自己紹介
漁師さん達の話を少し離れて聞いている。
「それで進展はあったの?」
「いや、全くだ。もちろん捜索は続けてるが見つからねぇ。匿ってるやつが居るんだろう。」
「少なくとも船に火をつけたやつと金庫をぶっ壊したやつが居るはずだしな。」
「どっちかはホイルおじさんじゃないの?」
「いや、俺があいつと別れてすぐに煙に気付いたから火をつける余裕なんか無かったはずだし金庫は明らかに斬られたような壊され方をしてた。ホイルにそんな真似ができるとは思えねぇ。…多分だが賊の手引きと見張りを担当したんだろう。賊の数は多くても3、4人だと思うがな、あんまり多くても目立つだけだ。」
「そう言うことね。それにしても金庫を斬るなんて…。」
「ああ、それなりに腕の立つのがいるんだろう。」
「自警団には?」
「朝一で連絡した。だが今は魔物の対処で出払っているらしくてな。こっちにまで兵を割く余裕はないらしい。待ってる間に逃げられちまう。」
「じゃあ冒険者ギルドに依頼を」
「…ダメだ、強い冒険者に依頼を出すとなると相当な金がかかる。その金を奪われちまったからどうしようも無い。」
「犯人を見つけてくれれば払えるが見つからなくても依頼料は払わないといかんだろう。そうなると船を売るなり借金をするなりしなきゃいけなくなる。」
「そんな…。」
みんな黙り込んでしまった。
(なるほどなー、そう言う感じなのか。)
賊は複数で手練れのものもいるようだ。町には自警団があるらしいが魔物、おそらくリストの森のオーガだろう、の対処に追われていて余裕がない。冒険者を雇おうにも肝心のお金が無いわけだ。やはり高ランクの冒険者は高いらしい。
(ワンチャン依頼出してみて犯人捕まえれたら良いがダメだった場合船を売るなりしないといけなくなる。漁師が船を売ったら仕事にならんわな。)
盗まれたのは金貨と大金貨だけと言っていたから大銀貨以下はあるのだろうがそれだけではどうにもならないのだろう。燃やされた船の修理、買い替えも必要なのかもしれない。
(うーん、厳しいな、…今日は火曜日か。)
「黙り込んでてもしょうがねえ。捜索を再開しよう。」
「そうだな。」
「私も手伝うわ。」
「いや危ねえからな、嬢ちゃんはそのにいちゃんの見張りを」
「あー、ちょっと良いですか?」
そう言って俺に注目が集まる。
「あん?何だ」
店主さんが睨みつける。さっきは謝ってくれたのに…
「えーっと、人手足りないんですよね?よければお手伝いさせてください。」
「手伝いだぁ?逃げようってのかよ。」
「お父さん!」
「…人手が足りないのは確かだが、それであんたが手伝うメリットがねえだろ。」
「まあ、ないですね。ただこのままここで待っててもいつ帰れるかわかりませんし、それに俺の監視に人を割くのも勿体無いでしょう?だったら俺も一緒に捜索に参加すれば効率的じゃないですか?」
「…そうだな」
「ゲン!そんな提案受けようってのか⁉︎捜索の邪魔されるに決まってる。そうじゃなくても足手まといだ!」
完全に善意なんだけどなー。まあ信じれないか。
「ダメならそれでも構いませんよ。犯人が逃げようが捕まろうが俺にとってはあまり変わりませんし。このままここで釣りでもしながら待ってます。」
実際俺からすればどっちでも良いのだ。
…なんか昨日も似たようなこと考えた気がする。
「わかった、…ジンだったな、あんたも来てくれ。」
「おい、ゲン!!」
「この時間が無駄だ、今はさっさと捜索に戻った方がいい。」
「チッ、わかった。勝手にしろ!」
そう言って釣具屋の店主は行ってしまった。
「もう、お父さん…。本当にごめんね。お兄さんは手伝ってくれるって言ってくれてるのに…。」
さっきから謝られてばっかりだな。ダイヤトラウトの取り込みを手伝ってくれた時の元気な感じの方がいいのに。
「気にしてないから大丈夫だよ。」
「それじゃあ賊の捜索に戻ろう。ジンは俺と来てくれ。親父いいな?」
「ああ、お前に任せるのが一番だろう。」
俺はカイさんと一緒に捜索に加わるようだ。
「待って、私も行くわ」
「いや、危ねえから嬢ちゃんはここで」
「いやよ、さっきはお兄さんの監視をするように言ってたじゃない。だからお兄さんが行くなら私も行くわ。」
「はぁー、…まあ置いてっても嬢ちゃんは勝手についてくるだろうし見えるとこいてくれる方がマシか。わかった、ただしなんかあったら逃げるんだぞ、いいな?」
「むー、私も冒険者になったんだから子供扱いしないでよー。」
「わかった、わかった。じゃあ行くぞ。」
嬢ちゃんとカイさんが話している間に俺は手早く竿を片付けて包丁を貸してくれた漁師さんに預かってもらった。
「すみません、お願いします。」
「おう、組合の建物の中に置いとくから後で取りにくるといい。荷物置いたら俺も捜索に行くからよ」
「はい、ありがとうございます。」
俺たちは3人で賊の捜索をすることになった。
「探す目星はついてるんですか?」
「いや、全然だ。」
「町の外は探してるんですか?」
「一応な、だが今はリストの森にはオーガがいて近づくとは思えねぇしそのオーガのせいで他の町へ行く道にも魔物が多くいるらしい。大量の金貨抱えて移動するなら馬車か荷車でも引いてるだろうしそう遠くに入ってないと思う。」
「近くに村はないんですか?」
「村?それならあるが今は村人もオーガがいるからこの町に避難してきてる。3人かそこらで村に逃げ込んでも魔物に襲われたらどうしようもねえぞ。」
なるほどな、そう言うことか。
「信じてもらえるかは分からないんですけど昨日町から離れた村で盗賊に襲われた人たちがいるんです。どうも村人がいないのをいいことに村に勝手に住んでいたみたいで。もしかしたらそう言う村が他にもあるかもしれません」
俺は昨日ダイアス達が村で襲われたことを話した。
「それは本当か?だったら賊は盗賊の一味で近くの村で合流して他の町に逃げる気かも知れないってことか?」
「その可能性もあると思います。」
「うーん、しかしなぁ。」
「信じられないのもわかりますから大丈夫ですよ。そうですね、もし気になるなら冒険者ギルドで聞いてみてください。」
昨日のことはダイアス達がギルドに報告しているはずだ。
「…そうだな、使いを出してみよう。少し待っていてくれ。」
そういってカイさんは俺の竿を預かってくれた漁師さんに声をかけに行った。
嬢ちゃんと2人になってしまった。
いや名前を聞いてないしみんなも嬢ちゃんとしか呼ばないからこれが名前なのではないかとも思ってるくらいだ。
「えっと、自己紹介もしてなかったね、俺はジンって言います。成り立てだけど冒険者です。」
「あ、そうね、えっと私はイオルよ、よろしくねおにい、じゃなくてジンさん。」
イオルさんと言うらしい。流石にジョウちゃんではなかったか。
「イオルさんだね。」
「あ、呼び捨てでいいよ。さん付けされるのはちょっと恥ずかしいから。」
「わかった、イオルだね。俺もジンでいいよ。」
「うーん、でもお兄さん年上でしょ?」
見た感じイオルは大人びて見えるけどまだ10代だろう。
「多分そうだと思うけどまあ好きな呼び方でいいよ。別にお兄さんのままでもいいし。」
「うーん、そうね、とりあえずジンさんで」
「了解、それじゃあよろしくね。俺はホイルさんの顔を知らないからあくまでできる範囲での手伝いになるけどね。」
「うん、任せて!」
さあ、初依頼からだいぶ変わってしまったけど頑張ろう!
長いです。
嬢ちゃんの名前出そうとしたら3000文字超えてしまいました。
それと今日で小説投稿はじめて一月ですね。特に決めてはいませんがなるべく毎日投稿、1500文字前後くらいのつもりでこれからもやっていこうと思います。




