三つの反省
ダイアスたちと別れて紹介してもらった宿に向かう。
「んーここかな?」
教えてもらった通りに1件の家の前に着いたのだが見渡してみても看板などは無い。
「まあ入ってみればわかるか。」
そう言って扉をノックして開けてみる。
「こんばんはー」
「おや、客かい?」
そう言ってカウンターに腰掛けていた女性が立ち上がる。
「はい、部屋は空いてますか?」
「ああ、空いてるよ。あんた誰の紹介で来たんだい?」
「パラサの集いのダイアスです。もしかしてここは紹介制ですか?」
「別にそういうわけじゃないよ、ただここはあたしが道楽でやってるからね、あんまり繁盛してもしんどいし捌ききれないのさ。だから看板も出してなかったろう?」
「ああ、そういうことですか」
「まあ入りな。」
「あ、はい」
そう言われて中に入り扉を閉める。
「しかしダイアスの紹介ねぇ、あの子は元気にやってたかい?」
「はい、さっきまでギルドで一緒に飲んでいたので」
「そうかい、元気でやってんのならいいさね。あんた名前は?」
「ジンと言います。」
(姓は言わなくてもいいよな、なんか持ってる人は少ないみたいだったし)
「ジンだね。部屋は素泊まりで銀貨2枚だ。飯は朝晩で言えば出してやる。あたしの分のついでだから金はいらないよ。」
「はい、じゃあとりあえず3日ほどお願いします。」
そう言って銀貨を6枚渡す。
「あいよ、飯はどうする?」
「今日はもう食べてきたので明日の朝お願いします。」
「ああ、わかった。部屋はそこの階段上がって好きな部屋を使いな。今は他に客はいないからね。」
「はい、じゃあよろしくおねがいします。」
そう言って階段を上がる。
「部屋は5部屋か。まあ一番奥でいいかな。」
一番奥の部屋に入る。
廊下には蝋燭が灯っているが部屋は真っ暗だ。
ランプの灯りを頼りに見回してみるとベッドと小さなテーブルがある簡素な部屋だった。
テーブルの上に蝋燭が立てられておりその蝋燭にランプの火を移す。
そうしてベッドに腰掛けて人心地着いた。
「ふー、なんとか1日目を無事に終わらせられそうだ。」
暗闇の中、蝋燭の灯りだけがある部屋で今日1日を振り返る。
(初めて魔法を使って、能力も試して、それから魔物との初戦闘。それから森を抜けて町を見つけたと思ったら見回りしてたベックに絡まれたんだよな。)
しかも町じゃなかったし。
(ベックを落ち着かせて話を聞いて、怪我人がいるってことを知ってダイアスたちと会ったんだ。あの時はダイアスたちを落ち着かせようと思って俺の腕を切らせてそれを治すなんて考えたんだよな。)
うん、アホだな。魔法が使えることとゴブリンとの戦闘のあとってことで完全に舞い上がってたわ。厨二かよ。
(まあそれで一応信用してもらってダイアスたちの治療をしたんだよな。あの時スパッとやられてたらどうすんだよなー)
一個目の反省。
(で、みんなの怪我は治せたけどクンスさんが血を流しすぎてて目が覚めなくて町まで連れて行くことになった。絶賛迷子だった俺もそれに便乗させてもらった。)
途中で魔物が出てきたけどダイアスとベックの敵じゃなかった。
(今思えば魔物を発見したのはダイアスが【望遠】を使ってたんだろうな。ベックも多分戦闘中に左手の盾で攻撃を受けた時【左腕硬化】使ったんだろうし。タイルから預かった大剣も背負って運ぶくらいなら俺でも出来たけどあれで戦うのは無理、鍛えてあげた体に【筋力強化】があるからこその得物だよな。ロンはーうん、めっちゃ酒豪、あんだけ飲んでも顔が赤くすらなってなかったし、【酒精分解】ってすごいよな。)
(町についてクンスさんを診療所に預けて、冒険者ギルドで冒険者登録をして。)
その時に簡単に自分の能力が書かれたギルドカードをみんなに見せて注意された。二個目の反省。
(反省してたらダイアスが自分のカードを俺に見せてきてみんなもそれにならって、いい大人なのに込み上げるものがあったよ。それからみんなで食事ってか飲み会。メシも酒もうまかった。)
冷蔵庫なんかないからエールはぬるい。だが俺は元々酒は常温派だ。なんの問題もない。
(問題はないしうまかったんだが…、少し飲みすぎたな。)
ここにきて一気に眠気が来た。蝋燭を吹き消しベッドに横になる。
(日を跨いで能力が切り替わるのを確認しときたかったんだけどもう無理だ、眠い。)
三個目の反省。もうロンのペースで酒は飲まない…。
異世界1日目終了。




