厨二チックな名前
ダイアスさんから今までの経緯を聞きながら全員の治療を終えた。
「これで大丈夫だと思います。試しに足を動かしてみてください」
「ああ、問題なく動くよ、痛みもない。ありがとう。」
軽く足を動かし、問題なかったようで立ち上がって俺に礼を言う。
「本当に助かった、この借りは必ず返させてもらう。」
ダイアスさんも俺に頭を下げてきた。
「あまり気にしないでください」
そんな会話をしているとベックさんが家に入って来た。
「周囲に今のところ異常はない、治療の方はどうだ?」
「ちょうど今終わったところですよ。」
「この通りだ、みんな治療してもらえたよ。クンスもだいぶ顔色が良くなって来たから問題ないだろう」
他の人の治療をしている間にクンスさんも休めたようだ。
「問題ないとは思いますが俺は回復魔法が使えるだけで医者じゃありませんからね。なるべく早く町に行って医者に診てもらって休んだ方がいいと思いますよ。ここから町は遠いんですか?」
「そうだな、普通に歩いて2時間くらいか、だがクンスはまだ起こさない方がいいだろうから抱えるとなるともう少しかかるだろう。魔物や盗賊が出てくる可能性もあるしな」
「なるほど」
2時間か、近くといえなくもない微妙な距離だな。まあ女神様から見たらこのくらいは森から出てすぐに町って判断だったんだろうな。
「じゃあとりあえず町に向かって行けませんか?俺、元々はそのサルコスの町に行くところだったんですよ」
「ああ、そういえばそうだったな、こっちもいっぱいいっぱいでよ。あんたを巻き込んじまった」
「そうだったのか、じゃあ町に行く途中でこの村に寄ったとこだったんだな」
「あー、まあそんな感じです」
この村をサルコスの町だと思ったとは言えない。事情を知ってるベックさんも苦笑いしながら流してくれた。
「まあ目的地は一緒なので良ければご一緒しませんか?戦力にはならないと思いますが怪我人の搬送のお手伝いくらいならできますよ」
同じ場所へ行くのだからと同行を持ちかけてみる。正直なところサルコスの町の場所がわかっていないので一人だとまた迷うのだ。
「いやいや、恩人にそんな事までさせられねえよ。一緒に行くのは問題ねぇがあんたは普通について来てくれればいい!」
村を出るためにクンスさんを運ぶ担架などの準備をする。
「そうだ、ちゃんとした自己紹介すらしていなかったな、俺たちはサルコスの町で活動しているギルド、【パラサの集い】だ。で俺はリーダーのダイアス。最初にあんたと会って話してたのがベック、腹に風穴空いてたのがクンス、腕を痛めてたのがタイルで、足を折られてたのがロンだ。」
そう言われて初めて自分が名乗っていないことを思い出した。
「ああ、俺は白木迅です」
「え、今なんて言ったんだ?」
「え?」
「いや、なんか名前?のところだけ聞き取れなかったんだが…」
(ああ、俺は今この世界の言葉で話しているけど前世の言葉のままの名前じゃ聞き取れないのかな?じゃあ)
「ああすみません、俺の名前はジンです」
「ジンだな、改めてよろしくな」
今度はちゃんと伝わったらしい。でもせっかくの異世界だしもっと厨二チックな名前にしてもよかったかもしれない。
「なあジン」
そんなことを考えているとベックさんが話しかけて来た。
「あ、はい、なんですか?」
「あーその、最初に会った時に威嚇するような態度とっちまったうえに俺たちは助けてもらったわけで、なんというか、そんな丁寧な喋り方しなくていいぜ。あと敬称もいらねえ、呼び捨てにしてくれ。」
言われてみれば確かに、初めて会った時に切りかかって来そうな剣幕だったから刺激しないように話しかけたままだった。
「あーそうですか?えっとじゃあ普通に喋るよ、これでいい?」
「ああ、そうしてくれ。むしろこっちが礼を尽くすべきなんだがどうにもそういうのは苦手でな」
「いや、俺も正直あまり得意ではないから。普通に話せるならありがたいよ」
そんなことを話しながら、俺たちは村を出る準備を終わらせた。
今度こそ町に向かうのだ!




