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曜日替わり能力  作者: 向風
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眠り姫

「ごちそうさまでした。」


今日も美味しい朝食を終えた。女将さんには感謝しかない。


「お粗末様。しかし、あの子は今日も寝坊するつもりなのかねぇ。」


そういいながら上を見上げる女将。おそらくまだぐっすりと寝ているだろうイオルの部屋の方を見ているのだろう。


「あ、ちなみに今何時くらいかって分かりますか?」

「ん? そうだね。8時を過ぎたとこくらいじゃないかい。」

「あー、そうですか。」

「おや、なんか予定があったのかい?」

「いえ、さっき言ってたイオルの友達のユーンさんにイオルが8時過ぎても起きて来なかったら部屋に入ってでも起こすように言われてるんですけど…。」

「ああ、そういうことかい。じゃあ起こしてきておあげよ。」

「いや、そんな軽く言われましても。女将さんにお願いするわけには…」

「そりゃダメだね。客に貸してる間は部屋には入らないことにしてるんだ。何かものが無くなったりした時に揉めるのも嫌だろう?」

「それはそうかもしれませんけど他の客が入る方がまずいのでは。」

「何言ってんだい、あんたたちは冒険者でパーティを組んでるんだろう。それなら他人じゃないだろうに。ほら、私は食器の片付けとあの子の分の朝食の準備をするから早く呼んできておあげ。」


軽く手を振ってあしらわれてしまう。


仕方がないので階段を上り始める。

2階に上がるとすぐにイオルの泊まっている部屋の扉が目に入る。

まっすぐな廊下に扉が5つしかないのだから当たり前だが。

そしてイオルの部屋の前にやってきた。

さて…。


「イオルー? 起きてるー?」


扉越しに声をかける。もしかしたら目を覚ましていて準備中かもしれないからね。


…。

反応無し。


「こほん、イオルー? 朝だよー?」


コンコンと扉を叩きながら少し大きな声で呼びかけてみる。


……。

変わらず反応は無い。


「イーオールー! 朝だよー!」


今度こそと扉をドンドンドンっと叩きながら大声を出す。


………。

物音すらしない。


え、マジ? 今の結構うるさいレベルだったと思うんだけど。


ドアノブを掴んで回してみる。『ガチャリ』 扉に鍵もないので普通に開く。


「イーオールー! 起きてー! 朝ごはん出来てるよー!」


開いた扉の間から中に向かって声を出す。

…………。


「んん…、すーすー…」


少し身じろいだような声の後、規則正しい寝息が聞こえてくる。


「ええ…、これで起きないの…? 朝弱いって聞いてたけどここまでとは…。」


『扉を叩いて反応がなければ布団を剥いで揺り起こしてください。』

昨日のユーンさんの言葉を思い出す。


「…よし、行くか。」


部屋の中に入る。

中は俺が借りている部屋と同じような作りで家具もベットと机にイスと変わらず。

違いと言えば部屋の隅に昨日買ったボウガンの矢の束があるのと机の上に小さな鏡と化粧品らしきものが少し乗っているくらいだ。

さて、人の部屋をじろじろ見るのは良くないので現実を見よう。


ベットで眠るイオルだ。


イオルは出入り口の扉の方を向いて丸まって眠っている。

つまり俺の方を向いているわけだ。

うん、寝顔も可愛いな。

じゃなくてイオルを起こさないと

まあ、もう部屋に入って寝顔も見てる時点でイオルが怒るのは確定だろうし、それならもうちょっと眺めていたい気もするけど女将さんが朝ごはんを用意して待ってくれているわけだし待たすのは悪い。


「イオル。起きて。」


流石に布団を剥ぐのは気が引けるので揺り起こすことにした。


「…すーすー。」


まだ粘るか。ならこれでどうだ?


ペチペチと頬を叩いてみる。


「うわ、すごい。モッチモチだな。」


これはちょっと楽しい。


「…んんー、…なーにー? まだねむぃのにぃ…」


お、ついに反応が。


「おはよう、イオル。起きた?」

「んみゅ…。後5分…。」

「それ絶対5分じゃ起きないやつだよ。ほら、朝ごはんの用意してくれてるよ。」

「…朝ごはん、何〜?」

「今日はダイヤトラウトのムニエルとパンだよ。」

「…美味しそう。」

「うん、美味しかったよ。ほら、温かいうちに食べた方が美味しいから起きて。」

「…うん、起きる。…起きた。」


そう言って上半身だけ起こして見せるイオル。目はまだ薄ぼんやりとしか開いていない。

ちなみに想定していた最悪の事態、服を脱いでいるというようなことはなかった。

イオルも昨日俺の部屋から帰ってそのまま寝てしまったようで昨日の夜と同じ服を着ている。

多少ズレたり捲れたりはしてるけどこれくらいならまあセーフかな。


「それじゃ足下ろして。靴履かせるから。」

「…ふぁい。」


イオルの両足に靴を履かせる。

なんか介護みたいになってきた。


「これで良し。ほら立って。俺に捕まっていいから。」

「にゃい…。」

「ほら外出るよー、すぐ階段だからね。気をつけてね。」

「あい…」


階段を1段1段慎重に降りていく。


「…あんたら何やってんだい? その子体調でも悪いのかい?」


俺たちがあんまりにもゆっくりと階段を降りて来るものだから女将さんが心配して見に来てくれたようだ。


「いえ、その、イオルが全然起きなくて、今もまだ半分寝てるというか…。」

「…呆れたもんだね。とりあえず洗面所で顔洗わせて目を覚まさせてやりな。」

「はい、そうします。」

「します…。」


時間をかけて階段を降り切って今度は洗面所に向かって連れて行く。

というかここまで起きないってすごいよね。

あれか? 普段から半分ずつ寝るのに慣れちゃってるから介助さえあればこの状態でも動けるってことなのか?


そんなこんなでなんとか洗面所までたどり着いた。


「イオル、洗面所に着いたよ。ほらお水で顔洗って。」

「お水…。喉乾いた…。」

「いや、飲み水じゃないよ。ちょっと待ってね。」


昨日ユーンさんがやっているのを見てなんとなくやり方はわかった。こう、水を掬う感じで


「良し。」


手のひらで作った器に水が溜まる。


「ほらイオル、お水だよ。」


そう言ってイオルの口元に持っていく。


「ん、ゴク、ゴク。美味しい…。」


少し溢しながらも水を飲み切ったイオルは寝ぼけながらそう言った。


「それじゃあ、イオル。顔を洗ったらご飯だからね。ちゃんと目を覚ましてくるんだよ。」

「ん、分かった…。」


イオルにそう伝えてから洗面所を後にする。



「あの子の目は覚めたかい?」


俺が戻ると女将さんが聞いてくる。


「まだですね。今、顔を洗ってるはずなので流石に起きると思いますが。」

「そうかい。じゃあ今のうちに皿を並べちまうかね。」

「ありがとうございます。」


女将さんに礼を言ったところで


「ふあああああぁぁぁ!!!???」


と洗面所からイオルの絶叫が鳴り響いた。



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