イオルさんによる公開処刑
今度は俺たちの方の情報を話す。
「俺たちの方はダイアスたちが戦い始めるまで特に問題なし。それで村を観察してたら大柄な男とあと2人がこっちに走ってくるのが見えてイオルには森へ隠れてもらってもしもの時の援護をお願いしたんだ。それからー、あー。」
「ん?それからどうなったんだ?」
急に歯切れの悪くなる俺に催促するように聞いてくるダイアス。
「いや、まあ、その、な。」
「盗賊が向かって来てるからジンさんが足止めするって言ったのよね?私が隠れてしばらくすると盗賊がやって来たわ。」
俺がどうしたものかと考えているとイオルが代わりに説明を始めてしまった。
「そしてジンさんが盗賊たちに降伏勧告をしたの。きっとあれはジンさんの盗賊たちへの配慮だったのね。でも盗賊たちはそんなジンさんの言葉を切り捨てたわ。それが盗賊たちの運命が決まった瞬間だったのね。そして刃物を構えたとても強そうな盗賊達相手に一歩も引かず煽るようにこう言ったの。『盗賊の頭みたいだが仲間を置いて尻尾巻いて逃げるのか?』って」
(イオル?やめて?あれは戦闘前の興奮と恐怖が入り混じった状態でテンションがおかしくなってたんだよ?)
「そしてまず盗賊の手下がかかって来たわ。でもジンさんの魔法と杖術、そして華麗な格闘術に何もできないまま倒されてしまったの。」
(いやいや、魔法はともかく杖術って何⁉︎棒切れ思い切り振っただけだよ?あと華麗な格闘術ってあれただの金的だよ⁉︎)
「続けて向かって来たもう1人の盗賊はジンさんの魔法を警戒していたみたいだったわ。戦闘が膠着するかと思っていたらジンさんが武器を手放して先に倒れた盗賊の剣に向かって走り出したの。敵を前にして武器を手放すなんて私驚いてしまって咄嗟に援護もできなかったわ。でもあれはジンさんの作戦だったの。ジンさんが武器を手放して走り出したのを見た盗賊はジンさんに斬りかかろうとしたわ。するとジンさんはまず左手で魔法を撃った、でも魔法が来ることがわかっていた盗賊はそれを耐えてみせたの。そしてジンさんに向かってナイフを振り下ろそうとした盗賊に今度は空いた右手で至近距離から魔法を放ちさらに足元の剣を拾い上げ剣の腹で盗賊を打ち据えたわ。さらにもう一発足技を繰り出し見事に昏倒させたのよ。」
(いや、間違ってない、間違ってはいないんだけど違うんだよ。そんなかっこいい感じじゃなかったと思うよ?イオル目はいい方って言ってなかった?。なんかフィルターかかってない?)
「そして、子分2人がやられておきながらなかなか自分からかかってこない盗賊の頭にこう言ったの。『戦闘中に喋るとか三流のやる事だぞ?手下に戦わせて自分は高みの見物か?大したものだな。いいからさっさとかかって来いよ。』…はぁあ、思い出しただけでかっこいいわ。」
(やめろぉ!もう許して!テンションが、あの時のテンションはおかしかったんだぁ…。)
「そうしてやっと剣を抜いた盗賊の頭、それでもジンさんに恐れをなしたのかなかなかかかってない来なかったわね。そうしてしばらくの膠着の後痺れを切らした盗賊の頭が斬りかかって来たの。初撃でジンさんが持っていた剣を弾き飛ばし勝ち誇ったかのように斬りかかって来たところにこれまで使っていなかった火魔法、あ、手下2人を倒した時は水魔法しか使ってなかったの。で、その火魔法ときたらとても、いいえ、言い方は悪いけれど凶悪と言っても過言ではないほどのものだったわ。それをまともに受けた盗賊の頭は叫びながら地面を転げ回ったの。そうしてジンさんがもう一度だけ降伏する意思を確認したの、これが最終勧告ね。けれど盗賊の頭はそれを突っぱねてあろうことかジンさんの魔法をドープ薬で底上げしたものだと決めつけたの。…まあそれを聞いた時私ももしかしたらと思ってしまったけれど。」
ここまで俺の戦いがどんなにすごいかと言うように語っていたイオルが少し落ち込むように言う。だがすぐに気を取り直して話し始めた。
「そうして自分の優位性を勘違いした盗賊の頭は勝ち誇ったかのようにジンさんに対峙したわ。その時最初に倒した盗賊の手下が1人起き上がって来たの。盗賊の話を鵜呑みにしてジンさんがもう限界なのだと思った私はここでやっと私がなんとかしなきゃと思ったの。でも今まで人に向けて武器を振るったことなんてなかったから手が震えてなかなかボウガンに矢を乗せることができなかった。それでもやっと構えれた時には盗賊の手下がジンさんに拳を振り上げようとしているところだったの。私は迷わず心臓目掛けて撃った…、つもりだったんだけど狙いはそれて盗賊の肩に当たったわ。一撃で仕留められなかったうえにもう私がいるのもバレてしまってどうしようかと思ったのだけど私が手を出したのを援護と判断してくれて見事盗賊の手下を一撃で沈めてから流れるような連撃で盗賊の頭を倒してしまったの。正直、今でも私の援護なんて必要なかったと思うわ。戦闘を終わらせたジンさんには明らかに余裕があったもの。」
ここまで一気に話し終えたイオル。
「それからジンさんの指示の下盗賊たちを拘束して荷車に乗せたの。そしてジンさんがドープ薬を服用したと思っていた私はジンさんの体調を心配したりしたんだけどほんとに余計なお世話だったわ。ジンさんの魔法を薬によるものだと疑ったりして恥ずかしい限りよ。」
イオルは顔を赤らめ本当に後悔し恥ずかしがるようにいうがこっちとしてはそれどころじゃないくらい恥ずかしい。
(イオルの中で俺の戦闘がすごい美化されたものになってる…。俺の厨二っぽい発言がイオルの琴線に触れたっぽいな。いや正直自分で言う分には恥ずかしくもなんともないんだけどセリフ復唱するのはやめてほしい…。)
この説明を受けたダイアスたちはどう思っただろうか?イオルの説明中一言も発しなかったのが怖い。
恐る恐るダイアスたちを見てみるとタイルとロンは興奮したように、そしてダイアス、ベックは苦笑いしながら俺を見ていた。
「ジン、すげえな!」
「ああ、すげぇカッケェ!」
タイルとロンの語彙力が無くなっている!。
「あー、うん。すごいな。」
「ああ、すごい、ヤバいな。」
ダイアスとベックも語彙力が!いや、ダイアス棒読みだしベックはガチトーンでヤバいとか言わないでくれないだろうか?
(おかしい、俺、今日結構頑張ったはずなのに何故こんな仕打ちなのだ…。いや自業自得だが。)
イオル、タイル、ロンの好奇な視線とダイアス、ベックの奇異なものを見るような視線を受け、今後の戦闘は少し抑えてやろうと決意した。
イオル暴走。
イオルはこれまで2人きりでない時は男性陣の会話には極力入らずに相槌や気になった時だけ発言というスタンスでしたが今回めっちゃ喋りました。




