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第13話『実力テスト』

 ────翌日の昼下がり。

先日の約束通り、フラーヴィスクールを訪れた私は防御に特化した服装のレオンと向かい合っていた。

テストに相応しい快晴を前に、私はニヤリと笑う。

だって、ここには私達二人しか居ないから。

おまけに結界も張られており、外から中の様子は分からない。

要するに────周りの目を気にせず、好きに暴れられるという訳だ。


「さて────お前には色々と聞きたいことがあるが、その前に……拳で語り合おうじゃないか」


「え、いや……出来れば、話し合いでお願いしたいデス……」


「断る!」


 ダラダラと冷や汗を流して懇願するレオンに、私は爽やかな笑顔を向ける。

『徹底的に潰して、ミンチにしてやる!』と意気込みながら。

早くも物騒なオーラを漂わせる私に、レオンは表情を引き攣らせた。

『絶対、よからぬ事を考えている……』と呟き、大きな盾を前に突き出した。

相当、私のことを怖がっているらしい。


 まあ、安心しろ。殺しはしない。

さっきも言ったが、お前には色々と聞きたいことがあるからな。

それに今の私とお前なら、そこそこ良い戦いになると思うぞ?


「まあ────勝つのは私だがな!」


 体が小さくても、基本的な能力は前世と同じ!レオンごときに負ける筈がない!


 体内魔力を活発化させ、手っ取り早く身体強化を図った私はリアムから譲り受けた長剣を手に、飛び出した。

テレポートと錯覚してしまうほど一瞬で相手の背後を取った私は、容赦なく斬り掛かる。


「っ……!」


「ほう?これを防ぐか。1000年の間に少しは腕を上げたようだな?レオン!」


「お前には、まだまだ遠く及ばないがな……!!」


 持ち前の反射神経と怪力で、レオンは私の剣を薙ぎ払った。

見事吹っ飛ばされた私は、素早く体勢を整え地面に着地する。


 さすがに力勝負では、敵わんか。

あの程度の盾なら斬れると思ったんだが……この剣では、難しいな。

前世で愛用していた妖刀血桜ならば、一瞬で斬り捨てられたのに。

まあ、この場にないものを強請ったところで意味はない。あるものを使って、こいつを倒すだけだ。


 動きやすいズボン姿の私は、防具に身を包まれたレオンを見つめる。

ビクビクしながら反撃を待つ彼の前で、私はやれやれと肩を竦めた。


 はぁ……そういう所は、1000年前と変わらんな。良くも悪くも。


 どことなく懐かしい気持ちになりながら、私はさっきと同じ要領でレオンの背後を取る。

と同時に、斬りかかった。

が、またもや盾で防御される。

『まあ、こうなるのは織り込み済みだが』と思いつつ、私は体勢を低くして踏ん張った。

さっきのように跳ね飛ばされないよう……。


 この体では、どう頑張っても敵わないからな。

今だって、ズルズルと後ろに押されているし。


 『この馬鹿力が』と苦笑を漏らし、私はマゼンダの瞳を見つめ返す。


「なあ、レオン。何でお前は今、ここの理事長をしている?」


「ただの暇潰しだ。1000年前の神殺(しんさつ)戦争以来、お前も他の仲間も音信不通になったからな。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ暇なんだよ。今、連絡が取れるかつての仲間は水蓮(すいれん)くらいだ」


「なるほど。他の仲間はどうか知らんが、私はあの戦争のあと直ぐに死んだからな。会えなくて当然だ」


「なっ!?お前、死んだのか!?」


「ああ。今の私は転生体だ。愛刀の血桜で自殺したら、貴族の家の末娘に転生していた。ちなみに前世で得た能力は、全て引き継がれている」


「うわぁ……」


 私の話を聞いて、レオンは何故かドン引きしていた。

まあ、物理的に後退して(引いて)いるのは私の方だが。


「お前が貴族の娘とか……今更ながら、違和感しかねぇーな」


「それは私も同意見だ。だが、まあ……三食昼寝付きと考えれば、貴族も悪くないぞ。引きこもり生活をするには、最高の環境だ」


「引きこもりって……そういやぁ、前世の時も『引きこもりたい』とか『ぐーたらしたい』とか言ってたな?お前」


「ああ。だから、今世では引きこもり生活を満喫したいんだ」


 元々転生なんてする気がなかったし、出来るとも思っていなかったが、せっかく出来たのだ。第二の人生、楽しまなきゃ損だろ。


「という訳で、お前に一つお願いがある。このテストを不合格にして、推薦入学を取り消して欲しい。学校なんて面倒なところに通う気は、ないんだ」


 正直、入学したところで私にメリットなんか一つもないからな。

無駄に時間を浪費するという意味では、デメリットしかなかった。


 『何より、私に集団生活なんて向いてないし』と考える中、レオンは何故か気まずそうに視線を逸らす。


「なあ、エリン……言い難いんだが────氷結魔法の使い手であるお前を、不合格扱いには出来ないぞ?」


「……はっ!?何故だ!?」


「昨日も言った通り、氷結魔法を使える奴は滅多に居ない。だから、氷結魔法の使い手は強い・弱いに関係なく入学が許可されるんだ」


「えっ……!?嘘だろ!?テストの意味は!?」


「テストはただの確認作業だな。本当に氷結魔法を使えるか、どうかの……」


「はっ!?」


 じゃあ、私はテストをやる前から合格確定だったのか……!?


 まさかの事実に目を白黒させる私は、『どうにかして不合格に出来ないか!?』と悩む。

でも、大勢の前で氷結魔法を使ってしまったため今更どうすることも出来なかった。


「じゃあ、フラーヴィスクールの入学を回避する方法は……」


「ないな。一つも」


 ここぞとばかりにキッパリ言い切ったレオンは、ふと空を見上げる。

一向に目を合わせようとしない彼の前で、私は一つ息を吐いた。


 ……もう何でもいいや。

今はただこのムカつく髭オヤジを────ぶっ飛ばしたい!


「てめぇの血は、何色だぁぁぁぁああ!?」


「あ、赤ですぅぅぅううう!!ぎゃぁぁあああ!!」


 体内魔力活性化に加え、普通の身体強化魔法も使った私はゴリ押しでレオンの盾を真っ二つにした。

その反動で、私の方の剣も砕ける。

『チッ……!』と舌打ちしつつ剣を放り投げ、ポキポキと指の骨を鳴らした。


「さあ、レオン。これでお互い武器無しだ。お楽しみの魔法攻撃の時間だぞ」


「い、いや……!!お、落ち着け!」


「うるさい!!死ねぇぇええええ!!」


 炎を纏った拳で、私はレオンに殴り掛かる。

が、素早く距離を取られてしまった。

思い切り空振る私の前で、レオンは冷や汗をダラダラと流す。


 ふっ……ふははははっ!そう来なくてはなぁ?

戦いは長ければ長いほど、楽しい!!


 ニヤリと口角を吊り上げた私は、氷結魔法で槍を創造する。

鉄より強度や耐久度の高いソレを手に持ち、サッと構えた。

と同時に、斬り掛かる。

いや、この場合は『突きまくる』と言った方が正しいか?


「ちょ!武器を作るなんて卑怯だぞ!」


「卑怯じゃないだろ。これも立派な魔法だからな」


「くっ……!!それは……否定出来ない!」


 基本的に火炎魔法と身体強化魔法しか使えない脳筋は、容赦ない槍の打撃に早くも涙目だった。

────決着がつくまで、あと三十秒。

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