似たもの同士
「到着。ここが俺が泊まってる宿だよ。」
「ここ?看板も何も見当たらないよ?」
「まあ入って見ればわかるよ。」
そう言って扉を押し開けて中に入る。
「ただいま戻りましたー」
「はい、おかえり。大荷物だねぇ。」
中に入ると女将さんが出迎えてくれた。重たいので近くのテーブルに木箱を置かせてもらう。
「えっと、こんばんはー」
俺に続いてイオルも入ってきた。
「ん?何だいあんた、女連れかい?うちは連れ込み宿じゃないんだけどねぇ。」
「いやいや、そういうんじゃないですから。彼女も冒険者で俺とパーティを組んだんですよ。」
「そ、そうですよ!私とジンさんは仲間であってその、そういう関係ではないですから!」
部屋が薄暗くて良く見えないが少し赤くなったような顔で否定するイオル。
「そうかい?そりゃ悪かったね。」
特に悪びれる様子もなく言う女将。
「えっと、彼女もここに泊まりたいとのことなんですが部屋は空いてますか?」
「空いてるよ。あんたに貸してる部屋以外は全部開いたまんまだから好きな部屋使いな。料金は1日銀貨2枚。食事は朝晩で欲しい時は言いな。食事代はいらないよ。」
昨日俺が受けたのと同じような説明をイオルにする。
「えっ、安すぎない?それで大丈夫なんですか?」
「半分道楽でやってるようなもんだからね。だから看板も出して無いしウチに泊まった客の繋がりだけで細々とやってるんだよ。で、泊まるのかい?」
「あ、はい。えっと、ジンさんはどれくらい泊まるようにしてるの?」
「俺は後2日分先払いしてるけど延長しようかなって思ってるよ。」
「そっか、それじゃあ一週間お願い出来ますか?。」
「それなら、銀貨14枚だよ。」
「俺も5日延長していいですか?」
「はいよ、なら銀貨10枚だ。」
「じゃあこれ2人分です。」
そう言ってカウンターに大銀貨2枚を出す。
「じゃあ銀貨6枚のお釣りだよ。」
これで所持金が大銀貨3枚に銀貨9枚、大銀貨が5枚となった。
「え、ダメよ、自分の分はちゃんと払うから。」
「いや、宿代とかは必要経費だしパーティでお財布を作ろうと思うんだ。だから今日の依頼の報酬が手に入ったらそこから貰うから気にしないで。」
「ああ、そう言えばそうね。了解、じゃあ借りておくね。」
俺の提案に納得してくれたようだ。
「たしかに貰ったよ。女の子の方は名前は何だい?」
「あ、イオルです。よろしくお願いします。」
「礼儀正しくていい娘じゃないか。それで2人とも晩御飯はどうするんだい。」
「あ、実は今からダイアスたちと食事に行く予定なんです。なので今日はいりません。明日の朝はお願い出来ますか?」
「わかったよ。もう暗いから気をつけるんだよ。」
「はい、あ、それとこの魚って料理できますか?」
テーブルに置かせてもらっていた木箱の蓋を取り中を女将さんに見せる。
「これまた大きいねぇ、まさか釣ってきたのかい?」
イオルに持ってもらっている釣り道具を横目で見て聞いてくる。
「はい。料理出来そうですか?」
「明日の朝食に出してやるよ。あんたは今朝もよく食べてたからね。そのかわりあたしも少し貰うよ。」
「少しと言わず食べてください。じゃあ明日の朝食楽しみにしてますね。」
「ああ、任せな。」
「ジンさんの部屋はどこ?」
「一番奥だよ。あ、ずっと持たせてごめんね。ありがとう。」
「どういたしましてー、じゃあ私はこの部屋にするね。」
宿の2階に上がり釣り道具を置くのとイオルの部屋決めをする。イオルは俺の部屋の正面にある部屋にするようだ。
釣り道具を部屋に置き、女将さんに挨拶して宿を出る。
「あ、ギルドに行く前に私が泊まってた宿に行っていい?荷物とってこないと。」
「ああ、そうだね。じゃあ行こうか。」
先にイオルが泊まっていた宿に寄って預けていたリュックサックを貰いギルドに向かう。
昨日ギルドで借りたランプと一応武器として棒を持ってきた。イオルはボウガンを宿に置いてきたので丸腰。
何事もなく冒険者ギルドに到着。いくつか寄り道をして遅くなったけどまだダイアスたちは来ていないようだ。
「依頼達成の報告ってどうしたらいいの?」
「あ、そっかジンさん今日が初めてなんだっけ。じゃあ教えてあげるね。」
そう言って受付に行くイオルの後に続く。
「依頼の達成報告に来ましたー」
「はい、かしこまりました。あ、二人ともご無事だったんですね。」
受付カウンターにいたのはユーンさんだった。
「無事に依頼達成したよー。」
「それはよかったです。ジンさん、イオルはご迷惑をおかけしませんでしたか?」
「な、そんなことないよ!…ね?」
反論しようとした途中で俺の方を確認するように見てくる。
「はい、むしろイオルに助けられたくらいですよ。」
「そうなのですか?」
「そうよ、私も少しは活躍したんだから!」
俺の言葉を聞いて安心したのかドヤ顔を見せるイオル。
「うーん、イオルは落ち着きがないところがあるので心配なんですよね。」
「そんな事ないよ!ちゃんと冒険者やれてるし!」
冒険者とギルドの受付というより友達のような気安い受け答えをしている2人を見て聞いてみる。
「2人は仲良いの?」
「うん、ユーンとは子供の頃からよく一緒に遊んでるの」
「遊んでるというより連れ回されてるって感じでしたけどね。」
元気に言うイオルと対照的にやれやれというように答えるユーンさん。
「むー、なによー」
「はいはい。それじゃあ依頼の確認をさせてもらいますね。お二人の受けた依頼は盗賊の逃げたと思われる村へパラサの集いの皆さんを案内すること。間違いありませんか?」
「そーだよ」
「はい、そうです。」
「パラサの集いの皆さんは一緒ではないのですか?」
「帰ってくるのは一緒でしたが捉えた盗賊がいたので警備の人たちに引き渡しに行きました。しばらくしたらここにくると思います。」
「わかりました。ではパラサの集いの皆さんが帰ってき次第お二人の依頼は達成ということになります。」
「はい。」
「りょーかい」
「はぁ、ジンさんのご迷惑にならないようしっかりしてくださいね。」
「してるよーだ」
「ですがジンさんも冒険者初日から大変でしたね。初依頼は依頼者不在により無効、次はイオルとパーティを組んでの盗賊の追跡なんて。」
「まあ大変ではあったけどいい経験にはなりましたから。」
「なんかユーンとジンさんも仲良さそうなんだけどー?ジンさん昨日この街に来たとこなんだよね?」
「そうですか?まあ確かにジンさんとは昨日ギルドに登録していただいた時から何度か話す機会がありましたからそれでかもしれませんね」
「…ん?もしかしてジンさんのギルド登録したのユーン?」
「そうよ?何か気になることでもあった?」
それを聞いたイオルは少し考え込むとニヤリと笑った。
「ほーん、なるほどなるほど。」
「な、なによ?」
「ユーン、あなたジンさんにギルドカードの説明ちゃんとしなかったでしょう。そのせいでジンさんギルドカードに能力と魔法が表示されてなくて驚いてたのよ!」
「えっ!?そんなはずは」
「ふふーん、私に落ち着きがないなんて言っておいてユーンも失敗することがあるのねー」
「わ、私はちゃんと説明したはずで…、あっ!」
「あら、自分の失敗を思い出した?」
「そういえば昨日はジンさんのギルドカードの能力と魔法を見てそれで驚いてしまって…」
「あーなるほどねー確かにジンさんの能力の【五感操作】なんて聞いたことないし魔法ランク4なんてすごいわよね。」
「【五感操作】ってなに言ってるの?魔法ランクは4で合ってるけどジンさんの能力は【魔法強化】よ?それで驚いたんだから。」
「…2人とも人の能力は勝手に話しちゃダメって覚えてる?」
「「…あ。」」
固まる2人を見てどう説明したものかと頭を悩ませるのだった。
2日目にしてバレましたね。
お昼ご飯代を払っていなかったので修正。
残金ピッタリ大銀貨4枚になったとか思ってたんですけどね。




