冒険者の食事事情
そろそろ魚が焼けたようでいい匂いが漂ってきた。
「お、もう焼けたかな。それじゃあ食べようか。」
「うん、わ〜おいしそ〜。」
「イオル、先に食べていいですよ。」
「いいの? じゃあいただきまーす」
「いただきます。」
イオルが食べるのを見て俺も魚にかぶりつく。
「んん〜、おいし〜。」
「うん、美味いな。」
いや、実のところ今日の朝もダイヤトラウトの切り身を焼いたのを食べて来たわけだし、どうだろうかとも思ったのだが美味いものは美味いのだ。
「ユーンも食べて。美味しいよ。」
「はい、では頂きます。」
イオルから渡された魚をユーンさんもパクリとひと口。
「美味しいです、ちょうどいい焼き具合ですね。」
「そうだな、ユーンさんが綺麗に捌いてくれたから内臓の臭みなんかもないし」
「配膳係とはいえ食堂でも働いていますからね。仕込みの手伝いで魚を捌くこともありますから。」
「なるほどね、手慣れてるわけだ。あ、そうだ、2人ともお米食べる?焼き魚には合うと思うよ。」
宿の女将さんが持たせてくれた握り飯を取り出して聞いてみる。
「あーちょっと欲しいけど1個は多いかなぁ。」
「私も少し食べたいのでこれも半分にしましょう。ジンさん、頂きますね。」
「どうぞー、と言っても俺が作ったわけじゃないけどね。ところでこの串ってもしかして?」
「うん、ボウガンの矢だよ。」
「やっぱりか」
いや片側が尖った鉄の棒なんてよく持ってたなと思ったんだけど、よく見たら弦を引っ掛ける窪みがあるし。
「野性味に溢れてるな。」
「こういうのもいいでしょ?」
「ああ、冒険者やってる感があっていい。」
ニヤリと笑って返す。正直めっちゃ楽しい。
「そうだ、お水はいかがですか?」
「あ、私欲しい。」
「はい、ではちょっと待ってくださいね。」
そういうとユーンさんはコップの上に手をかざして水魔法を使い始める。
「魔法で出すんだね。川から汲むんじゃダメなの?」
「生水はあまり身体に良くないので沸騰させるなり蒸留するなりしないとお腹を壊すかもしれませんからね。その点、魔法で出す水は安心なので。はい、入りましたよ。」
「ありがとー。」
「ジンさんもいかがですか?回し飲みになりますが。」
「同じコップでってこと?俺はいいけど2人は大丈夫なの?」
年頃の女の子なわけだし男と同じコップを使うのはどうなのかと思ったのだが
「うん。これも冒険者っぽくていいよね。」
「はい、冒険者はなるべく多くの採取品や魔物の素材などを持ち帰れるようにするためなるべく荷物を減らして行動するのが良いとされていますからね。形から入って見るのもいいかと思いまして。」
問題なさそう、むしろ楽しんでいるようだ。
「そっか、ならもらおうかな。」
「はい、ではお待ちくださいね。」
ユーンさんはイオルが飲み干したコップを受け取り手をかざす。
「それ100回くらい水魔法使ってるんだよね?なんか申し訳ないな。」
コップ1杯の水を出すのにそんな手間をかけさせてしまっているので悪い気がするが
「いえ、気にしないでください。むしろ嬉しいくらいなので。」
「嬉しい?」
「はい。魔法の連続使用は【低燃費】ありきなので今までイオルにしか披露できていなかったのです。なのでこうして堂々と使えると思うと気が楽でして。ではどうぞ。」
「えっと、じゃあ遠慮なく。」
ユーンさんからコップを受け取り、飲み干す。
「美味しかったよ、ありがとう。」
「ふふっ、喜んで貰えたならよかったです。」
「う、うん。」
その聞かれ方で頷くと回し飲みの方を喜んでるようにも…。ま、いいか。




