ギルドの依頼
「すまねえ、次はこいつを見てやってくれないか?こいつが一番重症なんだ!」
ベックさんに言われ俺は横になっている人の様子を見る。顔は青白く冷や汗を流している。一眼見て重症だとわかる。
「こいつは腹をやられちまったんだ!」
そう言われて布を巻きつけて止血している腹を見る。
「これはひどい…」
彼の腹には刃物による刺し傷が三箇所あり内臓も傷ついているであろうことがわかる。
(内臓が傷つくとそこから腐って助からない…みたいな話は聞いたことあるけどこれは魔法で何とかなるのか⁉︎)
とにかくやってみよう。
内臓の正しい形なんてもちろんわからない。だから人の治癒能力を信じるしか無い。
(ここまでの傷だ、出血もすごかったはず、血の生成は回復魔法でいけるのか?いや、元の健康な状態に戻すのが回復魔法なのだろう?きっとそうに違いない、そうであって欲しい!)
希望的観測を多分に込めた状態で全力で回復魔法を使う。
普通なら無理だろう。だが今日なら俺は【魔法強化】の能力持ちだ!何とかなるかもしれない。
魔法は空気中の魔素を使って使用する、だから無限に使える…というわけではないらしい。
どれだけ無限に魔素があろうとそれを使って魔法を行使するのは人間だ。限界はある。
無理に魔法を使い続ければ気力がなくなり、魔法がしばらく使えなくなったり、気を失ったりすることもあると女神様は言っていた。だから俺の気力とこの人の体力が持つかが勝負の分かれ道だ。
(回復魔法!)
さっきダイアスさんに使ったため回復の感覚は何となくわかる。
あとはただひたすら魔法をかけるだけだ。
それから体感で30分ほど魔法をかけ続けて何とか傷は塞がった。
「これで傷は塞がりました。あとは安静にしてもらって様子を見ましょう。」
治療を受けていた男は眠ったままであとは目が覚めるのを待つしかない。
「…クンスは助かるのだろうか?」
ダイアスさんが心配そうに覗き込んでくる。この人はクンスというらしい。
「今はまだ何とも…」
「そうか…いや、お前さんがいなけりゃ確実に死んでたんだ。望みが繋がっただけでもありがたい。」
「はい…あれ?そういえばベックさんは?」
いつのまにか室内にベックさんがいなくなっていた。
「ああ、あいつは外に見回りに行った。一応あんたに声はかけてたんだが気づかなかったみてえだ」
どうも声をかけられても気づかないくらい集中していたらしい。
「あんたは大丈夫か?魔法も無限に使えるってわけじゃないんだろ?」
正直なところ結構しんどい。だがまだ怪我人はいる。
「クンスさん以外は見る限り今すぐ命に関わる状態の方はいなそうですけど…。それでも治療はできるだけ早くした方がいいと思うので」
それに気になることもある。
「あと話の流れから察するに皆さん盗賊と戦って怪我をされたんですよね?そしてその盗賊はまだ近くにいるような対応をされてますし」
「…ああ」
「だったらなおさら回復を急ぎましょう。」
「わかった、じゃあ治療しながらでいいから俺たちの状況を聞いて欲しい。」
「格好を見て気づいてるとは思うが俺たちは冒険者だ。サルコスの町のギルドで依頼を受けて来た。最近リストの森でオーガの群れがいるのは知っているな?」
「はい」
ベックさんに聞くまで知らなかったが今は先を促す。
「で、そのオーガがどれほどの規模なのか調査依頼が出ててそれを受注した。調査自体は特に何の問題もなく終わらせたんだが…、森を出たとこで盗賊に襲われてな。それで戦闘になって何人かは殺ったし残りは逃げたんだが、こっちも多少怪我をしててな。この村の近くだったから傷の手当てに寄ったんだ」
「この村に村人はいなかったんですか?」
「ああ、今はオーガのせいで森に近い村は避難するよう言われてるんだ。だから無人だったんだが…」
「だが?」
「どうも村人がいないのをいいことに盗賊どもが住み着いてたみたいなんだ。この家、実はクンスの実家でな、あいつの案内で家に入れて貰ったら中に逃した盗賊がいて、不意を突かれてクンスが刺されたんだ。そこから室内で乱戦になってこの様だ」
そう言われて改めて室内を見ると床には大量に血の跡があり、壁にも血が飛び散っていた。
「確認した限りもう盗賊はこの村にはいないからしばらくは大丈夫だ、だがこの状態じゃ動き様がねぇ、それにクンスの怪我は俺たちじゃどうしようもないって時にあんたが来たんだ。」
10話目〜




