癒しのマッサージ
簡素な作りの橋を前に日和る俺にイオルが自分が先に渡って見せると言う。
この上なく情けないのだが任せるしか無かった。
1歩踏み出すたびに縄橋からギシッ、ギシッと言う音を軋ませながらもほとんど立ち止まることもなく着実に進んでいくイオル。
そしてついに
「とうちゃーく! ジンさーん、ちゃんと渡れるよー」
「おお…すごいな…。」
無事に渡りきった向こう側からイオルがて手をブンブン振ってアピールしてくる。
それにこちらも軽く手を上げて答えるとたった今イオルが渡った橋を見る。
「……大丈夫、安全性はイオルが示してくれたし、頼りないけど手すり?もある。風もないからほとんど揺れないはず。仮に落ちたとしてもちゃんと川に水も流れてるから落下死はないはず…‼︎」
自分を安心させるかのように状況を口に出して確認する。
「良し、い、いくぞ!」
左右の縄をしっかり握り、縄橋に足を踏み出す。
「こっわ…、なんだこれ…」
グラグラと不安定に揺れる足場は1歩進むごとに不快で不安になる音を鳴らす。
多分立ち止まったら動けなくなるだろうと本能的に理解し、体の震えを感じながらも歩みは止めない。
こういう時は下を見ずに前だけ見て進む方がいいのだとは思うけど縄の間を足が抜けてしまうのが怖いのでそうも行かない。ただひたすらに進み続けるしかない。
「ジンさん頑張って!」
前から聞こえるイオルの応援に引っ張られるように進む。進む。進む。
今どれくらい進んだのだろう。
半分は過ぎたか?
歩き始めてどれくらい経った?
5分か? 10分か?
この苦行はいつまで続くのか……
ポンっ、と肩に手が置かれた。
「ジンさん、お疲れ様!」
「え…? あ、着いた、のか…?」
正面を見ると俺の肩に手を伸ばしているイオルと目が合った。
「うん。あ、とりあえず座る? そこにちょうど良さそうな岩があるよ。」
「ああ、悪いけどそうさせてもらうよ…」
イオルに促されるまま岩に腰掛ける。その瞬間、全身の力が抜けるかのように疲れがドッと出た。
「はあぁぁぁ〜…。」
「お疲れだね。大丈夫?」
「ああ…、なんとか…。」
「あはは、いっぱいいっぱいって感じだね。よく頑張ったね。」
イオルは俺の後ろに回り込み、俺が背負っていた背嚢を下ろすと肩を揉み始めた。
「ちょっと休憩だね。どう? 気持ちいい?」
「…ああ、気持ちいいよ。上手だね。」
人に肩を揉んでもらったことなんてあまりなかったがこれはとても気持ちいい。
「えへへ、良かった。昔からお父さんの肩を揉んでたから慣れてるんだー」
「そっか。…ごめんな? 情けないとこ見せて。」
「んーん、誰だって苦手な事はあるよ。むしろ私の方こそ出会ってからいっぱい迷惑かけちゃってるし…。」
「そんなことないよ。魔物の索敵やボウガンでの狙撃とか俺じゃできないことをやってくれるてるし、実際今日ここまで来るのに俺全然役立ってないし…。」
「えー、ジンさんがいてくれるから安心してゴブリンと戦えたんだよ? 私1人じゃ無理だって。」
「そうか? 役立ってるなら良かったよ。…ごめんな、ちょっと弱気になってるみたいだ。」
自分で思っていた以上に凹んでいたらしい。年下の娘に弱音を吐くとか情けなすぎる。
「いいんだよー。私も役に立てて嬉しいし、それに弱ってるジンさん、ちょっと可愛いし?」
「…返答に困るわ。」
「へへー、たまには私が励ますのも良いねー」
「勘弁してくれ…」
楽しそうにしているイオル相手に照れながらもイオルの肩揉みに癒された。
主人公が橋にトラウマ(後、若干の高所恐怖症)を持っているのを書くだけのはずがだいぶ長くなってしまいました。




