ダイヤトラウト
「とりあえず置こっか?」
魚の取り込みを手伝ってくれた女性が提案してくる。
「そうですね、じゃあそこに置きましょう。」
そういって2人で魚を引き摺るようにして湖から離してから地面に置く。
「助かりました、掛かったのは良かったんですが予想以上の大物でどうしようかと思ってたんですよ。」
手伝ってくれた女性に礼を言う。
「気にしないで良いよー、あたしが勝手に手伝ったんだし」
そう言って笑ってくれる。
とても綺麗な人だった。整った目鼻立ちに綺麗な金髪を肩まで伸ばしている。目の色も髪と同じような金色だ。
少し見惚れてしまった。
「おーい?お兄さーん?どしたの?」
「あ、ああ、すみません、ボーッとしてたみたいだ。」
そう言って取り繕う。流石に見惚れてたとは言えない。
「大丈夫?まああれだけの大物だもんねー、放心しちゃうのも分かるよー」
女性はそう言って陸に上がってもまだ元気に暴れている魚を見る。
「そ、そうだね、よく糸が保ってくれたよ。」
「んーでもアラクネの糸使ってたんでしょ?あれはよっぽどのことがないと切れないでしょ?その分、魚からは警戒されやすいからなかなか釣れないけど。」
「えっ?そうなの?」
「えっ?お兄さん知らずに使ってたの?」
「うん、お店の人に選んでもらった道具をそのまま仕掛けただけだから材質とかまでは気にしてなかったよ。」
「えー、ちゃんと自分で選ばなきゃダメじゃない、アラクネの糸って高いんだよ?。ってよく見たらその竿もめっちゃ高いやつじゃん!?。ウチの実家でも置いてるけど長いこと売れないやつだよそれ。お兄さん絶対ぼったくられたんだよー。」
マジか、竿が高いのは知ってたけど糸まで高いやつだったのかよ。
「あーそれでお兄さんそんな大物狙いの仕掛けなのに網も何も持ってなかったんだね?」
「うーん、大物狙いのつもりも無かったからね。俺も網のことは考えてなかったよ。」
「でも初心者ってわけでもないでしょ?どんなにいい道具揃えてもあのサイズを初心者があげるのは無理だし。」
「一応釣り歴は10年は超えてるよ。まあでもちょっと遠くから来たからね、道具も地元のとはちょっと違うから分からなくて。」
竿はカーボンだし延べ竿じゃなくてリールつけるし、糸もナイロン、フロロカーボン、PEとかだしなぁ。
「そうなの?じゃあそれにつけ込んで高いものを売りつけた人がいるのね?全く商売人の風上にも置けないわ。一体どこで買ったの?」
どうやら高い買い物をさせられたと思われているようで怒ってくれているようだ。
「いや、さっきそこの釣具屋さんで用意してもらったんだけど、でも結果的に釣れたわけだからいい買い物だったと」
そう言ってチラッと買い物したお店の方を見る。
「…そこってあの漁業組合の建物の隣のお店?」
「あー多分?そこの大きい建物の横のお店だけどーどうしたの?」
何故か目を見開き口をポカンと開けてしまった。うん、でも美人さんだな。
「えっと?大丈夫?」
「そう。そうなのね…。」
そう言ってボソリと呟く。
「ちょっと待っててね♫」
そう言ってにっこり笑うとそのお店に向かって歩いていく。
「どうしたんだろ?まさか苦情入れに行ったのかな?」
なんとも声を掛けにくくそのまま見送ってしまった。
「おーい兄ちゃん、話終わったんなら魚絞めちまえよ。痛んじまうぞ?」
そう言われて我に帰る。
「あ、はい、そうですね。」
そこでやっと釣った魚を見る。
「おー改めて見るとやっぱデカイな。」
今なお元気に暴れている大魚。
やはり1mは超えてそうだ。
「いやーこんだけのサイズは漁でもなかなか捕れんぞ。大したもんだ。」
「兄ちゃん血抜き処理は出来るか?」
「一応出来ます。」
「じゃあこれ使いな」
そう言って包丁とバケツを貸してくれた。
「ありがとうございます。」
おそらくだが前世の魚と構造は変わらないだろうし普通に処理をする。
周りで見ている人たちも何も言わないしこれで問題ないのだろう。
「なかなかうまいじゃねえか」
「ありがとうございます、そう言えばこの魚なんて名前何でしょうか?初めて見たんですが。」
「ん?ああ、そういや嬢ちゃんに遠くから来たとか言ってたな、こいつはダイヤトラウトだな。高級魚だぜ。デカくなる種類だがここまでのは滅多にいねえな。」
ダイヤトラウトか、鱗が輝いて見えるからそう名付けられたのかな?
「あ、包丁洗ってお返ししますね。」
「ああ、そのままでいい。後で俺がやっとくからよ」
「良いんですか?」
「構わねえよ、それにそろそろ嬢ちゃんが釣具屋の旦那連れて帰ってくらぁ」
そう言えばさっきの女性が釣具屋の方に向かって言ったままだ。
「あの、大丈夫なんですかね?なんかすごい迫力で止められなかったんですが」
「まあ大丈夫だろ」
「言ってたら帰ってきたぜ、兄ちゃん、がんばんな。」
そう言われて振り向くと先程の女性が釣具屋の店主を引きずってこっちにやってくるところだった。
嬢ちゃんの名前は次回です。




