トラウマスイッチ
少し危ないところもあったがゴブリンとの戦闘はとりあえず無事に終了し、倒したゴブリン達から討伐部位として犬歯を採取した。この作業もだんだんと慣れて来たと思う。
「ジンさん、これ、お願いね。」
そう言って回収したゴブリンの犬歯2本を手渡してくれる。
「うん、預かるよ。 イオルも討伐部位の回収慣れて来た?」
「う、うーん、少しずつかなぁ…、まだちょっと怖い感じもするし。」
「あー、動き出すんじゃ無いかって?」
「そうそう! 魔石を壊してるからもう動かないのはわかってるんだけどね。」
「うん、分かる分かる。俺も今にも動き出すかもって思いながらやってるよ。まあ慣れていくしか無いよね。いつまでもユーンさん頼りってわけにもいかないし。」
「そうだよね。うん、頑張る!」
「よし、それじゃ行こうか。予定よりも時間がかかっちゃってるから急ごう。」
「うん! そろそろ橋が見えてくると思うよ。」
そう言ってまたイオルに警戒してもらいながら歩き始める。
イオルはずっと眼帯を装備したままでまっすぐ歩くのが安定しない。そのためかいつ頃からか俺と腕を組むようにして進むようになっていた。
イオルに歩幅を合わせるように歩きながらここまでの道中のことを思い返す。
サルコスの町を出てからゴブリン達との戦闘を4回行った。
ゴブリンの数は3匹、2匹、4匹、3匹の順でいずれの戦闘もイオルが能力でゴブリンの位置や数を伝えてくれたためこちらから奇襲をかける形で有利に戦うことができていた。
作戦としてはまずイオルが昨日購入した鏃が石でできた矢を使って狙撃。
敵がこちらに気づき近づいてくると石の矢より重くて飛距離が出ないが威力の高い鉄の矢に切り替えて2匹目を撃つ。
後はイオルを狙って近づいて来たところで横から俺が攻撃して倒すと言うような形だ。
最後以外はほとんどイオル頼りの作戦である。
最初の3匹は作戦がばっちりハマり、イオルが2匹倒してくれた後、俺が残る1匹を受け持ち無事に倒した。そのあとゴブリンが2匹の時はイオル1人で片を付け、苦戦するかもしれないと思っていたゴブリン4匹の時は隠れられる草むらがあったためにゴブリンに俺たちが見つかるまでに3匹をイオルが倒し、最後の1匹がやっとイオルを見つけて向かって来た時にはボウガンの巻き上げが完了しており、それもあえなく撃ち抜かれてしまった。
こうまで上手くいっているのには昨日購入した石の矢が関係してくる。
この石矢はイオルも今まで扱ったことがなかったので先に何本か試射をしてみたのだが特に問題なく狙えており、鉄の矢より軽い分飛距離を伸ばすことができていた。
デメリットとしてはそれなりの距離から撃たないと少し威力が落ちることと基本使い捨てとなることが挙げられる。
狙いが外れて地面や障害物に当たれば鏃の石が砕けるし、狙い通りにゴブリンに当ててもそう簡単に抜けないしほとんどの場合、刺さった衝撃で鏃が破損しているのだ。
まあ近づいてくれば今まで通り威力が高く再利用可能な鉄の矢で倒すので問題ないのだが。
と、まあそんな感じで合計12匹のゴブリンと戦ったわけだが内訳はイオルが11匹倒したのに対して俺は1匹だけと言う不甲斐ない結果となっている。
「…頑張らんとなぁ。」
「え? あ、ジンさん、橋が見えて来たよ!」
「お、おお。」
俺の独り言に反応しそうになったイオルだが目指していた橋を見つけて興味が移ったようだ。
イオルの歩みが少し速くなり俺は引っ張られるようについていく。
間もなくして到着した橋は縄で結び合わせてできた簡素な作りのものだった。
「…えっ、これ?」
「そう…、みたいだね…。」
近くに来るまではよくわからなかったのだが対岸同士に打ちつけた木の杭に格子状にした縄を張っているだけ、手すりがわりに左右に張られた縄があるだけで恐ろしくバランスも悪そうだ。
何より縄の間から下が見えるのが怖い。
…橋を見て思い出した。
(俺、橋から落ちて死んだからこの世界に転生することになったんだよなぁ…。)




