目覚め
「ふあああああぁぁぁ!!!???」
洗面所からイオルの絶叫が轟く。
目が覚めたようだ。
「あー、ちょっと見てきます。」
そう言って洗面所に向かおうとしたのだが
「自分から来るまでほうっときなよ。それにあんたが今行ってもあの子が落ち込むだけさね。それより配膳を手伝っておくれ。」
女将さんに苦笑いしながら止められた。女将さんの言うことのが正しいと思ったので残って配膳を手伝う。
料理の配膳も終わり、しばらく待っているとキィっという音と共に洗面所の扉が少し開かれ、そこからこちらを確認するように頭を半分だけ出して見てくるイオル。その顔は茹で上がったタコのように真っ赤になっている。
「イオル、おはよう。」
何事もなかったようにあいさつをする。
「……お、おはようございます」
しばらく間があったもののイオルはちゃんとあいさつを返してくれた。
「うん。朝ごはんの準備出来てるよ。ほら、座って食べて。」
「あ、あの…。先にちょっと部屋に戻っていい? その…、お、お化粧とか…」
「化粧? そんなもん食べてからの方がいいだろう? 先にお食べ。」
「…はい。」
イオルのお願いも虚しく女将さんに言い含められた。諦めたように扉から体を出し、食卓に着く。
「それじゃ、いただきます…。」
ちょっと涙目のイオルはそう言って食事に手をつける。いや、涙目っていうか顔洗ったからだよねきっと。
まずムニエルをひと口。
……パクリ、モグモグ。ゴクン。
もうひと口。
…モグモグ。ゴクン。
さらにもうひと口。
モグモグ。ゴックン。
ひと口食べるごとに笑顔になっていく。そして
「美味しい!」
満面の笑みで女将さんに向かって言った。
「くっくっ、そうかい。そりゃよかったね。」
イオルの機嫌の治りように楽しそうに笑う女将さん。
「魚もパンもおかわりもあるからね。たんとお食べよ。」
「うん!」
それからおいしそうに料理を食べ始めた。
俺も女将さんもそれを黙って眺める。何度かイオルがムニエルのおかわりをしたときに女将さんが対応しただけでそれ以外は黙々と食事を続けた。
「ふー、もうお腹いっぱい。ごちそうさまでしたー。」
「はいはい、わざわざありがとね。」
イオルが食べた食器を重ねて持っていく。
別に片付けるように言われているわけでもないんだけど宿代とは別でタダで食べさせてもらっているようなものなので食器を重ねて運ぶくらいは自主的にやっているのだ。
「それじゃあもう少ししたらギルドに行こうか。」
「…うん、準備してくるね。」
俺がそう声をかけたのだがイオルはこちらも見ずにそれだけ言うと階段を上がって行ってしまう。
「あー、流石に忘れてないかー」
「あの子もそこまで単純じゃないだろう。」
「あはは、ですよね。」
「ま、かわいい子の寝顔が見れたんだ。ご機嫌取りくらいはしてもバチはあたらないよ。」
「他人事だと思って楽しそうですねぇ…。じゃ、行ってきます。」
楽しそうに笑う女将さんに見送られてイオルの後を追い2階に上がる。




