道案内と不意打ち
盗賊たちがいるであろう村に向かって森の中を歩いていく。
しばらく歩くと一度来たときに数枚の金貨を拾った場所に出たので一旦停止する。
「前回はここで引き返したんだ。」
「ここだっけ?よく覚えてるね。」
「盗賊が転んだらしい跡があるからね。」
そう言って地面を指さす。
「言われてみれば少し草がしゃげてるな。」
「ダイアスは分かるのか。俺はサッパリ分からんぞ。」
ダイアスとベックのやりとりを聞きながら痕跡を探す。
「ここで転んで金貨をばら撒いたあと、ある程度回収してから道なりにまっすぐ進んだみたいだな。」
「じゃあこのままいけばいいんだな?」
「ああ、ここからは少しゆっくり行こう。」
「おう、わかった。」
そうしてまた歩き出す。
(よし、じゃあ視覚と嗅覚、今度は聴覚もだな。感覚を上げる。うわ⁉︎歩く音うるさっ!上げすぎた、少し聴覚下げて嗅覚はー、だいぶ薄くなってるけど油の臭いはたどれるな。よし、集中、集中!)
「ジン?このまままっすぐで大丈夫なんだよな?」
「ああ、まだ追えてる。このままで大丈夫だ。」
途中何度かこう言ったやりとりをしただけで何事もなく進んだ。
「…歩き始めて1時間くらい経ったよね?もうそろそろ森抜けるの?」
イオルが不安そうに聞いてきた。
「どうだろう?ゲンさんたちは1時間と少し歩いたら抜けるって言ってたけど実際に通ったことはないらしいし。それに少しゆっくり歩いているからもう少しかかるかもしれないよ。疲れてきたなら休もうか?」
「う、ううん。大丈夫よ、ごめんなさい。」
イオルはそう言ってボウガンを抱きしめてた。
(疲れたって言うわけじゃないみたいだな。…ああ、そうか。俺も含めて今日会ったばかりの5人の男に囲まれて1時間近く森の中歩いてたら不安にもなるよな。)
みんなほとんど黙って歩いているのだ。不安になっても仕方がないと思う。
それからまた少し歩く。
周りが少し明るくなってきた気がする。
今は日没に向かっているはずだ。これは森を抜けようとしているのではないだろうか。
「お、森を抜けるな。」
ダイアスも気がついたようだ。
「ホント⁉︎よかったー。」
イオルが安堵の声を上げる。
「おいおい、これから盗賊退治が残ってるんだぜ。」
「あ、ごめんなさい。気を抜いてたわ…。」
ベックに嗜められてイオルが反省する。
「まあしょうがな、みんな止まって。」
俺が急に制止する様に言うと皆が止まる。
「…どうした?」
「…ちょっと待って。」
耳に意識を向けて強化する。俺たちは止まっているのに何かの足音が聞こえる!
「何かが正面から歩いてくる。多分人間だ。」
「正面だな。……いるな。3人か。まだこちらには気づいていないようだ。」
ダイアスが【望遠】を使ったのだろう。正確な人数まで伝えてくれた。
「多分盗賊の仲間だろうが、何で今更戻ってきてるんだ?流石に1日も経てば金庫が壊されてるのもバレてると気づくだろ?」
「あの、さっきお金拾ったところに行こうとしてるんじゃないかな?」
「ああ、なるほど」
「じゃあどうする?ここで待ち受けるか?」
「いや、せっかく見つかってねえんだから隠れて不意を突こう。」
ということで道から外れ、森の中に身を隠す。
しばらく待つと男が3人歩いてきた。
「チッ、面倒臭え。何で俺がいかなきゃ何ねんだよ。このノロマ1人行かしゃあいいじゃねえか。」
「しょうがねえだろ、どうせ見張りが必要なんだ。それにどんだけばら撒いたのかわかんねえんだ。何枚かくすねちまおうぜ。」
「お、お前頭いいな」
「そ、そんなことしたら後でお頭に何をされるか…」
「うるせぇよバカ!」
「お前が金ぶち撒いたせいで俺たちまで拾いに行かされてんだろうが。黙って案内しろや。」
そう言ってオドオドしている男が蹴飛ばされる。
「うあ⁉︎」
「チッ、なにやってんださっさと立てよノロマ。」
「酷いな」
森に隠れて盗賊たちのやりとりを見ていたがボソリとつぶやいてしまう。
「あれがホイルのおじさんだよ…。」
イオルが教えてくれた。
「じゃああいつが漁師を裏切って盗賊に手を貸したのか。…だが、見る限りじゃ嫌々従わされてるみたいだな。」
「そうだな、とりあえずあいつは無視して残りの2人を倒そう。」
「じゃあ行ってくる。ジンたちはここにいろ。」
「わかった。」
ダイアスたちは盗賊の後ろに回りこんだ。
盗賊たちはまだホイルさんを蹴り付けている。
「オラ、さっさと立てよ。」
「ひぃ」
「おい、あんまりやり過ぎんなよ。まだ使い道があるって頭が言ってたろ?」
「あーそうだな。そろそろいくか。日も暮れるしなぁ。オラ、さっさと立って案内、ぐぁ⁉︎」
「どうした?っなんだお前!ブッ⁉︎」
ホイルさんを蹴り付けていた盗賊の後ろからベックが斬りつける。
切りつけられた盗賊の声に気を取られたもう1人はダイアスに槍の柄を顔面に叩きつけられ吹っ飛んだ
「イデェ⁉︎クソ!舐めやがって!」
吹っ飛ばされた男は起き上がるとナイフのようなものを取り出し威嚇する。
「おい、こっちも見ろよ」
「何っ⁉︎ゴホッ!?」
真横から飛び出したタイルが振り抜いた大剣の腹を盗賊に叩きつけまた盗賊は吹き飛んだ。
(うわぁ、あれは痛いな。)
吹き飛ばされた盗賊はもう起き上がれないようだ。
見れば最初に斬りつけた盗賊はベックが取り押さえ、逃げようとしていたホイルさんはロンに剣を向けられて座り込んでいた。
「チクショウ!何だお前らは⁉︎」
「お前らを捕らえにきた冒険者だが?」
「冒険者だと⁉︎何でバレた⁉︎ホイル!テメェ、まさか裏切ったのか!」
「ち、違う!お、おれは何も知らねえ!」
「知らねえわけがねえだろうが!テメェ俺たちを裏切ってタダで済むと思うなよ!ぶっ殺してやる!」
「ごちゃごちゃうるさい。」
「ぐぁぁぁ!?」
騒いでいた盗賊の背をベックが踏みつける。斬られた背を踏まれた盗賊は叫び声を上げた。
「ジン!もう出てきても大丈夫だ。こいつら乗せるから荷車持ってきてくれ。」
ベックに呼ばれたので荷車を引いてベックたちに近づく。
「ホイルおじさん…。」
「ひぃ、えっ。じょ、嬢ちゃん?」
イオルを見たホイルさんが大人しくなり。イオルはとても悲しそうな顔をしていた。
タイルとホイルって似てるけどたまたまなので関係性とかないです。
風呂場のタイル見て思いついたのと信号待ちで車のホイール見て思いついただけです。




