ペアリング
イオルとの同衾をユーンさんに疑われてギルドの個室に連れてこられたわけだが俺の能力の話をするならちょうど良かったかもしれない。
「お願いって言うのはこれから2人には俺の能力のことを話そうと思うんだけどそれを絶対誰にも話さないでいてくれることなんだ。」
「それではなんの罰にもならないのではないですか?」
「うん、だからお願いなんだよ。でもギルドの職員の人に味方がいると今後とても助かると思うんだけどどうかな?」
「うーん…。わかりました。」
ユーンさんはしばらく考え込んでいたが了承してくれた。
「ですがそれとは別に証明できる罰をいただけないでしょうか?昨日の会話は周りには聞かれていないようでしたが私が何かをしてジンさんに謝罪しているのは他の職員に見られておりまして…。今日の謝罪の結果も上司に報告しないといけなくて…。」
「あー、きちんと罰を受けたって言えることじゃないといけないのか。能力のことを誰にも話さないってお願いだと上司に説明出来ないから。」
「はい…。」
(説明できる罰って言われてもなぁ。それによく見たらユーンさんちょっと震えてるんだよなー。)
俺に謝罪した時のまま右手を左手で掴むように前で重ねて立っているが肩が震えているのがわかる。
「ちなみにこれまでの事例とかだとどうなったとか分かる?」
「ええと、ギルド職員による能力の露見での賠償では金銭による解決が一番多いそうです。」
「賠償金ってことか、でもそこまでしてもらうことじゃないしなぁ。それ以外に何かない?」
「そっ、それ以外ですか…。」
金銭で解決してしまうと今後のユーンさんとの関係に問題が出てきそうだしと別の解決案を聞いたのだが何故かユーンさんの震えが激しくなってしまった。
「それ以外ですと暴力による体罰やあとは性的な罰を求められる場合もあると…。」
「うん、無しで。」
そういうのはダメだ。
「そ、そうですか。」
そう言った提案があるのを恐れていたのだろう。ユーンさんも少し安心したようだ。
「そんなこと求めてくる人がいるの⁉︎」
「う、うん。お母さん、じゃなくて上司からそう言うことを求められることもあるから気をつけるようにって…。」
「…足元見て行くなぁ。そんな事したら町に居られないんじゃないか?」
「はい、ですが冒険者ギルドは他の町にもありますから…。」
なるほど、その町でやらかしても別の町で冒険者稼業は続けられるから問題ないと。
「そんなんだとわざと自分の能力をバラして恐喝する奴もいるんじゃないのか?」
「…たまにいるそうです。」
「ひどいわね…。」
「碌なもんじゃないな。」
素行の悪い冒険者もいると聞いていたがそこまで行くと盗賊と大差ないな。
「とりあえず金銭での解決とユーンさんを傷つけるのも無し。何か案はないかな?」
ユーンさんとイオルにも一緒に考えてもらう。
「あ、だったらユーンの能力をジンさんに教えるのはどう?」
「ああ、なるほど。それなら条件も一緒だしちょうどいいかもね。」
イオルの提案に乗ってみる。
「私の能力、ですか?でも私は冒険者ではないので能力を知られてもそこまでの影響は無いのであまり罰にはならないと思いますが…。…イオル、まさかと思いますが話しましたか?」
「あー、ユーン。その、ごめんね。実はジンさんにユーンが複数能力持ちだってバレちゃって…。」
「なっ、これだけは絶対内緒にとあれほどお願いして教えたのに!」
「ち、違うの!話しては無いの!」
「じゃあどうしてバレるんですか!」
「ユーンさん待って、落ち着いて。本当にイオルは話して無いよ。ただ昨日ギルドで複数能力の話をしてた時にイオルがユーンさんの方を見てたからもしかしてと思ってカマかけたら引っ掻かっちゃっただけで。」
「それで話したんですよね?」
「あーうん。でも能力の内容とかは全く聞いてないから。」
「…わかりました。では少しお待ちいただけますか?」
「ああ、わかった。」
「…ユーン、ごめんね?」
「フン!」
そっぽを向いて部屋を出て行ってしまった。
「出て行っちゃった…。どうしよう…。」
「待っててくれって言ってたんだから戻って来てくれるよ。」
イオルを宥めること数分。ユーンさんが腕輪のような物を2つ持って帰ってきた。
「お待たせしました。ではジンさん、こちらをどうぞ。」
そう言って俺に腕輪のような物を2つ渡してくる。
「これは?」
「これは【協約の腕輪】というもので恋人同士が互いにつけるたりするものです。」
ペアリングみたいなものか。でもなんでそれを俺に?
「まず片方だけ腕に付けてください。」
「わかった。これでいいのかな?」
右腕に腕輪を装着して指示を仰ぐ。
「はい、ではそのままで『ジン シラギの能力に関係することを本人、または対になる腕輪をつけた者以外に話してはならない』と念じてください。」
よくわからないが言われた通りやってみる。
(『ジン シラギの能力に関係することを本人、または対になる腕輪をつけた者以外に話してはならない』これでいいのかな?)
「やってみたよ。」
「では次に『ユーンの能力に関係することを本人、または対になる腕輪をつけた者以外に話してはならない』と念じてください。」
これも言われた通りにする。
「出来たけどこれでどうするの?」
「もう腕輪を外してもらって大丈夫です。外したらイオルにあげてください。」
「私?」
「じゃあ、イオル。はい。」
「う、うん。これ着けたらいいの?」
「そうです。左右どちらでもいいのでつけてください。」
言われた通りにイオルが腕輪をつけた。
「出来たよー。これ結構かっこいいね。」
ユーンさんが普通に話しかけてくれたのとかっこいい腕輪をもらったので嬉しそうだ。
「ではイオル。ジンさんに私の能力のことを話してあげてください。」
「いいけど。私が話すの?ユーンが自分で言った方が」
「いいから話してください。」
「う、うん。」
ユーンさんの圧力に負けてイオルが話し始める。
「じゃあえっとね。まず一つ目のユーンの能力は、イッタァ⁉︎」
「ちょっ⁉︎イオル、大丈夫⁉︎」
話し始めた途端に着けたばかりの腕輪をした腕を押さえて痛がるイオル。
「何今の⁉︎一瞬すっごい痛かったんだけど⁉︎」
「ふむ、一つ目ので反応しないですか。やはりそこまで性能は良くなさそうですね。」
「…ユーン、この腕輪何?」
「説明した通り、恋人同士が互いにつけるたりするものですよ。ただ魔道具になっていて取り決めた約束を破ると一瞬だけ痛みが走るそうです。」
「なんてものくれるのよ⁉︎」
「あなたはそれくらいしないとすぐに口が滑るでしょう。嫌なら気をつければ良いだけです。」
「むぅ…。」
「あの、ユーンさん。流石にこんな拷問器具みたいなのはちょっと…。」
「ああ、大丈夫ですよ。痛みは一瞬ですし後も残らないそうですし、自分で外すこともできます。それにあくまで恋人同士で使うオモチャのようなものなので。…まあこれが元で喧嘩になって破局してしまう男女が多かったらしく今では作られていないらしいのですが。」
「ええ…。」
「ではジンさん。もう一つの方もお願いします。今度は私の分ですので私の能力に関する制約は無しで大丈夫です。」
もう制約とか言っちゃってるんだよなぁ…。
呪われた装備を手に入れた。防御力は特に無いです。




