威圧と対話
「近くで見てもやっぱり町って感じじゃないよね」
見つけた町に近づいて来たがやはり町と言うより村といったほうが近いと思う。
「家も全部同じような見た目してるし、でもこれがこの世界の常識って事なのかな?」
とりあえず入口らしき柵の切れ目に向かって歩いて行くと人が立っているのが見えた。
「止まれ!」
とりあえず止まる。この世界での初めての会話は威圧的なものだった。
「おまえ、この村のものでは無いな?何のようだ!」
呼びかけて来た男との距離は約10メートルほど。男は帯剣している剣を掴みいつでも抜き放てるようにしているようだ。
(いきなり戦闘⁉︎)
気になることも言っていたし何とか対話に持ち込みたい。
「いや何のようと言われても、というか村?ここはサルコスの街じゃ無いんですか?」
「は?ここが町に見えるってのか?」
(いや見えないけども)
余計なことは言わずに会話を続ける。
「いえ、リストの森の近くに町があると聞いてやって来たので」
「本当だな?」
「はい、なのでここが目的地でないならすぐに立ち去りますが」
「…盗賊ではなさそうか」
「少なくとも盗みを働いたことはないですね」
「…そうか」
そう言って男は剣から手を離した。
「威圧してすまなかった」
男が頭を下げる
「いえ、お気になさらず。何かお取り込み中だったのかもしれませんし」
「そう言ってくれると助かる。ただなるべく早くここからは立ち去ってもらいたいのだ」
「はい、それは大丈夫なのですがその、サルコスの町の場所がわからなくて」
「ああ、そうだったな。しかしリストの森の近くというだけの情報で旅をしていたのか?流石に無謀だと思うのだが…」
「あ、やっぱりそうですよね、森の中でも迷ってしまいましたし。」
「なっ、森に入ったのか!?」
「え、あ、はい、まずかったですかね?」
やはり立ち入り禁止だったのだろうか。
「まずいも何も…どこから来たのかは知らないが途中の町で聞かなかったのか?今はリストの森にオーガの群れがいるんだ。だから討伐されるまで立ち入り禁止になっているんだ。」
オーガ、ファンタジーものではよく登場する化物で人よりも遥かに大きく、とてつもない力を持ち、そして人が好物であるなど恐ろしい存在だ。
「うわぁ、じゃあゴブリンにしか遭遇しなかったのは運が良かったのか…」
「ゴブリンだと?よく無事だったな」
男が驚いた顔をする。
「はい、幸い遭遇したのは2匹だけで何とか撃退できました。」
「2匹?ゴブリンは基本的にもっと集団で行動する。その話が本当だとすればそいつらの仲間はオーガにやられていたのかもしれないな」
おお、ほんとに運がよかったらしい。もしかしたら最初の森で死んでた可能性があったわけだ。
「それでそのゴブリンはどうしたのだ?君がここに向かって来ているのはだいぶ前から見ていたがのんびり歩いて来たようだったが。…その持っている棒で倒したのか?」
男がまた少し警戒を強めた気がした。
「ああいえ、倒しはしましたが、この棒はそのゴブリンを倒した戦利品というか、まあ護身用になるかなくらいのつもりで持って来ただけです。倒すのには魔法を使ったので」
警戒心を解こうと思い魔法が使えるということを話してしまう。だがここで嘘をついて面倒を起こすよりはいいとの判断だ。
「魔法⁉︎君は魔法が使えるのか⁉︎」
(むしろ警戒させてしまったか?)
「あ、でも使えると言っても生活魔法程度で…」
「回復魔法は⁉︎どうだ?使えるのか?」
ここまで距離をとったままだった男が近づいて来た
「い、一応使えますが」
「本当か!」
「は、はい、あのどこか怪我をされているのですか?」
俺の見る限り男は怪我を負っているようには見えないが男の剣幕に押され聞いてみる。
「いや、俺じゃない、だが俺の仲間達が怪我をしているんだ!」
「なるほど、そういうことなら俺にできる範囲で良ければ怪我の治療をさせてください」
「いいのか!、いやしかし…」
「どうしたんです?」
「お、俺の判断で君を村に入れるわけには…」
先ほどの剣幕を見るに怪我人は一刻の猶予もないのかもしれない。
「なら判断できる人を、それか怪我人を直接ここに連れて来てくれるか、なんなら片腕があれば治療はできると思うので縄か何かで拘束していただいても構いませんよ。一刻を争うのでしょう⁉︎」
「そ、そこまで…わかった!仲間を助けて欲しい!頼む!」
「俺にできる全力を尽くします!」
「ああ、ついて来てくれ!
俺は男の後をついて村に入っていった。
前回より長めです。
平均1500文字くらいが理想かな?