時世の句、石橋は叩いて渡ろう
「白木迅さん、あなたは亡くなりました。」
(そうですかー)
目の前にいる女性が告げたことを肯定する。
「なんだか落ち着いてますね?」
(まぁ、あの高さから落ちたら死にますよ)
今日は日曜で仕事は休み。徒歩で買い物に出かけたら渡ってた橋が崩れほぼ水の無い岩だらけの川に落下。そりゃ死ぬわ。
(しかし古いとはいえ崩れるとは思わなかったけど。車は通行禁止だけどトラクターとかは通ってもいい橋だったし)
その橋は歴史的に珍しいらしく車両の通行を禁止して国が保存のために管理している橋だった。
「そうですね、まだ壊れるはずはなかったのです…」
(まだ?)
気になることを言う女性、というか俺は死んでいるわけだから神様とか天使様?閻魔様でないことを祈る。
「はい、実はあの橋は近日中に私が壊す予定だったのです。もちろん人を巻き込まないようにです」
(え、破壊の神様なのですか?)
「違います!いえ神様というのは当たらずとも遠からずですが…と言うか本当に落ち着いてますね?」
(いやかなりパニック状態ですよ?俺は今からどうなるのかとか不安で一杯だし)
さっきから淡々と問答しているけど現実感がないだけだと思う。
なぜならいまの自分には身体がない。動かそうとしても動けない、目も見えないし言葉も話せていない。
なので最初語りかけられて思ったことが伝わってしまいかなり驚いた。
「そうですか?、では本題に入りましょう。今回あなたは私が管理しているものの意図しない事故によって亡くなってしまいました。ですので何とかして差し上げたいところなのですがあなたの肉体は再起不可能な状態で…ですのであなたには別の人間として生まれ変わって新しい人生を過ごしていただこうかと!もちろんいまの記憶は引き継ぐことができます。新しい身体で第二の人生を歩んでいただき…」
(ちょっとまってください!?そんな矢継ぎ早に言われても困りますよ!)
「む、ですがこのままだとあなたは消えてしまいますよ?これは慈悲なのです。若くして人生を終えられたあなたへの私の善意からなる行動なのです。何も気にせずに新しい人生をですねー」
(いや生き返れるってのは嬉しいですが別の人間にってそれまさか他の人の人生奪うって話ではないですよね?)
「奪う?いえ次に生まれる赤子に記憶と人格を移すので奪うのではなく与えるのですよ?」
(は?)
「えっ?」
・・暫しの静寂・・
(いや、新しく生まれる命奪ってまで生き返りたくないですよ⁉︎)
「そんな!?あなたに消えられると私が困りまるんですよ!?」
(え、何で天使様が困るんです?)
「…あ、違います!ほらここであなたが消えてしまうと残された家族とかがですね!?」
(いや生まれ変わったっていまの家族に会える訳じゃないですよね?)
「うっ」
(ところでさっきは流しちゃったんだけど俺がが渡ってた今日は壊れる予定じゃなかった橋、なんで壊れちゃったんですかね?)
「そ、それはその…」
(そもそもなんであの橋壊す予定だったんですかね?)
「え、えーっとですね…」
(正直に答えてくれれば私も生き返ることを前向きに検討させてもらいますよ?)
「わ、わかりました…」
初投稿です。よろしくお願いします。
サブタイトルちゃんとつけました。