コンプレックス~アドバンテージ
イルカの生態、能力についての説明をする。
「じゃあイルカの説明をしようと思うんだけど、その前に。動物と魔物の明確な違いって何?」
これを知らないと今後困るかも知れないからどさくさ紛れに聞いておく。
「明確な違いっていうと体に魔石があるかどうかじゃない?あとは血が出ないとか。」
「血が出ない?」
「うん、魔物を斬っても血が出ないでしょ?そもそも体が岩とかでできてる魔物もいるし。」
(そういえば昨日ダイアスとベックが倒した岩ヘビも血を流してなかったような…。俺が倒したゴブリンは斬ったりしてないから分からないか。)
「なるほどね、ありがとう。じゃあ改めて説明するね。イルカっていうのは海に住んでる動物で魚とかを食べて暮らしてる。俺の地元の呼び方だからこっちでもイルカって呼ばれてるかは分からないけどね。さっきも言ったけど息が長く続くからその分長く泳いだり、潜ったり出来るんだ。ここまでで質問はない?」
「うん、大丈夫。」
謎だった自分の能力が分かるかもしれないからか真剣に聞いてくれている。
「それでエコーロケーションってのはイルカが音を使って仲間と会話したり餌である魚を獲ったりするときに使うらしい。前頭葉ってのはその音を出すための脳の一部、だったかな自分で調べたわけじゃないから自信ないけど。」
「私は会話は無理よ、自分でも理解できないもの。魚を獲るってのはどうやるのかしら?音をぶつけるの?」
「あー確か魚にぶつけると気絶させれるとか?あとその音の反射っていうか音を出してから何かに当たるまでの時間とかで周囲に何があるか分かるみたいな感じだったかな。」
「…それは出来るかも。」
「…マジ?」
「うん、私これまでも薬草採取の依頼とか受けてたんだけど今ってリストの森入れないでしょ?それで他の冒険者の人は町からだいぶ離れたところにある別の森に行ってるみたいなんだけど、遠いと1人じゃ持って帰る量にも限界があって…。それで私この音を出しながらリストの森に入ってたの。なんとなくだけど何かが近づいて来たら分かるし、動物や魔物も嫌みたいで小さいのはあんまり近づいても来なかったから。多分全力でぶつけたら小さい魚くらいなら気絶させれるかも?」
「…無茶してるなぁ。」
俺も昨日は1人でリストの森にいたがあれはスポーン地点が森だっただけだし森が危険な状態なのも知らなかった。だがイオルはそれを理解した上でしかも話ぶりからすると何度も入っているようだ。
「危険だから明日以降は別の森に行くからね?2人なら持って帰れる量も増えるだろ?」
「…口の軽い私とパーティ組んでいいの?」
「え?ああ、それはまあ今後に期待ということで。」
またイオルが落ち込む前に話を戻そう。
「それでどこまで話したっけ?イルカの説明でエコーロケーションが終わったとこか。次は片方ずつ目を瞑って眠れるってやつだね。これもイルカの能力で脳を半分ずつ眠らせることによって睡眠中に襲われてもすぐ対応できるとかだったはず。ただこの時はまっすぐ泳げずに回りながら泳ぐんだったかな。イオルがまっすぐ歩けないっていうのもこれと関係あると思う。」
一気に捲し立てるように喋る。
「なるほど。3つとも同じようなことができるなら私の能力はイルカで間違いなさそうね。」
納得できたようでよかった。ずっと謎のままだった自分の能力がわかりスッキリしたようだ。
「でも実質複数能力持ちみたいなものだけど身体は大丈夫なの?今日も疲れて眠りながら歩いていたわけだし。」
能力を複数持っている人は身体への負担が大きく下手をすると身体を壊すこともあると女神様が言っていた。
「そうね、半分だけ寝てる時間も含めると他の人よりも寝てる時間は多いかもだけどその間も動けるし会話も出来るからそんなに問題ないかな。音をいっぱい出すと眠くなっちゃうけど」
「ん?もしかして町に帰ってくる時に半分寝てたのってその音出してたから?」
「あ、うん。少しでも役に立たなきゃと思って。」
「なるほどね、それで血の匂いが充満してたのに魔物が寄って来なかったのか」
湖まで帰って来た時にダイアスと話していたんだがこれで納得した。
「でもたまたまだよ。多分オーガとかの強い魔物なら気にせず寄って来たと思うし」
そう言って謙遜する。
(うーん、1日一緒にいて元気があって素直。たまにやらかすけど感情豊かで明るい娘って感じだったけど能力関連の話になると若干卑屈になるな。多分コンプレックスになっちゃってるんだろうなー。それなら。)
「そっか、あ、ちなみにその音って超音波って言うんだよ。」
「超音波?え、なにそれカッコいい…。」
よし、琴線に触れたか。
「だろ?つまりイオルは超音波を使って敵を探知したり攻撃したりできるわけだ。敵の位置がわかれば息を潜めて待ち伏せからのボウガンで撃ち抜くなんていうこともできるんじゃないかな?」
「…できるかも。」
「あまり無理をさせるつもりは無いけど超音波の多用で疲れても半分ずつ脳を眠らせながらならかなり長い間超音波を使い続けることも」
「できそう!」
乗って来た。
「敵の正面に対峙して戦うのもかっこいいと思う。でも敵に全く気付かれないまま一撃で倒したり、仲間のピンチを影からの狙撃で救うってメッチャかっこいいと思わない?」
「良い、すっごく良い!」
「ちなみに前者を暗殺者、後者を支援者なんて言ったりする。」
「ふぁぁ、カッコいい…。」
「イオルの能力、そして武器はこの2つにとても向いてると思うんだけど…。どうかな?」
「やる!私、暗殺者と支援者になる!」
(よし、堕ちたな。)
イオルのコンプレックスになっていた能力は充分アドバンテージになり得るのだ。
コンプレックスとアドバンテージって別に対義語では無いそうです。
コンプレックスに対義語は無いんだとか。強いて言うならコレらしいです。でもなんかカッコいいから良いんだ。




