新たな決意
準備を終え、宿を出た俺たちは冒険者ギルドに到着した。
中を見回すと受付カウンターに一つにユーンさんが座っているのを見つけたのでそこに向かう。
「ユーンさん、おはよう。」
「おはよ〜。」
「おはようございます。少し遅かったですね。」
ギルドの壁に取り付けられている時計を見れば時刻は9時をとっくに過ぎ、10時を示そうかとしている。
時間を指摘されたイオルは少しバツが悪い顔をした。
「あはは…、ごめん。結局寝坊した。」
「そんなことだろうとは思っていました。ジンさん、申し訳ありません。」
そう言って俺に向かって頭を下げて来るユーンさん。
昨日は私服姿だった彼女も今日はギルドの制服に身を包んでいる。
「いやいや、ユーンさんが謝ることじゃ無いよ。それにちゃんとイオルとは話し合ったしね。」
謝罪するユーンさんを制して頭を上げて貰う。
イオルの準備が終わって宿を出る時もこの冒険者ギルドに来るまでの間もイオルは申し訳なさそうにしていて、話を振っても俺が怒っていないか探るようにしか答えてくれなかったので改めて怒ってない旨を伝えて、なんとか普通に話してくれるようになってからギルドにやってきたのだ。
「そうですか? ジンさんがそう言われるのなら良いですが。」
「うん。それじゃ今日受ける依頼を決めようと思うんだけどいい?」
「はい、ですが少しお待ちください。先に済ませておくことがいくつかありますので。」
「ん? ああそうか。」
そういえば昨日先送りにしたものがいくつかあったことを思い出した。
「まずはこちらですね。昨日お預かりしたイオルのギルドカードです。」
そう言ってカウンターに置かれたのはちゃんと元通りの色になったイオルのギルドカードだった。
「これでまた問題なく使うことができます。では続けてパーティの正式登録も済ませてしまいましょう。ジンさんもギルドカードの提示をお願いします。」
「ああ、じゃあこれを。」
「はい、ではお預かりします。」
俺がギルドカードをユーンさんに渡すとユーンさんも自分ギルドカードを取り出し、イオルのも含めた3枚のカードを魔道具に乗せていく。
「まずはリーダーであるジンさんのカードからですね。…ふむ? …ああ、そうでしたね。」
俺のギルドカードを魔道具にかけた後、少し悩むような表情をしてからすぐに納得した様子のユーンさん。
「少し時間がかかりますのでその間に確認として説明させていただきますね。ギルドカードに書き込まれる情報なのですが、登録者の名前、年齢、登録したギルド、冒険者ランク、能力、魔法ランク、パーティ名、パーティランク。そして依頼の達成や魔物の討伐の記録となります。このうち普段からカードに表示されているものは名前、年齢、登録ギルドの3つです。その他の冒険者ランク、能力、魔法ランク、パーティ名、パーティランクは登録者が任意で表示することができます。そして依頼の達成、魔物の討伐記録に関しましてはギルドでこちらの魔道具を通した場合のみ確認が可能です。…そしてその場合、先に述べた登録者が任意で表示できるものも全て見ることができます。もちろん私たちギルド職員がその情報を第三者に伝えることは重大な違反となりますのでご安心ください。」
説明を終えるとユーンさんは作業を続ける。
「…うん、よくわかった。ありがとう。」
確認としての説明、ね。
ギルドカードを魔道具に通して見ると全ての情報が開示される。ということは日を跨いで切り替わっているはずの俺の能力をユーンさんは見たのだろう。それで確認という体で忠告してくれたということだ。
作業をしているユーンさんの腕を見ると【協約の腕輪】がはめられている。
俺本人と対の腕をつけているイオル以外に俺の能力のことを話せないよう登録されているもので少し判定は緩いながらも協約を破った場合、痛みが走るという魔道具。
イオルもちゃんとつけてくれているとはいえ周りにはは他の冒険者やギルド職員も沢山いる。
そのため問題ない範囲で説明してくれたのだろう。
「お待たせしました。これでギルドカードへのパーティ登録は完了です。続きまして一昨日お二人が受けられた案内任務。それから昨日の納品依頼の確認が終わっておりますのでそちらの処理に移らせて頂きます。」
「うん、お願いします。」
「ではまず一昨日の案内任務です。盗賊の潜伏している村へ討伐任務を受けた【パラサの集い】を送り届けるという依頼でそれを無事成し遂げられたということで見事依頼達成されたと判断されました。よって成功報酬として金貨1枚。ギルドの仲介手数料として2割を差し引いて大銀貨8枚がお支払いされます。」
「ありがとうございます。」
大銀貨8枚、道案内で1人頭4万円ほどということになる。盗賊のアジトへの案内と考えると高いのか安いのか判断に困る額ではある。
「冒険者ランクGでの依頼報酬となるとそれが限界ですね。特に今回の危険地帯への案内という本来Gランクの冒険者では受けられないものをGランクの冒険者2人でパーティを組むということでパーティランクをF -にすることでギリギリ受けることができたわけですので。」
俺の顔を見て考えていることを予想したのだろうユーンさんが申し訳なさそうに説明してくれる。
「いや、ありがとう、大丈夫だよ。それじゃあえっと、元の金貨1枚のうちの1割分として大銀貨1枚をパーティの共有財産に貯金するから俺とイオルで大銀貨3枚と銀貨5枚ずつで分けるね。」
「う、うん。」
イオルはまだ少し朝のことを引きずっているようで歯切れが悪い。
「ああ、それから漁師さんたちからお二人に伝言があります。時間がある時でいいのでカルノ湖の漁業組合を訪ねてきて欲しいとのことです。」
「ああ、了解。じゃあ時間作って行って見るよ。」
「何だろうね?」
「まあ行って見たらわかるよ。」
「よろしいですか? では続いて昨日の納品依頼のお話をさせていただきます。こちらは冒険者ギルドの食堂の料理長から野草を取って来るようにということで無事依頼を達成されたと依頼主から承っております。こちらはお一人当たり銀貨3枚で合計9枚。ここから2割ですので銀貨1枚と大銅貨8枚を差し引かせていただき、銀貨7枚と大銅貨2枚をお支払いいたします。」
先に受け取った金額と比べるとガクッと下がった。
報酬を受け取りパーティの貯金でここから大銅貨9枚を引き、残りを3人で分ける。結果銀貨2枚に大銅貨1枚、2100円相当の配分となる。
「採取依頼は依頼できる最低額で依頼を出し、採取物の買取が主な収入となるので受けた冒険者の頑張り次第で報酬が上がります。そしてパーティのランクが上がればもう少し高額な報酬のある依頼も受けられるようになります。頑張りましょう。」
「そうだね、まだ始めたばかりなんだ。これからだね。」
「うん! 私も頑張る!」
初めての報酬を手にした俺たちはこれからの冒険者活動にやる気をみなぎらせるのだった。




