クリティカルヒット
盗賊の頭らしき男が手下2人を連れてこっちに走ってくる。
「ジンさん、足止めって戦うってこと?。大丈夫なの?」
「うん、イオルは出て来ちゃダメだよ。」
「嫌よ、わたしも戦う!」
盗賊との距離はだいぶ離れているし能力無しの肉眼だとまだ見えない。とはいえそんなに時間もない。
「わかった、じゃあイオルはもしもの時に備えてボウガンで狙ってて。仕掛けるのは俺が合図するかイオルが敵に見つかった時にね。いい?」
「…わかった。でももう一個追加。ジンさんが危ないと思ったら撃つよ。だから気をつけてね。」
「了解。」
そう言って拳を握って見せた。
カルノ湖へとつながる道の前で盗賊が来るのを待つ。
(さて、カッコつけた以上頑張らないとな。)
今俺が戦闘に使えるものは攻撃魔法とずっと持ってる拾った棒だ。
(片手に棒を持って。空いた手で魔法を、いや両手で魔法の方がいいか?。現状使ってみた魔法は火と水、それと回復魔法だ。あと風も使えるはず。土、雷、氷、光、闇と思いつくのはあるけどこの世界の魔法で使えるのか分からんから実践ではやめとこ。せっかくの異世界で魔法使えるようになったのに何で試してないんだろうね?アホかな?)
昨日から色々あったから攻撃魔法はリストの森の中でちょっと試しただけ。しかも曜日が変わって【魔法強化】は使えない。
(今更反省してもしょうがない。とりあえずやって見よう。魔法はイメージが必要だからちょっとだけ溜めがいるんだよね。軽くイメージしといて…あ、向こうも俺に気づいたな。最初は対話できそうならして見るか。)
だいぶ近づいてきたと男たちが俺を見つけ何か話している。せっかくだし聞いて見るか。
(聴覚強化っと。えーと何々?)
「何だあいつは?喧嘩売って来た奴の仲間か⁉︎」
「お頭、ど、どうします?」
「クソっ!やっぱりホイルの野郎が裏切ったんじゃねえか?じゃなきゃこんなに早く見つかるはずがねぇ!」
「ホイルが裏切ったなら森の道もバレてますよ。あいつも森の道の前にいやがるし!」
「見える限りじゃあいつ1人だ。俺たちに喧嘩売ったことを後悔させてやる。」
「そうっすね、やっちまいましょう。」
(ふむふむ、やっぱりあのでかいのが頭なんだな。あ、持ってた荷物下ろした。で、剣を抜くと。うん、対話は無理かな。一応やって見るけど。)
武器を構えた盗賊がこっちに近寄ってくる。
(うっわ、刃物持ったやつが敵意剥き出しで向かってくるの怖。えー、まじかーこれやれるかー?)
心臓が早鐘を打つ。ひとつ思ったことは接近戦はしない、したくない。
声の届く範囲まで盗賊が来たので声をかける。
「盗賊だな?観念して捕まる気はないか?」
「ああ?、あるわけねえだろうが。」
(そりゃそうだよ。何聞いてんだ俺。いやよく声が裏返らなかったと自分を褒めるべきか?)
「だろうな。見たところ盗賊の頭みたいだが仲間を置いて尻尾巻いて逃げるのか?」
「…何だと?」
(武器持って凄むなよ、怖いだろ。)
「何だ?違うのか?俺の目にはそうとしか見えんが?」
「てめえ!頭が逃げるわけねえだろうが!」
手下Aが声を荒げる。
「そうだ!頭は迅速な対応で襲って来た奴らから金を守るために脱出したんだぞ!」
手下Bが頭の対応を称賛するように言う。
「その通りだ。俺の迅速な対応により奪った金を持ち出せたんだ。他の連中もそれを理解して戦ってる。」
(…迅速な対応言いたいだけでは?頭による洗脳、みたいな感じになってるのか?)
「理解ねぇ。じゃあことが終わった後の集合場所も決めてるんだよな?自分たちだけ逃げるんじゃないもんな?」
「たりめぇだ、あの村のほかに俺たちの仲間がいる村があるんだよ。お前の後ろの道を通ってサルコスの街を抜けたらその村で合流するんだ。」
(あ、手下B、言っちゃうんだ。てかその村って昨日ダイアスたちと会った村じゃないのか?)
「馬鹿野郎!何敵に集合場所を漏らしてんだ!」
「あ、す、すいやせん!」
「ッチ、まあいい。どうせここで殺すんだ。」
(ここまでか、対して時間稼ぎにもならなかったな。ダイアスたちが来る気配もなし。やるしかないな。)
右手に持った棒を形だけ構えて見せる。
「何だがそりゃ?木の棒?舐めてんのかてめえ!」
(あ、やっぱりそう見える?まあ剣とかナイフ持ってるやつに木の棒見せたらそうなるか。)
「ごちゃごちゃうるさいな。いいからかかってこいよ。」
(何で俺は煽っているのかな?いやでもこんなセリフ言う機会になったら言うよね。)
「テメエら!やっちまえ!」
手下Aが剣を掲げて向かって来た。
「おらぁ!」
すかさず昨日唯一戦闘で使った水魔法を出す。
(くらえ、必殺水バケツ!)
左手にイメージしておいた魔法を走って来た盗賊の顔を目掛けて叩きつける。
「ゴポェ!」
【魔法強化】無しでもなかなかの威力が出たようだ。走って来ていた勢いも乗って頭がのけぞる手下A。
「せりゃぁ!」
体の伸び切った手下Aの脇腹に棒を両手でフルスイング!
「ごぉ!?」
からの前蹴り!
「はうぅ!」
見事、男の急所に入った。
手下Aは倒れてピクピクしている。
「って、てめえ!」
すかさず向かってくる手下B。
だが魔法を警戒しているようで手下Aのように突っ込んでくるような事はしない。
俺は持っていた棒を地面に突き刺す。手下Bは警戒するが何も起きない。
そのまま手を離し手下Aが取り落とした剣に向かって走り始める。
「あ、させるか!」
すぐさま手下Bも向かってくる。
ちなみに手下Bの武器はナイフでこちらが剣を拾ったら不利だと思ったようだ。
だが別に剣を拾う気など無い。(使いこなす自信がないし)
狙いは手下Bが近づいてくる事だ。
魔法をイメージして撃つ!
(水バケツ!)
左手から放たれた魔法は手下Bが両腕をクロスして受け止めた!
「はっ!くるのがわかってんなら耐えれんだよ!」
そう叫びながらナイフを振り上げー
「へぶっ⁉︎」
右手にこめておいた水魔法を無防備になった顔面に至近距離で叩きつけた。
そしてすかさず剣を拾い、タイルがやって見せたように剣の腹を叩きつける。
からの前蹴りである。
手下Bは手下Aと同じ末路を辿った。




