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世界は手の中に

俺は......主人公に、なれただろうか......。

憧れの主人公というものに、俺は......なる事が出来たのだろうか。


「リーネェエエ!!!」

「......」


リーネに殴られながら、そんなことを思う。

別に殴られるのが好きってわけじゃない。

ただ、リーネの動きが速過ぎるだけだ。速すぎて、全ての攻撃を受けてしまう。


「くッ......まだまだァ!」

「......」


ふと、俺が転生した理由を考えた事がある。

なぜ俺は、最低な貴族のシルビオ=オルナレンへと転生したのか。

それは、中身が俺に変わることによって、シルビオを常人にする事が目的だと思っていた。

だが、結果は違った。

むしろその逆で、シルビオをより悪くて強い者へとしてしまったのだ。

さらに、助かるはずのリーネをこんな状態にし、死ななかったはずの人を殺した。

沢山の失敗を犯し、沢山の犠牲を払い、沢山の悲劇を生んだ。

失うものは全て失い、手に入れたものは最悪の称号。

この世界を、破壊してしまった。

そんな俺が、この世界なんかに転生してしまって一体何になるというのだろうか。

こんな俺は、この世界で生きていて良いのだろうか。


「へっ......リーネよぉ。お前、俺にさえ拾われていなければ、もっと幸せな人生を歩めていたんだぜ......?俺は知ってんだよ。お前の別の未来を......お前が幸せに過ごしている世界線を」

「......」


(シルビオ)ではなくアランなら、お前を幸せに出来ていたことを。

俺はよく知っている。


「......」


リーネは表情も変えずに、全く俺の話を聞いている素振りは無い。

本当に、ただのロボットのようだ。

床は既に、足の踏み場もない程に崩壊し、壁も無ければ天井も無い。

もはや原型が分からないほど、辺り一面が破壊されている。

気づけば、俺の鎧も砕け散りっており、リーネによる猛攻で全身が痛い。


「......でもよ、それでもお前を助けたいんだ。例え弱くても......助けられるような力を持っていなくても、かっこよくなくても、凄くなくても、主人公じゃなくてもッ!!」


お前を助けたいんだ─────


ボロボロの体から、鱗が生える。

まるで、失った鎧を埋め尽くすかのように。内側から新しい鎧が生えてくる。

左腕から始まっていた、オーヴェインによる侵食が進み、いつの間にかほぼ全身を覆っていた。

最早それは、人の形を保ってはいない。

ドラゴン。

自分で見える範囲の手や足だけでも、人で無いことは明らかだった。


「ぐ......がァアアアアアア!!!!!」


全身が痛い。

だから何だ。

目の前が見えない。

だから何だ。

意識が途切れそうだ。

だから何なんだ。

そんなこと、関係ない。


「ァアアァァアアアアアア!!!」


リーネの瞳に映るその姿は、正しくドラゴンそのものだった。

......って、目の中が見えちまう程に視力が上がっているのか......こりゃ、凄いを通り越して気持ち悪いな。

......全力だ。

体が持つ限り、全ての魔法を己に付与して全力で闘う。


「リィイイイネェエエエエェエエエエエエ!!!!!」


自分でも、何が起きているのか分からなかった。

気付けば、一瞬でリーネの顔面を掴み、遠くへ向かって放り投げていた。

しかし、放り投げられたリーネは、腕から何かを伸ばして壊れかけの柱へ突き刺す。

そして、そのまま引っ張られるように戦場へと再び戻った。

腕から伸ばしたものは、結晶体。

魔力でできており、リーネを包み込んで閉じ込めていた物質だ。

それを、自らの体から自由に出し入れしているように見える。


「強くはなったのかもしれないが、とても醜い姿だね。シルビオ=オルナレン」

「てめェの中身ほどじゃねェよ......!」


翼を大きく羽ばたかせ、もう一度距離を詰める。

両腕に渾身の力を込め、素早く交差させる。すると、十字形の風が衝撃波となって飛んだ。

だがリーネは、今度は魔力の結晶を腕から伸ばし、まるで盾のように円状に形成した。

ガキィイン!と音が響く。

防御されたようだ。

しかし、そんな事でうろたえるような俺では無い。間髪入れず、風を帯びた両腕による無慈悲な殴りを浴びせる。

始めは盾で防ぎきっていたが、さすがのリーネも耐えきれなくなったのか、盾を持つ手と反対側の手から新たなる結晶を生成した。

今度は、剣のような形になる。

盾と剣......まるで騎士だ。


「武器を増やしたところでェ!」


リーネの剣をかわし、盾に殴りを入れた。

すると、一撃で盾は砕ける。

さらに続けて剣も受け止め、片手でへし折った。


「......ッ!」

「やっと驚く表情を見せてくれたなァ」


一気に距離を詰める。

いつの間にかリーネの体をも片手で掴めてしまうほどに大きくなった俺の手で、リーネを鷲掴みにする。そして、引き剥がされない内に床へと叩きつけ、そのまま床へ押し付けながら飛ぶ。

瓦礫によってリーネがどんな状況なのかは見えないが、大ダメージであることには違いない。


「うォオオオオ!!!!!!」


地面へ押し付けたリーネを、勢いに乗せて投げた。狙っていた訳では無いが、未だ残っている柱に激突して止まった。


「はァ......はァ......はァ......どうだリーネ、まだやるか......?」

「......」


リーネから返事は無い。

しかし、気を失ってはいないようだ。

殺意の籠った、綺麗な瞳がこちらを睨んでいる。

そしてその、全く疲れの見えない脚で立ち上がった。


「......ふゥ、いいだろう。アードルフの魔法など解けてしまうほど......お前が目を覚ますほどの衝撃を食らわしてやるよ」

「......」


俺は降り立ち、しっかりと床を踏みしめて構えた。

リーネもそれに合わせて、構えをとる。

皮肉な事に、それは俺が教えた構えだった。

六年前に、俺がリーネに教えた闘い方だった。

俺だけではアランに勝てない。そう思い、リーネに協力してもらおうと育てたのだった。

......いや、利用しようとしたんだな。

今思えば......リーネを武器にしていたのは、俺だったのかもしれない。

武器のように扱い、ちゃんと向き合っていなかった。

ただ優しくしているだけで、リーネの事を何も考えていなかった。


「......行くぞ」


すまないな......リーネ。

そう小さく呟いた時、地面を勢いよく蹴った。

バンッ!!

そんな音も遅れて聞こえるほど、俺とリーネは高速でぶつかり合った。

取っ組み合いのような形となる。


「......ッ」


もう離さないと言わんばかりに、リーネの両手を掴んだ。

だがそれを、リーネは拒否するかの如く、結晶を生成して俺の手に突き刺した。


「──────ッぐァァアアア!!!」


結晶はどんどん増え、俺の腕までも貫通する。

痛い。

でも、絶対に離さない。


「離さねェよ......何があっても。お前の事は、もう離さない......!」

「......ッ」


どれだけの人を犠牲にしたのか分からない。

どれだけの苦しみをリーネに与えてしまったのか分からない。

だが、今この瞬間だけは。

お前を─────


「リーネ!!これから、何があってもお前を守る!お前がどうなっても、お前を助ける!ちゃんとお前と向き合う!だから!!!」


だから──────

俺は、胸に隠した様々な言葉を探した。

言いたいことは沢山ある。

伝えたいことは沢山ある。

しかし、今言いたいことは──────

伝えるべきことは─────


「好きだ。だから......戻って来い、リーネ」

「──────はい」


リーネは、目に涙を浮かべていた。

しかし、同時に笑顔も。

俺の目を見て、俺の言葉に応えた。

リーネ......やっぱりお前は、笑顔でいなくっちゃな。


「シル......ビオ......さん......」


リーネは、意識を断った。

腕に刺さっていた結晶はバラバラに砕け、リーネは力を失い、その場で崩れ落ちるように倒れた。

そんなリーネを、俺は両腕ですくい上げる。


「馬鹿な......そんなはずは無い!私の魔法が破られるだなんて......!!」

「やッとだ......やッとお前の焦る顔が見られたなァ、アードルフ」

「なぜ......」


俺は、リーネから手を離した。

しかし風を使って、リーネを浮かしているおかげで、リーネは床へ落ちることなくフワフワと浮く。

これで、俺は自由に動く事ができるようになった。


「──────ッ!!?」


目にも止まらぬ速さで、俺はアードルフに接近し、顔面を掴んだ。

そして床へ叩きつけると、そのまま床に押し付けながら飛ぶ。締めには、柱に壊す勢いで叩きつけた。

だが、まだこれでは終わらない。


「が......は」

「お前は生かして、活用してやろうと思っていたが......気が変わッてしまった。死ぬも死なぬもお前次第だ。いや......運命次第......かな」

「や、やめ......」

「さよならだ」


俺は、アードルフをこの《フォートレスガーデン》から放り投げ、落とした。

死への恐怖を味わいながら、ゆッくり散るがいい。


「......家に、帰ろうか」


リーネを再び抱きかかえる。

終わった。

全て終わったのだ。

いや、これから終わりへと向かっている。


「まだ、やり残している事があるんだッたな」


最後の大仕事。

リーネを助けた後にやる、(シルビオ)の最後の使命だ。


「......と、その前にここが崩れちまうか」


ゴゴゴゴゴと大きな重たい音が聞こえる。

床は割れ、至る箇所にはヒビが入っている。

まさに崩壊寸前だ。

そして何より、立っている場所が傾いて来てしまった。これは、《フォートレスガーデン》自体が動力を失って堕ちているという事。

どうやら、激しく闘い過ぎてしまったようだ。


「リーネ、少しだけ動くぞ」


俺は、完全に眠ってしまっているリーネに一言だけ断っておき、翼を羽ばたかせる。

《フォートレスガーデン》の全体が見えるような場所まで飛び、左腕を強く振った。

すると、目に見えるように強風が舞う。


「こんな事までできるようになッちまッたなァ......」


風は、あっという間に《フォートレスガーデン》全体を包み込む。

すると、自分でも驚くような光景となった。

あの巨大な《フォートレスガーデン》は、段々と減速して行き、後にフワリと浮き出したのだ。

そして信じられないほどゆっくりと地面に降り立ち、まるで最初からそこに置いてあったかのように、《フォートレスガーデン》は地面へと突き刺さって落ち着いた。

崩壊も無い。

被害も無い。

全ては、俺の風の中。


「......リーネ、終わったよ。長かった闘いも、これで終わりとなった」


邪魔者は居なくなった。

これでやっと......俺が王となれる。

俺が、支配をすることができる。


「世界は......俺の手の中にある」












読んでくださり、本当にありがとうございます!

誤字脱字も多く、教えてくださった方々にはとても感謝しています。

ここまで長く続けられたのは、皆様のお陰です。

そして、次が最終回の予定です。

まだまだ至らぬ点もありますので一話からリメイクはしていくつもりですが、とりあえずは一旦幕を閉じます。

どうか最後まで読んでくださると、嬉しいです。

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