クセ
少しずつ暗くなってくる中、カルノ湖まで帰ってきた。
「おー、なんとか暗くなる前に戻ってこれたな。」
「お疲れさん。少しだけ休憩にしようぜ。盗賊は俺が見とくからよ。」
「ああ、任せたベック。」
ダイアスとベックが話し合って少し休んでから町に向かうことにした。
「…何事もなく帰って来ちゃったな。」
「なんだ?何かあった方がよかったのか?」
俺の呟きにダイアスが反応する。
「いや、そうじゃないんだけど、行きも帰りも魔物に遭遇しなかったなと思って。」
「そうだな。正直帰りは鼻の良い魔物は寄ってくると思ってたんだがな。」
「…血の匂いだよな?」
「ああ、そうだ。それもあって休みなしでここまで帰って来たんだが、杞憂だったな。」
俺たちが運んで来た荷車からは大量に血の匂いがする筈だ。
帰り道では俺も【五感操作】での強化を使わずに来た。嗅覚は血の匂いで気分が悪くなる気がしたからだ。あと聴覚は荷車がガタガタとうるさくてやめた。視覚はダイアスが【望遠】使ってると思ったけど一応使って見回してはいた。味覚と触覚は…出番なかったな。
「まあ何事もなくてよかったってことにしとこう。」
「そうだな。少ししたらギルドに向かうぞ。」
「盗賊もギルドに連れてくのか?」
「いや、盗賊たちはこの湖と町の間にある警備の詰所に引き渡す。その時回収した金貨はちゃんと持ってけよ?警備だって人間なんだ。目の前に大金があったら魔がさすやつだっているかもしれんからな。」
「なるほど、わかった。イオルにも言っとくよ。」
ダイアスにそう言ってイオルの元へ行く。
イオルは荷車から離れたところで座っていた。
「イオル、少し良い?」
「うん、どうしたの?」
「ダイアスから言われたんだけど盗賊たちは警備の詰所に引き渡すからその時に金貨の入った袋を荷車から回収するのを忘れないようにだって。」
「うん、了解。あ、でもそれってホイルおじさんも一緒にってことだよね?」
「そうなるね。やっぱり心配?」
「…うん。子どもの頃からホイルおじさんには良くしてもらってたから。」
(ホイルさんのしたことは明らかに犯罪だけど盗賊に脅されていたのかもしれない。けどこの世界の司法がどう言う判断をするかは分からない。だから下手なことを言うわけにはいかないな。)
「じゃあ聞いてみないといけないね。」
「え?」
「ほら、なんでホイルさんが盗賊に協力なんてしちゃったのか。イオルや漁師のみんなは知る権利があると思うよ?」
「……うん。そうね、そうよね。私、お父さんたちと話して見る。みんなだって知りたい筈だから。」
「うん、それがいいよ。」
イオルが少し立ち直ったところでさっきは流してしまったことを聞いて見る。
「イオル、帰り道で片目を瞑って歩いてたけど大丈夫だったの?」
「あ、あれはクセというかなんというか…。」
「クセ?」
「うーん、信じてもらえるか分からないんだけど…。私、」
「おーい、そろそろ行けるかー?」
と、イオルが何か説明しようとした時、ベックに呼ばれた。
「あ、えっと」
「待たせるのも悪いし行こうか。イオルのクセはまた後でゆっくり聞かせてもらえる?」
「うん、わかった。…でも聞いても変な娘だって思わないでね?」
「思わないけどすごい気になる引きで終わらせるなぁ。」
「ふふっ、でも本当大したことじゃないから変に期待するのもなしね?」
「了解。じゃあ行こうか。」
少しだけ元気を取り戻したイオルの笑顔をみて安心した。




