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永遠の夏  作者: 赤鉄 ロボ
3/5

3輪目 水色のカーテン

キーン、コーン、カーン、コーン…

「起立、気をつけ、礼!」

という日直の号令と共に礼をする。

「じゃあ、数学の授業は終わりだ。休みに入ってくれ、柊と榎並は覚えてるよなぁ!?」

「あ、はい…」

俺と紅葉が声を揃えて返信をした。

「き、教科書、見せてくれて、あ、ありがと…」

隣の彼女が言った。

「別にいいよ…」

俺は席を立ち、とーちゃんの席へ向かった。

「さっきの授業中のやつ、ありがとう」

「別にそんな礼せんでええよ、せやけど、宿題ちゃんとしてこいよな!」

「分かってるって」

「本当かよ、じゃあ、次してなかったらジュース奢ってな〜」

「それは勘弁してほしいな…」

まぁ、とーちゃんに迷惑かかるし、次の宿題は忘れないと心に言い聞かせておいた。

「二人とも、おっはよぉー!」

ギラギラと輝かせた真夏の太陽みたいなやつが来た。今の季節にピッタリだ。

「紅葉、おはよう」

「おっす、紅葉!」

「今日は二人とも来るの遅かったから朝に全然、話せなかったよぉ…」

「明日は早く来るから安心しろっ、ゆうを叩き起こしに行くからなっ」

とーちゃんが自信満々に言った。

「俺、もっと寝てたいんだけどなぁ…」

「ゆーちゃん駄目だよぉ〜早く起きないとーまぁ、二人ともいつもどおりで良かったぁ、遅刻珍しかったから本当に心配したんだよぉ」

キーン、コーン…

「あ、チャイムだぁ、次ってなんだったっけ?」

「次は移動教室やー!急いで音楽室へ直行や!」

とーちゃんが慌てながらロッカーから教科書と楽譜とアルトリコーダーを取り出しながら言う。

「わたしも急がなきゃ」

「二人とも、行くぞ!」

「ゆーちゃん、わたしの方が先に行くから教室の鍵、よろしくねぇ〜」

「あ、ずるいぞ!」

紅葉ととーちゃんは疾風の如く音楽室へ向かって行ってしまった。

速いな…二人が廊下の奥へ小さくなっていくのを呆然としながら見ていた。

静まりかえった教室を見渡していると、カーテンに若干の膨らみがあるように見えた。

誰か…教室にいる?

恐る恐る、カーテンを捲ってみるとそこには隣の席の彼女がいた。

「なんで、わたし、こんな所にいるんだろ…」

彼女の目にはキラキラと悲しく光り滴り落ちる何かが見えた。

「あ、あの…」

「…あ、こ、これ、は……」

彼女は林檎みたいに顔を赤らめて言葉をつまらせていた。

「なんか、ご、ごめん…」

咄嗟に出た言葉が何故か謝罪だった。自分でもよく分からないが…

「貴方はわ、悪くないのよ、だから…」

彼女は何かを言いかけていたが、教室を飛び出していった。

廊下を勢いよく走っていく彼女を俺はただ呆然としながら見ていた。

教室の施錠を済ませ、他のクラスからは授業の声が聞こえてくる廊下を一人で進んだ。

「す、すみません。遅れました」

そう言いながら音楽室の扉を開けた。

「柊くん、遅いじゃないか。また、遅刻かね?」

音楽の先生が俺に聞いていた。

「あ、いや、教室の施錠をしていて……」

「先生の早とちりだったよ。悪かったね。みんな待ってるから席について」

「わ、わかりました…」

皆が俺に視線の浴びせる中、楚々くさと席へ座った。

「柊、また……」「柊くんが………」

クラスメイトの話し声が聞こえる。自分の名前が出るたびに耳を塞いで誰も壊せない鉄壁で自分自身を覆いたくなる。こんなかったるいクラスなんか…

突然、紅葉が先生に言った。

「先生ぇ、向日さんがまだ音楽室に来ていません!」

「向日さん?あー、あの転校生の子か…職員室に連絡しておくよ、榎並ありがとう」

また、クラスがざわめきだした。

「向日さん、大丈夫かな…」「このクラス嫌だったのかな…」

「紅葉、ありがとう」

ざわつきに紛れて独り言ぐらいの音量でお礼を言った。

「今、ありがとうって言ってくれたでしょ?」

紅葉が俺の席の前に立っていた。

「え、さっきのやつ聞こえてた?」

恐る恐る俺は聞いた。

「うん、聞こえてたよぉ。もう一回言って!」

紅葉は目をキラキラと輝かせて俺にお礼をせびってきた。

「嫌だよ…」

俺は顔を少し赤らめた。

「今も昔も変わらないねぇ〜」

「今も昔もって……」

ガラガラ。先生が帰ってきた。

「みんな、待たせて悪かったね。今から授業始めようかー」

先生と共に淡黄色の彼女も一緒に音楽室へ入ってきた。

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