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全力で立ち向かうとしよう

「ふむ......まさか目覚めるとは思っていなかったよ。さすがに規格外だ」


忘れない。

忘れたりしない。

この世界を......リーネを......俺は守ると誓ったんだ。

何がゲームだ、何が現実だ。

俺の目が見ているこの景色、ここが現実なんだ。


「ありがとうアラン......お前が、俺を迎えに来てくれたんだな......」


目を覚ますと、目の前には憎き顔があった。

アードルフ。

なるほどな......固有魔法によって俺は催眠状態だったわけか。


「私の魔法を破るとは......シルビオ、やはり君は面白いね。けれど、残念ながら少し遅かった」

「なに?」

「君はもう、おしまいだ」

「......まさか、これの事を言っているのか?」


俺の両腕......と言うより、四肢は拘束されていた。魔法を使って作ったと思われる枷だ。

だが、俺にとっては玩具も同然。

少し力を込めただけで簡単に壊し、抜け出すことが出来た。


「こんな物で、俺を止められるとでも思っているのか......?」

「いいや。私が言ったのは、これの事だよ」


そう言ってアードルフは指をさす。

それは、大きな氷のような結晶に包み込まれた少女。

リーネだった。


「君がどれだけ頑張ろうと、もう無駄だよ。魔王をも超える力を、止めることは出来ない」

「なんだと......?」

「さぁ、これで終わりにしよう......インペリアル・オペレーター」


アードルフがそう唱えると、突然リーネの体が光出した。

そして結晶が割れ、リーネが開放される......。


「リーネ!!」


俺は思わず駆け寄る。

解放されたリーネを、この手で受け止めるために。

しかし、俺の手は届かなかった。

リーネは、誰の手を借りることも無く、綺麗に地面へ着地した。


「リーネ......?」


ゆっくりと顔を上げるリーネ。

その表情は、まるで魂が抜けた人形のように冷たいものだった。

俺の知っているリーネじゃない。

リーネを敵に回した時だって、こんな表情はしていなかった。


「これはもう、君の知っている物ではない。ただの武器さ。私が操り、私の手足となった武器。今じゃ私の思うように扱える」

「アードルフ......お前ッ!」

「君が、どうしたらこれを諦めてくれるのかを考えたよ。鬱陶しいからね。ずっと付きまとってきて、私の計画を邪魔する......それで、良い考えが思い付いた」


アードルフは、爽やかに言う。

まるで早朝の挨拶をするかの如く、言葉に重みを与えずに言い放つ。


「絶望を与えることにしたよ」


───────轟音。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

天地はひっくり返り、瓦礫や岩が視界で飛び散る。

周りの壁は全て壊れ、床だけが残された骨組みの建物となる。

逆さまの大地の上で、地面に腕を突き立てている少女の姿があった。


「ッ!?」


リーネ......なのか?

地面に拳を叩きつけ、俺を宙に浮かせたのは。


「アードルフ、お前─────」


一瞬だけ、アードルフの方を見た。

つまりリーネから目を離した。その隙に、リーネはいつの間にか俺の目の前へと迫っていた。


「なッ!?」


予想外の速さに対応できない......!

そして、腹に痛みを感じた時には既に、俺は地面へ落ちていた。

いや、叩きつけられていた。腹の痛みが教えてくれる、「お前は殴られたのだ」と。

相当な破壊力のパンチだ。一撃で、若干意識が持っていかれてしまった。


「ぐふっ、が......はぁ......」


込み上げてきた咳は、血の味がする。

それでも構わず、俺は立ち上がる。


「リーネ。お前の意識じゃないよな......?」


アードルフの固有魔法によって、操られているのだろう。

リーネの目に意識は無く、ただ猛威を振るうだけの武器と化している。


「言っておくけど、これにもう自我は無い。気を失っているとか、操作されているとかではなく、ただの抜け殻。ただの魔力の詰まった、人型兵器さ」

「だから諦めろって言うのか......俺は約束したんだ。リーネを助けるって。だから、絶対に救ってみせる!」

「そういう所が無駄なんだよ、君は」


リーネは手の平を上に掲げた。

すると、その手に魔力が集まって行く。それは魔力にしても、あまりにどす黒く、まるで闇を集めているかのようだった。

そして、魔力はあっという間に巨大な塊となった。


「それでは、記念すべき第一投目といこうか」

「ッ!」


咄嗟に左腕を構え、風のシールドを張る。

こんなもので防げるとは思えないが、まともに食らうわけにもいかない。

気休め程度のシールドで、どこまで防げるか......と、そんな心配はいらなかった。

リーネは、横に手を振り下ろした。

それが何を意味するか......そんなこと簡単である。

魔力の凝縮された弾を、俺ではなく真横に向けて放ったのだ。


「......なに?」


一瞬、理解が出来なかった。

まるで的外れな方向に飛んで行く弾を見て、俺は止まってしまった。

わざと外した......?

そうとしか思えないような放ち方。


「まさか......リーネ!意識が────」

「残念だけど違うね」


アードルフが言った。

リーネの放った魔力の弾は、あらぬ方向へ飛んで行ったと思われた。だが、その向かった先は明白だった。

弾は真っ直ぐと町のど真ん中に落ち、大きな音と光と共に、破裂した。

そして、町が1つ─────消滅した。


「......なっ」


なんだ......と......?

そもそも狙っていたのは俺ではなく、町だったと言う事......か。

そしてこの威力。まるで、容赦無く人を殺すために生まれた存在。

悪魔......。


「アードルフゥウウ!!!」

「まぁこれは、ほんの些細な脅しさ。下にいる愚民に対しても、君に対しても。最早勝ち目は無い。これ以上やっても無駄だという事に、気付いて貰えたかな?」

「......」


そうだな。

確かに力の差は歴然だ。

いくら俺が魔王だからと言っても、それは立場上の話でしかない。

今のリーネに、勝てるとは思えない。

だが──────


「ここで逃げられるほど、俺は良い事をやって来ていない。許されないことばかりして来たんだ......ならせめて、約束ぐらいは守りたい」

「かっこいいね。けど、世の中にはどうしたって成し遂げられない事があるんだよ」


リーネは構える。俺に、正面から向き合って。

完全に敵対しているという事だ。

何だか、前にもこんなことがあったな。

その時もリーネは操られていた......今では懐かしい思い出だ。

思い出とは不思議なもので、当時は相当苦しい目にあっていたとしても、思い返すとそうでも無かったと。むしろ楽しいものだったと、そう思ってしまうのだ。

だが、どれだけ時間が経とうと気持ちが変わらないこともある。


「リーネ......すまない。お前を傷つけることにやってしまうかもしれない。だが、それでお前が助かるなら──────」


俺は────この運命を受け入れよう。


「ッ!」


地面を蹴り、走り出す。少しだけ加速してから、背中の翼を羽ばたかせる。

そして、一直線に向かった。


「アードルフゥウウウ!!」

「......」


向かった先はリーネ......ではなく、リーネを通り越してアードルフへ。

操られているのなら、本体を叩く。それが一番の得策だ。

それに、アードルフ本人は戦闘能力が低い。

不意打ちなら、自衛することすら不可能だろう。


「うぅぉおおおおお!!」


アードルフの目の前。拳を握りしめ、力を込めて殴り掛かる。ありったけの怒りを込めて、俺は顔面を狙ってパンチをぶち込んだ。

と、思った。


「────がッ」


接触まであと数センチ。

顔に手が触れそうな距離で、俺の体はピタッと止まってしまった。

いや、止まった訳では無い。

まるで釣竿で釣られたように、俺の体は鞭打ちになって、背後へと強く引っ張られた。


「うおっ!?」


結構な距離を離され、翼が無ければ危うく落ちてしまう所だった。

今の攻撃......アードルフのものでは無いな。


「邪魔をするか......リーネ」


立ちはだかるリーネ。

今の攻撃は、リーネがアードルフを守るために行ったものだろう。

あくまで、リーネを倒さないといけないという事のようだな......ならば、俺も全力で立ち向かうとしよう。

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