新しい身体と月曜の能力チェック
薄い光を感じて目を開けた。
周りに木々が立ち並ぶ広場で俺は身体を起こした。
「転生、したんだよな?」
声に出してみる。なんか久しぶりに言葉を発した気がする。
「ここが女神様が言っていたリストの森ってとこか」
よし行動開始だ。
「まずは能力、の前に身体の確認かな」
女神様のことだし問題はないと思うけど一応新しい体だし少し動いてみる。
拳を握ったり開いたり、腕の曲げ伸ばしから肩を回し屈伸運動と順に確かめる。
「うん、問題ないな」
体は問題ない。じゃあ次は魔法だ。
「なんか緊張するな」
手のひらを前に突き出しイメージする。
…これ何も起きなかったら夢と現実の区別がつかなくなってるヤバいやつだよなー
「燃えろ!」
すると小さな火の玉が飛び出しすぐに消えた。
「おおー!マジで出たー!」
イメージした通りのことが起きてテンションが上がる!
「次は全力で!と、行きたいとこだけど森の中であんまりでかい火の玉出して火事にでもなったら大変だもんな」
よし、次は水のイメージでーあれ?
「水って何て言ったらいいんだろ?消化?」
余計なこと考えてイメージが弱かったのかさっきの火の玉よりもだいぶ小さい水の玉が出た。
「うーん、難しいな」
魔法は大気中にある魔素を集めて使う、だから呪文とかは必要ないし魔力切れとかも無いらしい。
ただ慣れて無いと魔素酔いになることがあるらしいし、声に出した方が使いやすいと女神様から教わった。
もう少しイメージを固めよう。そうだなー水をいっぱいに入れたバケツの水を叩きつける!
「放水!」
すると本当にバケツの水を叩きつけたような勢いで水が飛び出した!
「おーこれはなかなかの威力がありそうだ」
さてあんまりここで時間を使い過ぎるわけにはいかないから次は能力のテストだ。
「まあ能力って言ってもやること自体は変わらないんだけどな」
さっきと同じ水がいっぱいになったバケツをイメージする。そしてさらに能力を使う!
「放水!うおぉお!?」
直径1メートル近くはありそうな水の塊が飛び出し、ぶつかった木が抉れてしまった。
「あ、しまった、試し撃ちで環境破壊はダメだ」
な、治るかな?
回復のイメージってどんなだ?とりあえず元の木を思い浮かべつつ能力を発動!
「元に戻れー!」
すると少しずつ剥がれた木の皮が再生していく。そのまま5分ほどで綺麗に元通りとなった。
「ふう、良かった。しかし自分の怪我より先に木を治すことになるとは、いやまあ自業自得だけども」
【魔法強化】
これが俺の月曜日限定の能力。
本来使える魔法よりもさらに上の魔法を使えるようになるというわかりやすい能力だ。
これは女神様がぜひに入れておきなさいと言われた能力で、俺が曜日替わり能力のことを持ちかけなければこれを俺の能力として進めるつもりだったらしい。ちなみ天使様からは面白みのかけらも無いと切り捨てられ大不調だった。
単純だけど強力な能力、ただこの能力、一般的には当たり外れの大きすぎる能力として有名らしい。
この世界、殆どの人は能力を一つだけ持って生まれてくる。二個以上持つなど稀である。そしてこの世界、全ての人間が魔法を使えるわけでは無い。つまり【魔法強化】を持って生まれ、生涯一度も魔法を使えなかった人間もいるということだ。
俺は普段から生活魔法と呼ばれるレベルの魔法は使えるし、さらに月曜限定ではあるが戦闘魔法レベルになれるとのことだ。
「まあでもさっき能力無しでの魔法も女神様が言ってたコップに水を注ぐ程度よりかは上だったんじゃ無いのかな?」
まあ比較対象がいないから今はわからないか。町に行ってみてこの世界のことをもっと知る必要があるな。
とりあえず今日の予定を遂行しよう。能力テストはとりあえず充分だろう、次はサルコスの町に向かおう。
ところでー
「町ってどっちだ?」
周囲を木に囲まれ方角もわからないということに今になって気づくのであった。
冒険の始まり。
まだチュートリアルってとこかな?