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曜日替わり能力  作者: 向風
80/125

VSオーク

「ブモォォン!」

「うるさいなぁ…、目の前で吼えるなよ。」

オークの巨体を前にぼやく。

近くで見るとさすがにでかい、3mは優に超えているだろう。

「勝てるかこれ?」

さっき走り抜け様に足に向かって1発叩きつけてみたけど全く効いていないっぽい、むしろこっちの手が痛かった。

追いかけられていた2人はユーンさんが連れて避難を始めた。オークは目の前の俺かユーンさん達を追うかで迷ったようだが俺を潰す事にしたらしい。腕を振り上げ、真横に振るう。

その腕が振われる前に後ろに回避、全力で飛び退く。

ブォンッ!

俺の目の前を剛腕が通り過ぎていく。

その余波で起きた風圧に体勢を崩されながら思う。


あ、これ当たったら死ぬわ。


(いや、正直ちょっとだけね、もしかしたら何とかなるかも、なんて思ったりもしてたんだけど無理無理。1発即死級の火力持ちに初期装備で挑むとか無いわー。しかもハードコアモードで死んだらロストとかどんな縛りプレイだよ。)

攻撃を躱されたオークだがすぐに逆の手を伸ばしてくる。手っ取り早く掴んでしまおうということか。

まあ掴まれてもゲームセットなので必死に避ける。今度は伸ばして来た腕を掻い潜りオークの足元に逃げ込む。そこで棒を振り回しオークの足をペチペチ叩く。うん、ほとんど効いてないね。

すると叩いていた方とは別の足が持ち上がり踏みつけようとして来たのでまた退避、オークの後方に抜ける。

オークが俺の方を向いたところで側頭部に矢が突き立つ。

「ブオォォ!!」

オークは矢の飛んできた方を振り向く、だが撃ったイオルはもう岩場に隠れてしまい見当たらない。

矢は刺さりはしたものの浅く刺さっただけで貫通はしていない。やはり威力が足りないようだ。

だがそのおかげで時間が稼げた。怖いので半歩だけ近づき右手を向ける。

「火炎放射!」

ゴウッという音とともに炎を浴びせかける。

「ブモオォォォ⁉︎」

流石に炎は効いたらしいが嫌がるように叫んで射程外に逃げる。

「…なるほど、あれか、中ボス(盗賊の頭)が火魔法ひとつで転げ回ったのって下手に知恵があったから地面で消そうとしてたのか。それに対して本能で動いてる魔物は飛び退くよなぁ。」

ついに明かされる中ボス(盗賊の頭)があんまり強くなかった謎。いや昨日の話だけどさ。

気力温存のため火力を抑えながらも威嚇のために火を出し続ける。

「倒すのはともかく何とか時間稼ぎしないとな…。」

「ブモオォォォン!!」

「よっしゃ、やるだけやってみるか」



オークに追われていた兄妹を引き連れたユーンは町へ続く道まで2人を送り届けた。

「着きましたよ、降りられますか?」

「うん、お姉さん、ありがとう。」

「はぁはぁ、あ、ありがとう、本当に助かった。」

「いえ、ここからならもう町も見えますし2人だけで帰れますね? そういえばあなた達、町の外に何のようで出ていたのですか? まだ妹さんの方は小さいようですし危険でしょう。」

「そ、それは…」

「む、話せない内容ですか?」

ユーンは少し訝しげに2人を見る。

(何か犯罪に関わるようなことでも? そのような者を助けたためにイオルとジンさんが今も危険な目に遭っているということですか?)

逃げる時間を稼ぐためとはいえ2人を置いて来てしまった事に罪悪感を持っていたユーンは睨みつけるように見てしまう。

「ひっ⁉︎ あ、あの…、ううっ、お兄ちゃん…。」

「い、いや、言う! 言うから!! その、妹の、アロエの能力に関係する事なんだ! 最近やっと教会で見てもらって能力がわかったから使って見ようってなって!」

「能力? 町の中では危険な能力ですか? ですがもしそうだとしても離れすぎでしょう。」

他人の能力を詮索するのは冒険者、そして冒険者ギルドで働く者としては良くないこととされる。だが、それが犯罪に関わるようなことである場合は別だ。

「それはそうなんだけど…、魔物が見つからなかったんだよ…。」

「魔物に追われていたではないですか。」

何を言っているんだと思う。たった今魔物であるオークから逃げて来たところだと言うのに。

「違っ、あんな強いやつじゃなくってさ、もっと弱いスライムとか角ウサギとかで」

「スライムや角ウサギは基本的に森に住んでいます。平原や岩場では滅多に見ることはありませんよ。」

「へ? そうなの?」

「それにスライムも角ウサギも弱いとはいえ魔物。妹さんはもちろんですがあなたがいたとしても危険には変わりありませんよ。」

「そ、そうなのか?」

ため息が出そうになる。あまりにも無謀、イオルでもここまで考え無しな行動は取らない。…と思う。

「もういいです。とりあえず町帰りなさい。私は2人が心配なので戻ります。」

無駄に時間を使ってしまった。自分が戻ったところで大してできることはないがただ待つと言うのも出来そうにない。

「も、戻るのか⁉︎ せっかく逃げ切れたのに⁉︎」

「戻りますよ。何か問題でも?」

つっけんどんに返事をするユーン。

「あ、いや、無いけどさ、そ、そうだ、せめてこれ持って行ってくれ!」

そう言って小袋を突き出してくる。

「何ですかこれ?」

「これは俺のじいちゃんが作ったやつでー」


初めは胡散臭そうに聞いていたユーンだが話を聞くうちに興味を持った。

「ふむ、それが本当ならありがたいですが、なぜ自分で使わなかったのですか?」

「あ、いや、その焦って使うの忘れてて…。」

「…はぁぁー」

今度こそ我慢できずにため息を吐いてしまった。

「あ、あのお姉さん、お兄ちゃんをあんまりいじめないで…」

「いじめているわけでは無いのですが…、ではこちらはありがたく使わせていただきます。」

「あ、ああ、そうだ、無事に帰って来たらあの助けてくれた兄ちゃんも一緒に会ってくれないか? ちゃんとお礼が言いたいんだ。」

「そうですね、では明日にでも冒険者ギルドにいらしてください。会えると思いますから。」

「冒険者ギルド…、そっか冒険者だもんな。わかった、行くよ。」

「はい、では気を付けて帰ってくださいね。では失礼します。」

そういうとユーンは今度こそもと来た道を走り始める。

「おねーさーん、ありがとー!」

妹は両手を目一杯振り、兄は同じようにしようかと一瞬迷った後、静かに頭を下げた。



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