摘んで見せる。そしてそのままの流れで投擲。
「ちょ⁉︎」
投げられた小瓶は綺麗な放物線を描いて今度こそ激臭に呻いているオークの顔に命中。小瓶は砕け中身がオークの顔中にかかる。
「今度はちゃんと当たりましたね。」
「ブッ!? ブォォォオォォ!? ブフゴォ!!??」
「「うわぁー…。」」
顔についた液体をなんとか取ろうとしたのだろう。手のひらで顔を擦ったオークは右目に刺さっていたボウガンの矢を自分で押し込んでしまったようだ。
「矢は貫通したようですがまだ倒れませんね。頭の大きさの割に脳が小さいのでしょうか。」
「そ、そうだね…。」
ユーンさんの一切の容赦ない行動と言動にドン引き。
(魔物に血が無くて良かった。そうじゃなきゃかなりのグロ映像だぞこれ…。)
でもこれはチャンスだ。
「あの腹に刺さっている矢を押し込めば魔石を壊せそうだな。」
「え、ああ、確かに…。うん、顔を押さえてる今なら行けるかもだけど…。」
「ちょっと思いついたことがあるんだ。2人とも手伝ってくれ。」
暴れているオークの後ろに回り込む。
(さぁ、作戦通りに頼むよ。)
オークを間に挟んで向こうにいる2人に合図を送ってからゆっくりとオークに近づく。
手にはユーンさんから借り受けたナイフを持っている。
「ブォォォ…!」
やっと臭いが薄れてきたのかそれとも慣れただけか、オークはボウガンを構えているイオルと左手で小瓶を持っているユーンさんを警戒しているようだ。
俺がかなり近づいたところでオークは2人に向かっていくような動きを見せる。
「はぁっ!」
そのタイミングでユーンさんが右手に持っていた拳大の石を投擲。
小瓶の方を気にしていたらしいオークは一瞬反応が遅れたが顔目掛けて飛んできた石を腕で受け止める。
そのユーンさんの投擲とほぼ同じタイミングでオークへ飛びかかる。
オークの背中、魔石がある辺りを目掛けてナイフを突き刺す。
「ブモォォ?」
刺さりはしたもののこんな小さいナイフでは大きな体の中心にある魔石まで届かない。だが、
(ここだ! 【磁石化】!!)
ナイフを持つ両手を【磁石化】で自分に出来る最大の磁力の磁石にする。もちろん刃にも指を当てて。
そこへ正面からイオルがロープ付きの矢を発射。
イオルが使っている矢は通常、ロープ付き共に鉄製だ。
放たれた矢は既に刺さっていた通常の矢の後ろに吸い付くように命中。
そして矢は磁力を纏ったナイフを目掛けて進み、途中にある魔石を破壊した。
ガチン!!
「うおっ⁉︎ とっと!?」
刃の先に当たった矢の勢いに負けて数mほど俺の体が後ろに飛ぶ。
強制的にオークの体から離された俺の持つナイフは通常の矢とロープ付きの矢が繋がった状態で刺さっており、もうナイフとしての形状を留めていない。
「ブォォ? オォォン…?」
そして魔石を壊されたオークは自分の体を貫くロープを掴もうと手を伸ばしたところで崩れ落ち、その場に倒れた。
「何とか上手くいったなー。」
「はい、お見事です。【磁石化】にはこう言った使い方もあったのですね。」
「いやいや⁉︎ ギリギリじゃない! ナイフグチャグチャだし下手したらジンさんの体ごと貫通してたかもしれないでしょ!?」
結果に好意的なユーンさんに対してイオルは納得していないようだ。
「まぁ確かに反省点の多い使い方ではあるよな。でもおかげで【磁石化】でやれそうなこといくつか思いついたよ。」
「それは良いですね。反省を活かし次に繋げる、素晴らしいことです。」
「次またこう言うのやれって言われたら断るからね!?」
「了解、さすがに同じことはしないから安心して。」
「それならいいけど。はぁ、でも疲れたよー。ちょっと休憩ね。」
「賛成。」
オークという強敵を何とか倒した俺たちは町に戻る前にしばしの休憩を取った。
今回ちょっと無理あるだろって戦闘をしてみました。
ま、異世界だしいいよね。




