食堂の従業員不足問題
ジンとイオルが岩山に向かって歩いている一方その頃、冒険者ギルドではようやくほとんどの冒険者たちが依頼を受け終わり、ギルドの中も静かになって来た。
「やー、終わった終わった。今日も無事に忙しい時間捌き切ったよー。」
と思ったのだが食堂で給仕をしていたはずのタマさんがふらっとやってくるとカウンターに突っ伏してだらけ始めた。
「タマさん、お疲れさまです。もうよろしいのですか?」
食堂の方に目をやるとまだ数人の冒険者の男性が食事をしているのが見える。
「うん、大丈夫、もう料理は出しちゃったし、料理長からも先に休憩しておいでって言ってもらったからねー。」
ひらひらと手を振って答えるタマさん。
「そうですか。休憩でしたらこちら側へ入ってからどうぞ。」
「お、悪いね〜。」
そう言って起き上がるとカウンターを回り込んで私の隣にイスを引いて座る。
「はー、疲れたぁ〜。朝食の給仕私だけなのは無理があるよー…。」
「ふふっ、そうですね。」
今現在ギルドの食堂で働いている女給は日曜日だけ手伝っている私を抜くと5人。
その中でもタマさんの負担は大きく、週に6日間、朝から晩まで働いている。ちなみにお休みは毎週月曜日でその日は食堂自体がお休みになる。
料理人の方は元々ギルドで食堂を始めたギルドマスターがたまにしか厨房に立てない分、ギルマスの直接の弟子であるマッシュさんが料理長を務め、そのマッシュさんのお弟子さん2人とともに腕を振るっている。
食堂がお休みの日以外毎日働いているのはこの4人。
今朝も注文を聞いて、料理を運び、お勘定をして食器を片付けてと1人で走り回っているのがここからも見えていた。
「笑い事じゃないんだって。従業員の募集はずっと出してるのに全然来てくれないしさー。ユーンさんの方はどう?」
「一応、私の方でも依頼で来られた方にお話しして見ることもありますけど今のところ良い返事は得られませんね。」
「そっかぁ〜…」
項垂れるタマさんを横目に持ち込まれた依頼内容が記入された書類を確認し始める。
食堂の従業員不足はギルドの方でも承知しており、ギルド職員も知り合いや依頼を出しに来た人などに話をしてはいるのだが空振りに終わっている。
理由はそれぞれあるのだろうが1番答えとして多いのはやはり怖いということだ。
冒険者相手の商売。冒険者というのはやはり粗暴だという印象を持つ人が多いらしく、その上お酒を提供することもあるとなると二の足を踏むのも仕方ないと思う。
実際のところガラの悪い冒険者もいるが揉め事なんてそう起きない。ギルド内で暴れたりすれば出禁を喰らう可能性もあるし、酔って給仕に手を出そうとでもすれば他の冒険者に取り押さえられるか、最悪の場合、楽しそうな笑顔でやってきたギルドマスターにボッコボコにされる。
そういうのを知っているこの町の冒険者はほとんど問題など起こさないのでやらかすのは別の町からやってきた冒険者だ。
なのでこの町にやってきたばかりのジンさん相手にやらかした時は血の気が引いた。冒険者の能力をギルド職員が話すだけで大事なのにジンさんは複数能力持ち。複数能力持ちであることが知れれば貴族連中に狙われるのは間違いなく、それは私自信がよく知っている。本当によく許してくれたものだと思う。
「ねえユーンさん、ギルドの仕事が終わってからこっち手伝ったりとかって無理??」
「無理ですね。流石に許可が下りないと思います。」
「はあ、だよね〜。」
タマさんも分かっていて聞いているのであまり落ち込む様子はない。同じ敷地内とはいえ私が食堂の方を手伝いすぎると他の職員達まで自分も手伝うべきなのでは、などと思ってもいけない。すでに今年からギルド職員になった新人からそう言った相談を受けたことがある。
「それと今の冒険者の活動に時間を使いたいので。」
「え? 何、まさかギルドの仕事終わってから町の外とか行くつもりなの⁉︎」
「いえ、さすがにそれは。実は昨日買った武器があるのですがそれの練習をしているんです。今度の休みまでには形にしておきたいので。」
昨日買った鎖鎌という武器を家に帰ってから庭で少し練習してみたのだけど、重りを回転させて的を目掛け投げるのは能力の補正もあって簡単にできた。そのあと引っ張って手元に戻すという動作。これも鎖を引いて自分に向かって投げるという考えの元試してみたところうまくいった。存外これが面白く真っ直ぐ投げては引き、斜め方向に飛ばして着地位置を狙うと夢中になってやっているとお母さんに近所迷惑なので遅い時間にやるのはやめなさいと叱られてしまった。
そのため今日は就業時間になればすぐに帰宅するつもりである。
「おお…、楽しそうねー。」
「タマさんも冒険者に興味があるなら食堂がお休みの月曜日だけでも参加されますか?」
「いやいやいや、死ぬよ⁉︎ 仕事でヘロヘロになった状態で冒険とか無理だって!」
「もちろん冗談ですよ。」
焦ったようにいうタマさんの様子が面白いのでもう少し揶揄おうかと思ったけど可哀想なのでやめておいた。
「冗談じゃないと困るよ⁉︎ はー、ユーンさんの元気を分けて欲しいわ。」
「ふふっ、すみません。お詫びにもう少しだけ座って休んでいていいですよ。」
「それはどうもー。じゃあもうしばらく話相手になって貰うからね!」
「ええ、構いませんよ。」
それから私は依頼内容の精査をしながら、タマさんが満足するまでおしゃべりに付き合うことになった。
書くべきこといっぱいあるのにこんな話になりました。
そして投稿始めてから半年になるみたいです。
これ全ての能力出すのに一年かかるんじゃ…。
頑張ります!!




