ギルドのシフト
イオルから預かった腕輪の制約を『ユーンの能力に関係することを本人、または対になる腕輪をつけた者、またこの制約を設定した者以外に話してはならない』に変更した。
「はい、できたよ。」
「うん、ありがと。」
「正直これ渡してお礼言われるのって複雑なんだけど…」
「まあ見た目は気に入ってるからね。」
「それならいいけど。じゃあ今度こそ俺の能力の話をさせてもらうね。」
「うん。」
「はい。」
「まず最初に、俺の能力は毎日入れ替わるんだ。」
「入れ替わる、ですか?」
「うん、毎日と言っても曜日ごとに違う能力があるってことだけどね。」
「曜日ごと?」
2人とも良く分かっていないのか俺の言葉をオウム返しにしてくる。
「うん。ユーンさん、一昨日ギルドに登録した時の能力は【魔法強化】だったよね?」
俺のギルド登録を担当してくれたユーンさんに確認する。
「はい、覚えています。間違いありません。」
「それで一昨日は月曜日だったわけで月曜日の能力は【魔法強化】ってことになる。」
「なるほど。」
「魔法ランク4で能力が【魔法強化】ってすごいね!戦闘魔法レベルだよ!」
「月曜限定だけどね。それで日が変わって昨日の能力は【五感操作】だったね。」
「うん、その能力を使って盗賊を見つけてくれたんだよね。」
「昨日の夕方にギルドカードを見せて頂いた時に確認しましたが間違いなく【五感操作】と表示されていましたね。」
「うん、昨日は火曜日だったから火曜日の能力は【五感操作】と言うことだね。ここまでで質問ないかな?」
一方的に話していても良くないので確認のため聞いてみる。
「能力を自分の判断で切り替えることはできないのですか?」
「試してみたけど無理だったね。」
実は昨日、盗賊の頭たちが俺とイオルの居る方に向かって来ている時に【魔法強化】が使えないかと試しては見たのだがさっぱりできる気がしなかった。
「そうですか…。しかしそれでも毎日違う能力が使えるとなると身体への負荷などは問題ないのですか?」
そういえば身体への負荷がきついから同時に複数能力を持たせることはできないって女神様に言われて曜日替わりにしてもらったんだっけ。
「うん、問題無いよ。同時に複数の能力を持ってるわけじゃ無いから平気みたい。俺よりもユーンさんこそ大丈夫なの?」
「私ですか?全く何の問題もありませんよ。むしろ滅多なことでは疲れたりもしません。」
「そうなの?」
「はい、おそらく【低燃費】の能力のおかげなのですが昔からほとんど疲れないのです。かなりの距離を走り続けても息も乱れません。」
「子供の頃にほぼ一日中走っても余裕だったよね。次の日は筋肉痛で死んでたけど。」
「イオル、うるさいです。」
「そのせいで昔のあだ名が体力おばけ…。」
「うるさいです!」
「まあまあ、でも体を動かすのが好きならギルドの職員じゃなくても他にもあったんじゃ無い?それこそ冒険者とか」
余計なことかとは思ったがつい気になって聞いてみた。
「それも思ったのですが私のお母さんがずっとギルドで働いていて、お母さんが冒険者をしていたお父さんと出会ったのもこのギルドだったそうなので。」
「なるほどね。」
ご両親の出会いの場ならこのギルドで働くのを憧れていたのかもしれない。
「ですがイオルが昔から冒険者になると言って聞かなくて。心配だったので私も、というのも考えたのですけどね。」
結構迷っての決断だったのか。やはり余計なことを聞いてしまったかもしれないな。
「うーん、じゃあギルド職員の仕事が休みの時はユーンも一緒に冒険者やろうよー。」
俺が反省しているとイオルがぶっ込んできた。
「兼業ということですか?……ふむ、確かに出来なくはないですが。」
イオルのいきなりな提案だったが意外と乗り気みたいなユーンさん。
「ギルド職員が兼業で冒険者するのって大丈夫なの?」
「私もギルドで働いてから知ったのですが規約には無いので問題無いみたいです。。それにギルドマスターが似たようなことをやっていますからね。」
「そうなの?」
「はい、ギルマスはふらりといなくなったと思ったら私のお父さんや昔の仲間たちと冒険に行ったりしているみたいです。」
そういえばギルマスは結構自由人らしく急にいなくなることがあるとベックが言っていたな。
「そっか、前例があるなら大丈夫だね。」
「はい。ですがジンさんは私がパーティに入ることになってもいいのですか?ギルド職員としての仕事もあるので毎日は参加できませんし、能力を見て頂いてわかると思いますがあまり戦力にはならないと思いますが。」
「いいよー。急いで冒険者ランク上げる気もないし、それに人数多い方が楽しそうだ。そういえば休みの日って決まってるの?」
「はい、私は水曜日と土曜日が1日休みです。日曜日はギルドの食堂で配膳係をしていますね。」
水曜、土曜が固定で休みって珍しいな。いや、この世界だと普通なのかな?
「ああ、他の人は連休で休みの人が多いですよ。私は特に疲れないので他の人の穴を埋める形でこうなってます。ギルドと食堂の両方で働いている人も珍しいですね。」
疑問が顔に出ていたのかユーンさんが捕捉してくれた。
「じゃあ水曜と土曜は一緒に冒険出来るね!」
「ええ、正直イオルが無茶をしていないか心配していたので今回のことはいい機会だったのかもしれません。」
「だからそんな心配しなくても無茶なんてしてないって。」
(熟練冒険者以外立ち入り禁止になってるリストの森に単身で入って薬草採取は無茶だと思うけどなぁ…。)
「……まあいいでしょう。そう言った感じなのでジンさんが依頼の報告に来るなら私がギルドの受付にいる月曜、火曜、木曜、金曜のどれかがいいと思います。ギルドカードの提示が必要な時もありますので。」
「了解。じゃあユーンさん、ギルドの受付としてもパーティの仲間としてもこれからよろしくね。」
イオルとパーティ結成した時と同じように右手を差し出す。
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。」
その右手をユーンさんが掴んでくれる。
「よろしくねー。」
そして俺とユーンさんの手に被せるようにイオルが両手を乗せての3人で握手をした。
タイトルで内容がバレないようにとか考えると難しい。
あと世の中には後書きから読む人もいるらしいんですけどその人たちに関してはむしろネタバレしてもいいんだよね?
ユーンさんがパーティに加わりました!




