人命救助
野草採取&魔物討伐をした町への帰り道。
初めてのパーティでの成果、反省などを話しながら歩いているとイオルが急に立ち止まった。
「イオル? どうかしたの?」
急にイオルが歩くのをやめたためイオルと腕を組んでいたユーンさんが不思議そうに聞く。
「うん、このまま真っすぐ行くとなんか居るよ。」
イオルは歩きながらも一定間隔で超音波を使ってくれているのだがその探知に何かが引っかかったらしい。
「何かって魔物?」
「んー、ちょっと待ってねー、…オークかな? 数は1。」
オークか、ゴブリンに続いてファンタジーの定番の魔物だな。肥大した筋肉と脂肪を併せ持ったような魔物として紹介されることが多い。1匹とはいえ強敵か。
「…オークですか。ここはもうかなり町の近くなのですが珍しいですね。仕方ありません、迂回しましょう。」
ユーンさんが撤退を提案。
「1匹ならなんとかなるんじゃないの?頭か魔石を撃ち抜けばいいんでしょ?」
イオルは狙撃での討伐を提案する。
「いえ、オークはゴブリンのようにはいきません。頭骨が硬いのでボウガンでは弾かれるでしょう。魔石も筋肉と脂肪に囲まれた胴体の中なので1発で仕留めるというのは不可能と思います。」
イオルの案はユーンさんによって否定。
「そっかー、了解。」
イオルも無理に狙う必要は無いと思っていたのかすぐに引き下がった。
「それじゃあ迂回して町に帰ろー… って、なんかオークが動きを変えた見たい?」
「気づかれたか?」
「ううん、私たちのことに気づいたんじゃないっぽい。けど急に早く動き始めて…あ、他に人が歩いてる。そっちに向かってるみたい。」
「え、それ大丈夫か? その人オークに気付いてる、ってか何人いるの?」
「2人だよ、多分気付いて無い。あ、多分気付いた、でも逃げ始めたけどオークの方が早い、あれ逃げきれないよ!」
マジかよ。
「こういうのって助けに向かうべきだよな?」
「もちろんそうですが、私たちが行ったところで何とかなる相手ではないですよ⁉︎」
「でも襲われてるのが分かってるのに見捨てられないよ!」
「それはそうですが、…わかりました、助けに行きましょう。ただし逃げるのが前提です。無理に倒そうなどと考えてはいけませんよ!」
「「了解!」」
「ブモォォォ!!」
2人の人間を全身緑色の体躯をして醜悪な魔物が丸太のような腕を振り回し追いかける。
「ひやぁぁぁ!! 誰か助けてー⁉︎」
「叫んでる暇があったら走れ! 捕まったら死ぬぞ!!」
「ヤダぁ! 死にたくないー!!」
「っクッソ! 何でこんな町の近くにオークがいるんだよ!」
「お兄ちゃん、置いてかないでよー!?」
「置いてかねぇよ! こっちだ! 急げ!」
オークに追われる2人の兄妹はサルコスの町に向かって走る。のだが
「畜生!どっちが町かわかんねぇ!」
「そんな⁉︎ 嘘でしょ⁉︎」
「こんなデタラメに走らされて分かるかよ! とりあえず足動かせ! 逃げ切んのが先だ!」
「ふぇえーんっ、もうヤダァー!」
オークに見つかり必死に逃げ回っていたため、町への道が分からなくなってしまったのだ。
鈍重で走るのも遅いように思われるオークだが体が大きいから歩幅もデカイ。少しずつだが確実に2人に迫ってきている。
「はぁはぁ、頑張れアロエ!」
「はぁはぁ、がんばってるよぉ!」
「ブモオォォォ!」
その時2人の真後ろで叫び声が上がる。
「っ追いつかれ⁉︎」
「やぁぁ⁉︎しぬぅ、死んじゃうぅ⁉︎」
獲物を間合いに捉えたオークは走りながら腕を振り上げる。その時
「ブ⁉︎ モォォーン!!」
2人の頭上を何かが通り過ぎ、オークがむずがるような声をあげる。
「なんだ⁉︎」
「わかんないよぉぉー!」
「止まるな! そのまま走れ!」
真横から声が聞こえて振り向くと棒の様な武器を持った男が走って来ているのが見えた。
男はそのままの勢いでオークに突撃。振り上げた棒をオークに叩きつけ走り抜ける。
「ブゥゥ!」
だがオークには大して効いていないようだ。
振り返ったついでに見るとオークの胸には何か矢の様なものが刺さっている。
「止まるなって言っただろ! 逃げろ!」
男が兄妹に向かって叫ぶ。
「っありがとう! 助かった! アロエ、今のうちだ!」
「ひっ、も、もうむりぃ、走れないよぉ…」
「バカ! 諦めんな!」
っと怒鳴りはするが無理もない。妹のアロエはまだ小さい。ここまで必死に走り回ったのだ、一度止まってしまったら再度走り始める体力はほとんどないだろう。
「う、ううっ」
「アロエ!」
「失礼、立ち止まっている時間はありません、お二人ともこちらへ。」
横から女性の声がかけられる。見れば綺麗な女性がこちらに歩いて来ていた。
「え、アンタは?」
「話はあとです。ここから離れますよ。」
「でも妹が…」
「妹さんは私が背負います。さぁ、急いで。」
そういうと、女性はアロエの前に背を向けてしゃがみ込む。アロエは逡巡したが大人しく女性におぶさった。
「では逃げますよ、次いて来てください。」
女性はアロエを背負ったまま走り始める。
「ど、どこまで行くんだ⁉︎」
「サルコスの町への道まで戻ります。そこからなら2人で行けますね?」
「う、うん、お姉さんはどうするの…?」
「仲間を迎えに行きます。荷物も置いて来てしまいましたからね。」
「まさか戻るのか⁉︎ 危ないぞ⁉︎」
「もちろん承知の上です。ですが私でも囮くらいにはなりますからね。それに走るのは得意な方なので。持久走限定ですが。」
兄妹が何かを言おうとしたが女性は速度を上げた。兄は慌ててついていく。
「さて、ジンさんもイオルも無茶をしないといいのですが…」
「お姉さん? 何か言った?」
「いえ、何でもありませんよ。」
アロエの質問を女性、ユーンははぐらかし比較的安全な公道まで急いで向かって行った。




