器用貧乏な火曜日の能力
捜査開始!
というわけで能力を使って見る。
まずは扉の断面をよく見る。
(さっきは刃物で斬られたなんて思ったがそれにしては切り口が鮮やかすぎる。機械で切断したって言われても信じるほどだ。これを剣か何かでできる?いや無理だろう。)
それにこんなに綺麗に斬れるのなら扉を斬ることも出来たのではないか?なぜ蝶番や鍵なんて狙ったのか?
(方法はわからないが剣で斬ったのではないのだろう。部分的な切断、それも蝶番や鍵程度の10センチにも満たないほどのものを斬る能力なのではないだろうか)
次に金庫の中を見る。
中身は空だ。
金貨以上は賊が持ち出し、それ以下のものは漁師さん達が別の場所に移したのだろう。
(…指紋はあるけど漁師さん達のもあるだろうし仕方ないか。匂いでいけるか?)
嗅覚に意識を持っていく。
(うーん、めっちゃ色んな匂いが…。うわぁ汗の匂いとかキツイ、これも無理かー?)
汗の匂い、硬貨の匂い、魚の匂いに油の匂い…。
(ん?油?)
違う、油だけどこれはー
(あれだ、これ灯油とかの匂いだ!)
賊は船に火を放った。その時にこの灯油らしき匂いの油を使ったのだろう。
(この匂いなら追えるかも知れない。)
「ジンさーん?まーだー?」
「あ、はい、お待たせしました。」
呼ばれたので金庫の建物から出る。
「なんかわかったかい?」
「うーん、まあ少し?」
「ホント!?」
なんと答えていいのか微妙なのでごまかす。
「えーっと多分ですけどこっちです。」
そう言って匂いを追って歩き始める。
「お、おいまじか?本当にわかったのか?」
「何かあったの?」
「とりあえず追える範囲で追って見るのでついてきてください。」
そうしてしばらく歩く。やはり町の外の方に向かっているようだ。
湖から外れ、木々が生い茂る獣道のようなところを進む。
匂いを辿りながら地面の足跡を確認する。この道を進む真新しい足跡が3人分ある。
(金庫の建物にいたのは3人か?。1人が火を付け付けた隙にもう1人が金庫を破壊。あとの1人は見張り役のホイルさんかな。2人では金貨を運び出せないから火付け役も金庫にきたってところか?)
あの金庫にどれくらいの金貨が入っていたかはわからないが大銀貨以下を諦めるほどの量だったのだ。その証拠に3人の足跡がふらついているようだ。
(台車だと車輪の跡が残るから袋に小分けして運んだのかな?あ、ここで転けたな?)
地面に何か重いものを落としたような凹みがある。周りを見回して見る。
(…あった!)
「おい、どこまでいくんだよ?」
「ちょっとー?ジンさん?おにいさーん?聞こえてるー?」
イオルが目の前に現れて手を振ってくる。
おっと、追跡に夢中になってた。視覚と嗅覚両方に集中するために聴覚を下げていたのだった。
「あ、ごめん、集中してて。でもこっちで間違いなさそうだよ。」
「間違いないって賊がこの方角に逃げたってのか?」
「はい、それでここで転んだみたいです。そこの草むら見てください。」
「草むら?」
そう言ってカイさんが確認すると
「これは、金貨!?大金貨もあるじゃねえか!」
そこには数枚の金貨と大金貨が落ちていた。
「そこの地面に凹みがあるでしょう?多分それ重い金貨を入れた袋を落としたんですよ。多分転んだんでしょうね。その時袋から金貨が溢れて回収できなかったんじゃないかと」
俺も視覚を強化してやっと見つけたのだ、逃走中で慌てているであろう賊は全てを拾うことができなかったのだろう。
「すごい、なんでわかったの?こんな草木が生い茂る中で追跡?も出来てるみたいだし」
うーん、どうしようかな?昨日能力については安易に人に教えるものじゃないって教わったばかりだし。
「まあ俺の能力に関係することなんだよ。」
このくらいならいいかな?
「あ、そうか、もしかして【望遠】とか?」
イオルが聞いてくるが
「おっと嬢ちゃん、人の能力を詮索するのはタブーだぜ。特に冒険者なんてやってるんなら飯のタネでもあるんだからな。」
カイさんが止めに入ってくれた。
「あ、そうね、そうよね。ごめんなさい!」
イオルがまた謝ってくる。
「大丈夫。気にしてないよ」
そう言って笑いかけた。
「じゃあやっぱり町の外に出たってことで間違いなさそうか。」
「そうですね。このままこの道をいくとどこに出るんですか?」
「…いや、わかんねえ、俺もこっちには来たことがなかった。こんなとこに道があるのも初めて知ったよ」
「そうなの?」
「ああ、親父達なら何か知ってるかも知れねえ。一度湖に戻って確認して見るか」
「そうですね、っとその前に金貨は拾っていきましょう。」
「っとそれもそうだな大金貨まであるのに放っていくわけにもいかねえ。」
「私も手伝うわ。でも薄暗くて見にくいね」
「俺は見えるので任せてください。」
【五感操作】
これが俺の火曜日の能力。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を操作する能力だ。
純粋な強化ではなく操作なので弱体化も可能。あえて見えにくくしたり、聞こえにくくしたりもできる。
これは俺の案で女神様に言って見たらできると言うのでお願いした。
まあ触覚の強化とかは使わないんじゃないかとは思うけど。強化したら敏感肌とかになるのかな?
天使様はそんな器用貧乏な能力に枠使うんなら鑑定とか付けましょうよーとか言ってた。
うん、鑑定あったら便利だとは思うけどなんか面倒ごとに巻き込まれる気がしたんだよね。
実際ダイアスに聞いたら【鑑定】は伝説級の能力と言っていたので間違いなかった。
本来なら今日はギルドで依頼を受けるなりして森の探索なりいている予定だったので探索や感知に向いているであろうこの能力を異世界2日目の火曜日に設定してたんだけどまさか賊の捜査に金貨探しに使うとは思っても見なかった。
「うん、見える範囲にはもう無いみたいですね」
「大金貨1枚に金貨が13枚。これだけのお金を諦めていくなんてよっぽど慌ててたのね。」
「そうだな、真っ昼間から酒盛りしてなきゃもっと早くに事が発覚してただろうし、嬢ちゃんの親父さんがホイルに話しかけてたもんだから余計に慌ててたんだろう。」
「それじゃあ一度湖に戻りましょうか?」
「そうね、お父さん達にこの道のこと聞いて見ましょう。」
「ああ、そういえばギルドにやった使いも戻ってきてるかも知れんしな。」
そうして俺たちは一度湖に戻ることにした。
やっと出せた火曜日の能力です。使い勝手はそんなに良くないものになると思います。




