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図書館 1

 少女は、図書館に足を踏み入れた。

 図書館はこの街の中でも歴史ある建物で、屋敷ほどではないけれど、とても大きい。専門的なことを勉強したい若者達もまずここに立ち寄り、本を読みながら勉強する。学校のような役割も果たしている。

 3階まで吹き抜けになっている圧巻の大書庫に、小さな品の良い書斎のような部屋がいくつも繋がっている。

 少女はあまり自分で本を読むのは得意ではなかったが、語り部の物語を聞きに図書館へはよく来ていた。

 しんと静まりかえった部屋。膨大な本。

 本の海の片隅で、一人、少女は膝を抱えた。

「う……っ」

 膝に顔をうずめる。

 混乱は形になり、感情を生み出す。

「……悪魔……か」

 悪魔の姿を思い返し、周りを見渡した。

 少女は物語以外の本棚へ行ったことがなかったけれど、あの悪魔のことが書いてある本も、どこかにあるかもしれない。

 歴史の本もあれば、伝承の本もある。

 少しずつ、ランタンを照らしながら歩いていく。

 妖精の本……魔法の本……。

 少女が“悪魔”だと思っただけで、実際には悪魔ではないかもしれない。いろいろな本を当たらなくては。

 ランタンが届くところまでしか見ることができず、少し見渡しただけでは、そのような本は見当たらなかった。

 もう少し、時間をかけて探さないといけないようだ。

 今日のところはそんな元気もなくて、また、その場にあった本棚に小さく寄り掛かってうずくまり、その日はそのまま眠った。

 鐘の音で目が覚めた。建物が大きいからか、壁が厚いからか、教会が近いわりには、鐘の音は小さく聞こえた。

 その日も、青い花をひとしきり探すと、また図書館へ戻った。

 図書館内のランプを一つずつつけていく。そっと火を入れ、カチャン、と蓋を閉める。

 図書館内は流石にランプの数が多かった。所々にテーブルが置いてあり、テーブルの上にも天井にも、各種様々なランプが取り付けてあった。天井のランプは高すぎてつけることができなかったが、テーブルの上のランプや手に届く場所のランプをつけていった。

 だんだんと図書館内は明るくなり、本棚の本を探すのも容易になる。

 小さな部屋へも立ち入り、ランプをつけていった。小さな部屋は、勉強部屋や、子供のための部屋、ちょっとしたホールなど。貴重な本を保管しておく部屋もいくつもあった。

 その中にひとつ、気になる部屋を見つけた。

 あまりにも古い誰かの書斎。本がたくさん置いてある。

 ドアのプレートには、”マクスウェル・カルレンス“と書いてあった。

 「カルレンス……」

 この人は……私のご先祖様……?

 歴史の時間にカルレンスの名が出てくることもしばしばある。その中にいただろうか。

 街の歴史の本棚をあたり、少女が読んだことのある教科書を探し出す。

 教科書には、マクスウェルの肖像画のページを見つけた。

 本には、この図書館を作った人なのだと書いてあった。この地に城をかまえた女性の息子で、この街作りに尽力した人……。

「2000年も……前の人……」

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