先輩と後輩
冒険者ギルドの食堂で料理長をしているマッシュさんの依頼を受けてユキノシタという野草を採りにいくことになった。
俺、イオル、ユーンさんの3人は町を出てユキノシタが群生しているという川を目指して歩いている。
「これから採りに行くユキノシタっていうのはどんな野草なんだ?」
「ユキノシタは水辺などの湿った場所の日陰などを好んで生育する植物で食用、また薬草としても知られています。初夏に花を咲かせるのですがもしかしたらもう咲いているかも知れませんね。旬はちょうど今頃で食用となる葉を採取することになります。見た目は緑色の葉ですが表面は筋に沿って白い模様があり全体に生毛のようなものがあります。裏は完全に緑色ですね。見ればすぐにわかると思いますよ。」
「ちなみに薬草としての効果は?」
「煎じて飲むと解毒や解熱に効きますね。少し揉んでから絞った汁には虫刺されなどにも効果があるそうです。」
「なるほど、ありがとう。詳しいんだね。」
採取場所へ向かって歩きながらユーンさんにユキノシタについて聞いてみたらとてもわかりやすい解説をしてくれた。
「いえ、知識だけですから。実際にユキノシタを採りに行ったことはありませんので違っていることもあるかも知れません。」
「ユーンが教えてくれたことが間違いなんてそうそうないし大丈夫だよー。」
「どちらにせよこれから冒険者をやっていく上でさらなる知識は必要ですね。役立ちそうなことは調べておくことにしましょう。」
「ギルドの仕事もあるんだし無理しすぎないでね?」
「はい、お気遣いありがとうございます。」
そんな話をしながら歩いて行くと川が見えてきた。
「見えてきましたね、町の近くとはいえここからは少し注意が必要です。川には水を飲みに魔物がいることもありますし、そもそも川に生息している魔物もいますので。」
「そうだね。でもこっちにはイオルがいるからね。」
「ふふーん、任せて!」
「…本当に大丈夫ですか?ここにくるまでにイオルの能力については聞きましたが、1つの能力で複数の効果を使うことができるだなんて正直なところ信じられないのですが…。」
ここにくるまでに俺がイオルの能力【人魚】について心当たりがあり充分な有用性があることをユーンさんに伝えた。
「大丈夫よ、私はともかくジンさんの言うことまで疑うの?」
「そう言うわけでは無いですが…。」
「それに信じられなさで言うならジンさんの能力の方が上でしょ?曜日ごとに能力が替わるってことは全部で7個あるのよ。普通、そっちの方が信じられないでしょ」
「そう言われてしまうとその通りなのですが…。わかりました、ではイオルの能力を信じますよ。」
「うん。それじゃやるね。【超音波】!」
イオルが超高音の超音波を放って前方に見える川の周辺の生物反応などを探ってくれている、筈だ。高音すぎて音は聞こえないし邪魔になるといけないから無言で待つ。
しばらくすると探知が終わったのかイオルがが俺とユーンさんの方に顔を向ける。
「終わったよー。川の近くには魔物はいないみたい。川の中も魚とかの小動物だけしかいないね。」
「お疲れさま。それじゃあしばらくは安心して採取ができそうだね。」
「…本当にできてしまったのですか?むー、イオルがそんな凄い能力を持っていたなんて…。これは負けられませんね。」
「ふっふっふ、冒険者の先輩として後輩にいいところを見せないといけないからね。」
「むっ、何が先輩ですか、たったの2週間くらいの差でしょう。それに私がギルドカードを作ったのはギルドの職員になった2年前なので冒険者登録という点においては私の方が先輩です。」
「なー⁉︎だってしょうがないじゃん、15歳で成人してすぐ冒険者になろうとしたらお父さんカンカンだったんだからー。それから2年は我慢して漁の手伝いしてたから仕方ないの!」
「それで結局許可を得ないまま冒険者になったんじゃない。まあどちらにせよ2年間冒険者さん達を相手に仕事してきた私と漁師をしてたあなたと比べると私の方が冒険者の先輩と言ってしまっても過言では無いですね。」
「何をー」
「何ですかー」
キャンキャンと騒ぐイオルとユーンさん。
「ほら先輩方、早く行かないとせっかく探知した意味が無くなっちゃいますよ。」
2人の言い争いに乗じて依頼の実行を促す。
「あ、そうね。早く採取しちゃわないと。…そっか、私達ジンさんの先輩なのね。」
「では早く向かいましょう。…ギルド職員の後輩はいますが冒険者の後輩ですか、良いですね。」
(乗ってみただけなんだけど、なんか急に上機嫌になったなぁ。まあいっか。)
上機嫌な先輩達について川に向けて歩き始めた。
書く必要ないと思いますがイオルとユーンは仲良しですよ。互いに少し負けず嫌いなだけです。




