戦闘後の処理
「よし、終わったな。」
最後のゴブリンを棒で打ち据えて倒しひと呼吸。
まだ魔物と戦うのは緊張するな…。
「ジンさーん、もうそっち行ってもいいー?」
呼びかけられた声に振り返ると岩陰からイオルが手を振っていた。
「うん、このゴブリンはもう大丈夫。他のやつはー」
ゴブリンは全部で4匹。
最初にボウガンで狙ったやつは頭に当たったから即死。
最後のやつは今しがた俺が倒してそこで転がってる。
こっちに向かって来てたもう1匹も喉を矢が貫通したから死んでると思う。
で、2射目の矢で胴体に矢が突き刺さったやつはたった今ユーンさんがナイフを振り下ろした。って
「ユーンさん⁉︎」
先に倒した魔物の方に目を向けた瞬間に行われたユーンさんによる動けない相手への死体蹴りを目撃して動揺を隠せない。
ユーンさんは突き立てたナイフを引き、さらに何か切るような動作をした後ゴブリンを片足で踏みつけて突き刺さった矢に手をかけ、抜く。
そして何事もなかったかのようにこちらに向かって歩いて来る。
俺もいつの間にか横に来ていたイオルもドン引きである。
そのままこちらに来るついでとばかりに喉に矢が突き刺さったゴブリンからも矢を回収。もちろん踏んづけて引き抜く。
「…ユーン?」
恐る恐るとイオルが声をかける。
「はい、なんですか? ああ、矢は私が川で洗っておきますね。戦闘はイオルとジンさんに任せてしまいましたからこれくらいの雑用は任せてください。」
よかった、応答は今までのユーンさんだ。
矢を抜き終えたユーンさんは今度はゴブリンの犬歯にナイフを当てて抜く。あ、もしかして。
「ゴブリンの討伐部位って犬歯?」
「はい、そうですよ。ゴブリンの場合は上顎の犬歯2本揃えての討伐部位となります。」
「なるほど、じゃあ俺たちに代わってボウガンの矢と討伐部位を集めて来てくれてたのか。」
「あ、ああ、そっか、そういうことね。よかったー、ユーンの知らない一面見ちゃったかと思ったよー。」
「?」
きょとんとするユーンさんを前にイオルと2人で胸を撫で下ろす。
「よくわかりませんがまあいいです。」
そういうとユーンさんはすでに犬歯を回収したゴブリンから手を離し、最後に俺が倒したゴブリンに近寄る。
「あ、そいつまだ生きてー」
「やぁ!」
俺が言いかけた言葉の途中でユーンさんは気合一閃、ゴブリンの喉にナイフを突き立てた。
「「……。」」
俺とイオルが声を失う中、ナイフを引き抜きそれを犬歯に当てて回収。こちらに帰ってくる。
「お待たせしました。討伐部位の回収完了です。あとは矢を洗ったら町に帰りましょうか。」
「あ、うん。」
ゴブリン相手に使った矢を洗う。
「でも別に血がついてるわけでもないんだから洗わないでもいいんじゃない?」
「うーん、気分の問題ですが流石にそのまま使い回すというのも嫌ではないですか?」
「んー、まあ確かにそうかも。」
この世界の魔物には血が流れていないらしい。いや、どういうことかは知らないけど頭やら喉やらを撃ち抜いた矢に一滴も血がついてないんだから認めるしかないだろう。
「…よし、これでいいでしょう。イオル、どうぞ。」
「うん、ありがと」
川で綺麗に洗い、持って来ていた布で水気を拭き取った矢をイオルに渡す。
次にゴブリンに突き刺したり犬歯を外したりするのに使ったナイフを洗い始める。
「ナイフもちゃんとしたものを用意したほうがいいですね。突き刺すだけなら問題ありませんでしたが切るのにはだいぶ力が必要でした。」
「あー、そういえば最後のゴブリンは死んでなかったからわかるんだけどもう1匹突き刺してたやついたよね? あいつも死んでなかったの? 確か胸に矢が刺さってたはずなんだけど」
人で言えば明らかに心臓を貫いていただろう箇所に矢が突き刺さっていたはずなのだが。
「はい、死んでいませんでしたよ。ゴブリンには、というか魔物には心臓がありませんからね。」
「え、心臓無いのに生きてるの⁉︎」
俺も驚いたがイオルも知らなかったようだ。
「ありませんよ。知らない人も多いそうですがそもそも心臓というのは全身に血を通わせる役目があるのだそうです。」
「ああ、それは知ってる。ってそうか、魔物は血がないんだから心臓がそもそも必要ないのか。」
「その通りです。なので魔物を即死させるのなら脳のある頭を狙うか体内の魔石を破壊するかですね。」
「魔石ねぇ、それが心臓みたいなもんなのかな。」
「そうとも言えますね。ちなみにゴブリンの魔石は喉にあります。大きさとしては1cmほどですのでイオルはよく撃ち抜いたものだと思います。」
どうやら3射目を当てたゴブリンは喉を撃ち抜かれたというより魔石を壊されたから即死していたらしい。
「あーうん、別に魔石狙ったわけじゃなかったんだけどね。でもそっか、魔物って脳と心臓と魔石の3つが弱点だと思ってたんだけど違ったんだね。」
「はい、痛みは感じるようなので無駄ではありませんが出来るだけ脳か魔石を狙うのが良いでしょう。魔物によっては脳も無いものもいるようなので一概には言えませんが。」
脳がないのって…、あーでもスライム系とかなら脳みそなさそうだな。
「お待たせしました。洗い終えましたので町へ戻りましょう。」
「うん、ゴブリンの死体って放置でいいの?」
「問題ありません。そのうち他の魔物が食べて処分しますから。」
「そっか、じゃあ帰ろう。」
それぞれ武器を持ったり、採取したユキノシタ入りの籠を背負う。
ゴブリンとはいえパーティでの初の魔物狩りを無事に終え、心地よい疲労を感じながら帰路についた。




