轍鮒の急
盗賊のいる村へとダイアスたちを見送り、俺とイオルはここまで通って来た森の中から村を見る。
「さて、じゃあこのまま待ってようか。」
「えっと、私たちに何かできることはないんだよね?」
「そうだね。イオルはそのボウガンで人を撃ったことある?」
「えっ、な、ないわ。漁や狩りで魚や鹿を撃ったことはあるけど人を狙ったことなんて…。」
「まあ、だよね。それじゃあやっぱり俺たちが行っても足手まといだよ。」
「そうよね…。」
見てわかるほどに落ち込んだイオルだが実際俺たちができることは無いと思う。
「しょうがないよ、ダイアスたちとは冒険者としての年期も違うし、俺たちはこれから頑張っていこう?。まあ別に対人専門になろうってわけじゃ無いけどね。」
「うん、そうね。これがパーティでの初依頼だもんね。これからだよね!」
「そうだね。じゃあ盗賊の動きに注意して待機だ。ダイアスが言ってた通り、盗賊がこっちに逃げてくる可能性だってあるからね。」
村の裏側から仕掛けると言って回り込んでいたダイアスたちが見えなくなってからしばらく経つがまだ動きはない。
「ジンさん、どう?もう討伐始まってる?」
「うーん、まだだと思う。俺もそこまで見えてるわけじゃないから自信ないけど。」
「そっか。何かあったら教えてね?」
「了解。」
イオルはボウガンに矢を番えて真剣な表情で村の方を見ている。
俺はというと【五感操作】で視覚のみ強化して村を確認しているがまだ何ともないようだ。
(門番は動いてないしダイアスが見つけたでかい家の前の2人も動きは無し。あと3人いるって言ってたけどそれは見つけれてない。ただこれだけ離れているから村の方からこっちに誰かが向かって来たりすればわかるはず。)
「あっ」
「え、なに?、どうしたの?」
「大きい家の前にいた2人が村の奥に走って行ったっぽい」
「それじゃあ…。」
「多分始まったんだ。」
「…ダイアスさんたち、大丈夫かな?」
「信じて待つしかないよ。」
「うん…。」
しばらくすると門番の2人も気づいたようで村の中に入って行く。
そのうち1人は大きい家の中に入って行った。
しばらくすると数名の人間が出てくる。
その中に一際大柄な男がいた。
(あれが頭かな?盗賊なんかだと体の大きい力の強いやつが偉そうだし。)
「ってあれ?あいつこっちに向かって来てないか?」
「え?どうしたの?」
見れば大柄な男とあと2人、合計3人の男が門から出てこっちの方へと向かっているようだ。
2人の男は何か袋もようなものを担いで走ってくる。
「ねえ!ジンさん!どうしたの!?」
「ああ、ごめん。ええと、こっちに向かって走ってくる人間がいるんだ。数は3人、1人は大柄で強そう。多分ボス。あと2人は何か袋を抱えてる。多分だけど盗んだお金だと思う。」
俺は見たものを思いつくままイオルに伝えた。
「え?え?ど、どうしたらいいの?」
イオルはテンパっている!
「落ち着いて。イオルは森に隠れて。」
「わ、わかった。ジンさんはどうするの⁉︎」
そう言われてしばらく考え、答える。
「…足止めかな。」
もうちょっとかっこいい言い方がなかったものだろうかと思いながら走ってくる盗賊を見据えた。
次回、対人戦。




